停電とインターネット通信障害のどちらが困難を極めるか

二年ほど前の「ある日」、場所はソウル。

午後7時過ぎのことだった。

いきなり私のメインマシンであるiMacの画面が落ちた。と同時に世の中が真っ暗になった。

そして家の中にある唯一の非常灯がめいっぱい光ってくれていた。

何が起こったのかすぐには分からなかったのだが、とりあえず家中の電気が消えていたので、何らかの原因で電気のブレーカーが落ちたのではないかと考え、とりあえず手元にあったiPhoneの光を頼りにブレーカーを確認に行ったのだが、ブレーカーは正常な向きを向いていて、そこで停電なんだと理解した。

ところが。

午後7時過ぎとはいえ、あまりにも真っ暗すぎるので外を見てみると同じ敷地内の別棟もすべて電気が切れていたので、アパート全体の停電だということはわかった。そして遠くに見える街は明るく、特に問題はなさそうだった。

うちのアパートだけかよ。こういう時に犯罪が起こったりするのよね。って探偵モノ見過ぎかしら。

すぐに管理室に聞いてみようかと思ったのだが、何せ大元の電気がすべて来てないのでインターフォンなんぞも作動しそうになく、アパートの入り口の自動ドアも開かないんじゃないか、または開けたら閉まらないんじゃないかと色々とぐるぐる考えているうちに面倒になって、とりあえず停電サバイバルの方法を考えることにした。

その数日前にアロマキャンドルをいくつか作成してあったので、ここぞとばかりその全部に火を灯し、朝鮮半島有事(地震がない国なので、これくらいしか想像できないw)用に準備してあった非常袋の中の懐中電灯を2つとりだした。

実際のところ、モバイルバッテリーをはじめ、モバイル機器(iPhone, iPad Pro, Kindle paperwhite, ASUS laptop, Surface GO)もフル充電なので、Poket WiFiの電源を入れればインターネットも快適。そもそもiPhoneがあれば最低限のことはできる。

LINEで面白がって実況中継していたところ、子供から懐中電灯の上に水を入れたペットボトルを乗せると簡易灯になる」という情報を得て、さっそく冷蔵庫の中にあるペリエを出してきてグリーンライトが完成。その写真を大喜びでLINEに載せたところ、

「冷蔵庫、開けなかったら、もっと長時間冷えてたのに......」というメッセージが来て「orz」な私だった。

が。

アパート全体の停電だったからか、当然モデムも落ちていて、ネットワークも来ていない。スマホとPocket WiFiの通信ネットワーク経由でメッセージは送れるが、バッテリーも温存せねばと思った私は、とりあえず大人しくしていることにした。

ちなみにカナメは仕事で不在。ヤツがいたら管理事務所に怒鳴り込みに行きかねないので、いなくてよかったわいw

1時間くらい経過した頃、そろそろ状況が気になってきた。解決に向かっているのか、全くめどは立っていないのか。いつもなら管理事務所にはインターフォンを使うのだが当然まだ使えない。

そこで、玄関を出て様子を見に行くことにした。ビビリの私は玄関に物を挟みドアを開けたままにして固定した。ロック部分は電池式だから停電とは関係ないんだけど(汗)。アパート一階の入り口に行ってみたら、その入り口は手動モードに切り替えられていた。つまり開きっぱなしになっていた。それを確認して家に戻った。

ジャケットを着て管理事務所に様子を見に行こうとしたら、すでに人でいっぱいだった。

なぜか消防車に見える大型の車両が止まっていて、彼が暇そうにしていたので聞いてみた。

私「原因とかわかったんですかね。いつ頃、解決しそうですか?」

彼「それを今調べてるんだけどね、1時間やそこらじゃ直らないかも。まぁアタリはついてるみたいだよ。」

すぐに直らないのかー。と思ったら大声の怒鳴り声が聞こえてきた。

えらい剣幕で管理事務所のお兄さんに怒鳴り散らしている韓国人のオッサン(汗)。

管理事務所のお兄さんを罵倒しても停電が解決するとは思えないのだが。

が。

まぁ例えばよ。夜間だから韓国のマーケットはしまっているけど、例えば仮想通貨のトレーディングでめっちゃレバレッジかけているところで、チャートみて売買している時に停電になってネットも落ちたらどうよ。

