ゲームが人に生きる希望を与えることも:Rekklesの場合

 一時熱心に応援していたeSports Playerがいる。

 もともとeSportsの世界ではヨーロッパが強かったのだが、程なく韓国プレイヤー時代が到来する。eSports、とりわけLOLでの韓国チームの強さは次元が違い、そしてプレイヤー層の厚さも功を奏して、優秀な選手が続々と登場した。

その中に、Fakerくんという選手がいる。

彼の冷静な判断と技術の正確性、相手の動きを予測してダイレクトに攻撃を仕掛けるその神業的なプレイスタイルに、世界中のファンが魅了された。彼はいつしか「Legend」と呼ばれるようになる。ちなみに、この年のグループステージ戦の舞台は、あの「武漢」である。こんなに大都会なのよ。

かつては黄金期を極めたヨーロッパチームだったが、Fakerを擁する韓国チームにどうしても勝てなくなった。そして、それに続いてゲーム人口の増加に伴う層の厚さ、そして潤沢な資金力でもって優秀な選手を獲得していった中国チームの時代へと変わりつつある。LOLの世界では、長らく、そして完全にアジアの時代になっている。

現在も、欧州チームはなかなかアジア勢を打ち負かせないでいる。ちなみに米国チームは巨大資本をもってしても一度も優勝できていない。最近は、ベトナムやマレーシアあたりが、急激に存在感を強めている印象がある。

そんなヨーロッパチームに、Rekklesくんはいる。そして長らくFnaticというチームに所属していた。常にヨーロッパ大会で勝ち抜き、世界大会に進出はするけれども、毎回アジア勢にやられてしまう。それを見続けている間に「今年こそRekklesに優勝を」という気持ちになり、彼を熱心に応援するようになった。が、いまだにその夢は叶っていない。

彼は、今シーズンから別チームに移動したのだが、実は彼はもともとプロ入りが有望視された優秀なサッカー少年だったのだ。

運命は残酷で、14歳の時に負った膝の怪我が原因で、彼はサッカーを続けることができなくなってしまった。失意のどん底であったというのは、容易に想像できる。

プロ入りの夢があり、周囲もそれが叶う未来を一ミリも疑わなかったような彼。その時のMartin少年(Rekklesの本名)の心の中がどうであったかは、本人以外知る由はないのだが、その後、彼はeSportsの世界に活路を求め、そしてプロになった。

eSports Playerは、勝つほどにスポンサーから資金が集まり、スタイリストが付き、ビジュアルも垢抜けては来る。そして集中力や忍耐力をつけるために筋トレをするプレイヤーも多いので、どんどんカッコ良くなってくるのだが、元々は、身なりを構わないOTAKU気質のゲーマーも多い。

その中にいて、異彩を放つ存在感であったのがRekklesだ。元スポーツマンで、めちゃかっこいいのだ。

リアルスポーツマン+eSports Playerというのは、人気が出る一つのファクターなんじゃないかとすら思う。

ちなみに、Player&Streamerとしてトップ認知のNinjaも、サッカー少年だった。

ビジュアルって大事よね........ということが言いたいのではない(汗)。

eSportsの世界では、リアルな身体能力とは別の能力やスキルが求められる。瞬発力や状況判断能力その他諸々の多角的な能力が求められるのだ。逆に言えば、膝に爆弾を抱えてようが、プロのプレイヤーになることも可能だということだ。

日本のスポーツ教育は、小さい頃から一つのスポーツに特化して、努力と根性でもってプロを目指すようなイメージがある。無事にプロになれたとしても、なれなかったとしても、プロになることだけを目指してきた子供にとっては、その後の人生をどうすべきかということについては、あまりアイデアがないことが多い。プロスポーツプレイヤーのセカンドキャリア問題も、ようやく最近話題になることもあるが、それ以前に、プロになれずに腐ってしまい、その後の人生のすべてを棒に振るような人もいないわけではない。

Rekklesは、その後の人生を棒に振ることなく、見事にその才能を他へ転化させ、彼のプロサッカー選手になりたいという夢をキレイに昇華させたのだ。

そしてeSportsの世界では、身長に代表されるような身体能力の制限を受けない。

もし、プロのスポーツ選手を目指していたのに、何かのアクシデントでその夢が絶たれた人が身近にいたとしたら、Rekklesのストーリーを見せてあげてげて欲しい。

何かのヒントになるかも。


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