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#05 定年後の進路はおおむね四つだが「定年再雇用」がもっともリスキー?

~過去投稿はマガジンから~

トリプル・キャリア(ずっと、長く、働き続ける)」をうまく進められるかどうかは、
60歳で定年退職を迎えた時、
どのような働き方を選択するかが大きなポイントになります。

一般的に会社員が60歳で定年退職を迎えた時、
その後の進路の選択肢は「①定年再雇用」「②出向(転籍)」「③転職」「④起業」の4つに集約されます。
多くの人はこの順番でリスクも難易度も低いと考えています。
約8割の人が「定年再雇用」を選択していることでも、それは明らかです。

しかし、「人生100年時代」になった現在、「①定年再雇用」が本当にリスクの少ない選択肢といえるでしょうか。

私は、「定年再雇用」が終わる65歳以降の人生を考えた時、「①定年再雇用」こそもっともリスクの高い選択肢だと考えています。
なぜなら、再雇用が終了した時点で収入の道が途絶え、前述したようにお金の不安に直面するからです。

いうまでもなく定年再雇用制度はその会社ごとに条件は異なりますが、一般的にはいったん会社を退職し、
一年ごとの再雇用契約によって雇用される有期の契約社員として働く制度です。
会社によっては「参与」などの役職名が与えられますが、実態は臨時の職員であり、非正規の社員です。

したがって、年収も大幅にダウンします。
大きな企業でも、年収1000万円だった人が250万~300万円程度に大幅にダウンする例は決して珍しくはありません。

それまで管理職として働いていた人でも、部下がいない、後輩が上司になる、コピーも資料作りも自分自身でしなければならなくなります。
責任が軽くなった分、権限もなくなるので、「やりがいがない」「自分の居場所がない」といった不満を口にする人は少なくありません。

「①再雇用制度」を選択すると、こうした働き方が5年間続き、再雇用が終了した時に、収入の道も途絶えてしまうのです。

では、「②出向(転籍)」はどうでしょうか。
親会社に籍を置きつつ、子会社やグループ会社で働くことになるので、
待遇は保証される場合がほとんどです。
ただし、これは人事異動なので、定年後の選択肢の一つとはいえ、自ら選ぶことはほとんど不可能です。

次は「③転職」です。
 これは、自分が現役時代に蓄積した経験、磨きをかけたスキルが、転職マーケットにマッチしているかどうかが最大のネックになります。
年収や待遇をダウンさせずに転職できるのは、
経営経験を請われて経営陣としてヘッドハンティングされるか、
人材が不足しているニッチな分野の専門的なスキルを持った人
あるいは
起業間もない急成長しているような会社で責任者のポストに就く人材がいないというケース
くらいでしょう。

いずれにしても、転職マーケットにマッチしているかどうかが最大のポイントで、雇用条件をダウンさせない転職は狭き門です。

転職の条件は厳しく、「定年再雇用」後に転職をすると、
収入、雇用形態など雇用条件のダウンを受け入れざるを得ない場合がほとんどです。

それでも60歳で定年を迎えた時点で、条件面を柔軟に受け入れ、
根気よく探せば、仕事は見つかるかもしれません。
しかし、65歳のタイミングでは年齢が足かせになり、求人の数そのものが極端に少なくなってしまいます。

さらに雇用の条件を下げざるを得なくなり、
仮にそこで働くことになったとしても、
やりがいやモチベーションの問題で悩むことになるのではないかと思います。

※本コンテンツはCOCORO 34号をもとに再構成しています

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著者プロフィール

大杉 潤(おおすぎ じゅん)

1958年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。日本興業銀行(現みずほ銀行)に22年間勤務の後、新銀行東京の創業に携わる。人材関連会社およびメーカーの人事責任者を経て、2015年からフリーの経営コンサルタント、研修講師、ビジネス書作家として活動。

合同会社ノマド&ブランディング・チーフコンサルタント。

著書に『定年ひとり起業』(自由国民社)、『定年ひとり起業 マネー編』(自由国民社)、『定年後不安 人生100年時代の生き方』(角川新書)などがある。がある。