死ぬよな............。損害賠償求めたいくらい腹立つだろうな........。

気の毒だなぁと思いながら自宅に戻り、いつ解決するかも分からないのでバッテリーを温存すべく大人しくしていたら、結果的には停電から2時間ほどで解決した。

その30分後くらいに何事もなくカナメは帰ってきた。運のいいやつだ。

さて。停電なんてさ、ライフラインもいいところだから、必死で復旧してくれるし、例えばアパートだけだったりすると、考えられる原因なんてそんなに多くはないだろうから、復旧は時間の問題なのかもしれない。

が、トラブルは続く。

場所は同じく韓国はソウル。その時はカナメが家にいた。

最初は、ソウルの某通信会社の基地局で火災が起こっているというニュースが飛び込んできた。他人事のようにニュースを見ていたのだが、程なくネットが繋がりにくくなる。

あれ??

さっきまでつながっていたよね?

ということで家の中のWiFiルーターをリスタートかける。

状況は変わらない。というかさっきは遅いかな?という程度に思えたのだが、全く繋がらなくなってきた。

そこでスマホを見てみた。我が家には私とカナメが一台ずつスマホを持っているのだが、それとは別にもう一台、別の通信会社で契約しているスマホを自宅の固定電話として使っていたのだが、そこに基地局の火災のニュースについてのSMSが届いていた。へぇ〜と思いながら、その横で充電をしていた自分のiPhone画面をタッチしてネットに繋ごうとしても、繋がらない.........

え、えええええええ、通信障害??

と思ったのだが、カナメのiPhoneとiPadは問題なく使えていた。そこで彼に情報収集してもらいながら、私はとりあえず自宅内のルーター3台をすべてリセットやリスタートしたりネットワークの設定を変えてみたりと、バタバタとしていた。そして私のPocket WiFiも、私のスマホの通信会社と同じであったので、状況は同じ。電源をONOFFしようが、繋がらないのは繋がらない。

さて。

私の個人的なネットワークの話にとどまらず、どうやら韓国の某通信会社の基地局の火災はどんどんと大惨事的色彩を帯びていき、そのうちにあちこちからクレジットカードが使えないなどのTweetがドカドカと出てきたらしい。カナメによると。

繋がりにくいなぁ〜という状態から私が使っている通信会社の基地局火災に伴う通信障害だということが確定するまでには、結構な時間がかかっていたと思う。

でもそれが分かったのは、カナメのスマホとiPadのSIMが、私の通信会社とは別だったからだ。彼の持つデバイスは全く何の影響も受けていなかったから、実際の問題は何なのかということをネットで調べることができた。

つまり。

もし我が家の通信環境が全員同じであったなら、あるいは、もしカナメが仕事で不在だったなら、

私、完全に詰んでた............orz

ネットから切り離された状態だと、今の状況がどうなっているのかなんて全く分からないからね.........。

ご存知の方もいらっしゃるかもしれないけれど、この事件はかなりな大惨事で、キャッシュレス化が世界最高レベルで進んでいるソウルの、大都会におけるそのリスクを世界に知らしめた事故だったように思う。私がテロだったら、基地局狙えばいいのかな、とすら思ったりした。それほど影響は大きかった。大都市が一瞬にして脆く崩れ落ちていったような印象すらあった。

この火災事故とそれに伴う通信障害で、しかも一部局地的というより、かなり広範囲に影響が出たので、都会で通信障害が起きた時の被害は、想定したよりも甚大そうだということは誰にでもわかったと思う。

それ以来、我が家では、すべての通信系は同じキャリア(通信会社)にしないようにしている。家族割などで安くなるのはわかるのだが、全員が同じキャリアというのはリスクが大きすぎる。我が家の場合は、カナメと私のスマホのキャリアは実は同じだが、Pocket WiFiと自宅の通信については、それぞれ会社が違う。どこの通信会社がトラブルにあっても、我が家の中ではどれかのデバイスからはネットワークにつながるようにしている。

停電も長期化するとスマホの充電すらできなくなるので、もちろん停電の方がインパクトは大きいのだが(そもそも通信設備は電気がないと使えないのだが)、一時的な停電についてはバックアップ電源を持っている人も多く、電源さえ調達できれば情報収集はできる。しかし、ネットワーク障害は、想像以上の影響があって、電子決済などの各種経済活動も止まり、都市機能が完全に麻痺してしまったりする。そのリスクについては、今のうちから備えておいた方がいいと思う。


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