知らない街を歩いてみたいカナメ
まぁ昔っからなんだけど。
うちのカナメくんは、ある目的があって外出しているのだなと思っていたら、いきなり走り出して、
「これこれ、このバスに乗るから!」
と勝手にバスに乗り込んでしまふ。
どこ行きのバスかも知らずに。
いや、これは比喩ではなくて、実際によく彼がやらかす遊びで、大抵「♫知ぃらなぁいぃまーあぁちぃを、あるいーてーみぃーたぁい」と歌い出すので、
「またか..........」と私は頭を抱える。
要は、その時に偶然やってきたバスに乗って、知らない街で下りて、そこを歩いて、面白そうなお店があったら入って、食べたりとフラフラと遊んでしまう。まぁプチ旅行みたいなものだ。しかも事前連絡なしに、突然走り出すので、「??????」となる。
バスから降りて、また別のバスに乗って.......とやっているうちに、最終的には鉄道の駅を探して、そこから地下鉄や鉄道で帰ってくることになる。
さて。
海外に住んでいると、それはそれで発見があるもので、非常に面白かったのだが、帰国してカナメの実家に住むようになったら、バスに乗って旅する遊びを一切しなくなった。
田舎でバスに乗って行ったら、簡単に帰って来れなくなるのが分かっているからだ。その代わり、自転車に乗ってフラフラとどこまでも前進するということをやらかす。糸の切れた凧になったかの如く、自由自在にあちこちと突き進む。なんといっても彼の自転車は電動アシスト付きだしね。
後ろから汗だくでついていく私の身にもなれよ。
今日も、そんなこんなでヘロヘロになりながら、なんとか見つけ出した田舎の小さな喫茶店に立ち寄ってみた。アイスコーヒーでも飲まないとやってられない。
お客さんは私達だけだった。当然だろうな、この時期だから。
100年続く旅館業を継いだマスターは、その一角で喫茶店も経営している。今の時期は大変で、でも行政が色々と支援してくれている今の内に、それに甘んじないで何とか自分達の頭で考えて、旅行者を呼べる地にしないとね、リピーターさんを呼べる街にしないとね、という話で意気投合した。
地方に住む誰もが、全ての人が、頭が固いわけでも、自助努力を怠っているわけでもない。みんなそれぞれ色々と考えて、行政側の支援に感謝しつつ、そのぬるま湯に浸かることなく前進しようと考える人も多くいることに、少し気持ちが高揚した。
カナメは地元の人だから、昔の話にも花が咲き、私の知らないカナメの幼少期の姿を少し想像した。人が住むのに何の問題もなく、街も美しく、人も暖かく、賢明に生きる人もそこそこいるという街が、いつかはゴーストタウンになる。そういう街が日本中にどれほど沢山あるかと思うと、人口が減ることの悲哀を感じずにはいられなかった。
誰が悪いわけでもない。こういうのを自然淘汰というのかしら。
という感じで、いつも色々と哲学しながら「知らない街への旅」を終える。
ところで、今日そのマスターとの話で、一つひっかかったことがあった。
海外からのお客さんの中で、アメリカの方から来た人は、クレイマーっぽい人が多いという話になった。どんなクレームをつけてくるのかと言うと、メニューにないものを注文してくるらしい。正確に言うと「このメニューには何が入っているのか」と聞き、その上で「その中の野菜のこれとこれを省いてくれ」や、「このメニューに〇〇を足してくれ」など注文をつけてくるらしい。日本人のお客さんでそういう人はいないんだけどね、とのことだった。
わああああああああ、それって分かるうううううう。
私から見れば「日本人の方が羊ちゃんだよな」って思う。
個人的には私には食べ物に好き嫌いはないし、何かのメニューをオススメされると、すぐにそれに決めちゃったりするほど、あまり食事に頓着がない。でもそれ以前に、日本の人は、メニューにないものを注文するのは、お店に迷惑もかかるしワガママなことだからと最初からトライしない。そして提供された食事の中にキライなものがあると、それを残したりする。メニューに提示されたもので、厨房内は最適化されているはずだから、個別に注文をつけるというのは確かに負荷がかかる。だから、そこまでしてワガママを通そうと思う人はあまりいない。
例えば、ランチセットのサラダは一般的には盛り付けられた状態で冷蔵庫に入れてあったりするので、その中からパプリカだけを省いてくれと言われれば、「うっげぇ面倒な客」と思うかもしれない。
でもさ、まぁ「〇〇はできるかしら?」と聞いてみるくらいは問題ないと思うのよね。ダメ元でも聞いてみて、ダメだったら無理強いはしないというスタンスの方が海外では一般的なのかもしれない。
ちなみに学生時代に飲食店でバイトしていた事があるので分かるけど、ある程度のイレギュラーな注文については、特に問題なく対応できていたので、とりあえず言ってみてもいいと思う。最初からダメだと思わずにね。
ということで、今日も出会いがあったので、良い一日だったよ。