繰り上げ?繰り下げ?国民年金シミュレーション

国民年金は、どのくらいもらえて、どんな選択肢があるのでしょうか?公的年金は3階建ての年金と言われます。1階部分は国民年金です。現役世代は全て国民年金の被保険者となり、高齢期となれば、基礎年金の給付を受けます。(厚生労働省「公的年金制度の概要」)

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2018/1/17日本経済新聞に「年金受給開始 70歳超も  政府検討 選択制、額は上乗せ 高齢者に就労促す」との記事がありました。また、2020/5/29に年金制度改正法が成立しました。そこで、70歳超の繰り下げ受給にも対応した国民年金の保険料の支払いと年金の給付のシミュレーションをしてみます。

免責事項

・本投稿での計算及び計算した数値は仮定のものであり、その数値に一切責任は負いません。
・本投稿での年金制度の内容は簡略化した説明なので正確な内容は必ず厚生労働省または日本年金機構のHPで確認してください。
・また本内容及び数値は2018年1月20日時点のものです。最新の情報は厚生労働省または日本年金機構のHPでご確認ください。
・本内容は個人の見解であり、所属組織とは一切関係ありません。
・もし誤った記載がありましたら、修正・削除しますので、ご指摘ください。
・公的年金の仕組みや支払い・受給額は厚生労働省や日本年金機構のHPで説明されています。

国民年金の損益分岐点

国民年金の保険料は日本年金機構のHPで調べることができます。
日本年金機構「国民年金保険料」

国民年金の受け取りにあたる老齢基礎年金の受給額も同じく日本年金機構のHPで調べることができます。
日本年金機構「老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・計算方法」

HPには「20歳から60歳になるまでの40年間の全期間保険料を納めた方は、65歳から満額の老齢基礎年金が支給されます。」と書かれています。

日本年金機構のHPに記載の月額保険料と年金額(年額)をもとに、20歳から60歳まで保険料の支払い、65歳以降の老齢基礎年金の受け取る場合の保険料と年金の累積額をシミュレーションしてみましょう(保険料、年金額は受給開始年度によって若干変わるので、必ず日本年金機構のHPを確認してください。また、マクロ経済スライドなどによる改定率は今回のシミュレーションでは考慮していません)。横軸が年齢、左の縦軸が支払保険料または受け取り年金の毎年の金額、赤のバーが支払う保険料、青のバーが受け取る老齢年金額、緑の線が保険料と年金の累積額の推移で、右の縦軸が累積額の金額になっています。

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国民年金の繰り上げ受給と繰り下げ受給

老齢基礎年金は、原則として65歳から受け取ることができますが、希望すれば60歳から65歳になるまでの間でも繰り上げて受けることができます。しかし、繰上げ支給の請求をした時点に応じて年金が減額され、その減額率は一生変わりません。(日本年金機構「年金の繰上げ受給」)

一方、65歳で請求せずに66歳以降70歳までの間で申し出た時から老齢年金を繰下げて請求できます。繰下げ率は、繰下げの請求をした時点に応じて年金額が増額されます。(日本年金機構「年金の繰下げ受給」)

つまり、国民年金には繰り上げ受給と繰り下げ受給、そして繰り上げ(下げ)を何ヶ月にするかという選択肢があります。

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では、何ヶ月の繰り上げ受給、または繰り下げ受給を選択するのが良いのでしょうか。60歳から75歳まで(据え置き1パターンと繰り上げ60パターンと繰り下げ60+60パターン)をシミュレーションして比較してみます。*繰り返しですが、本投稿での計算及び計算した数値は仮定のものであり、最新の正確な内容は必ず厚生労働省または日本年金機構のHPで確認してください。

繰り上げ繰り下げ図1

表の見方を説明します。1列目が年齢、2列目が何歳何ヶ月かを表しています。1行目は60ヶ月の繰り上げ受給(−60)から120ヶ月(現時点では60まで可)の繰り上げ受給(120)を表しています。各セルは、1行目の繰り上げ(下げ)月数を選択した場合の、1,2列目の年齢(と何ヶ月か)のときの累積年金受給額です。右から2番目の列は各行の最大の累積年金受給額です。一番右の列はその最大累積受給額を実現する繰り上げ(下げ)月数を表しており、もしその年齢が寿命だった場合に最もよい選択肢となります。もし平均寿命まで長生きできると何ヶ月の繰り上げ(下げ)受給がよいのでしょうか。

日本経済新聞2017年7月27日付記事「平均寿命、男女とも過去最高更新 女性87.14歳 男性80.98歳」
厚生労働省「主な年齢の平均余命」

参考として、表の濃い橙色が男女の平均寿命です。仮に女性の平均寿命まで長生きするとしたら、現時点でぎりぎりの70歳まで繰り下げするのがよさそうです。一方で、75歳まで繰り下げ可能になった場合、平均寿命を基準に考えても、繰り下げが70歳までと比べ、どの程度繰り下げるかの選択は悩ましい問題になります。ただ、人生100年時代と言われますが、100歳まで長生きできると60ヶ月の繰り上げ受給を選択した場合と60ヶ月(あるいは、120ヶ月)の繰り下げ受給を選択した場合とではかなりの差が出ることには変わりありません。

最後に

・累積年金受給額が最大になる繰り上げ・繰り下げ月数は基本的には寿命で決まります。
・国民年金はある程度シミュレーションできます。

そもそも年金は長生きリスクに備えるためのものです。長生きする前提で繰り下げ月数を選択するのがよいと思います。また、年金などの資産設計は自己責任です。

*本内容について、もし誤った記載がありましたら、修正・削除しますので、ご指摘ください。

参考

厚生労働省「公的年金制度の概要」
日本年金機構
日本経済新聞2018/1/17付記事「年金受給開始 70歳超も  政府検討 選択制、額は上乗せ 高齢者に就労促す」
・厚生労働省「年金制度改正法

なお、この記事のシミュレーションはプログラミング言語Pythonで計算しています。Pythonのコードを見て、自分でもPythonで計算したい方は以下を参照ください。

Pythonで国民年金をシミュレーションする

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