#06 「自分軸」を持っていれば自分のことは自分で決められる
~過去投稿はマガジンから~
ここまで、いま私が取り組んでいるスピリチュアルケアについて述べてきました。
まだ日本ではQODの意識が低いといいましたが、
私はQOLを高めることが、結局はQODの向上につながっていくのではないかと思っています。
私は、QOLを高めるためには何をするかと聞かれた時、
「自分軸を持つこと」と答えています。
自分軸を持つとは、
何でも自分が勝手に決めて、周囲のことなど気にせずに生きていくような、
自己中心的な生き方をいうのではありません。
私が考える自分軸を持った生き方とは、
自己を肯定し、自分のことは自分が責任を持って始末していくという
「覚悟」を持って生きることです。
自分軸とは、たとえれば樹木のようなもので、
幹が太くしっかり根を張っていれば、葉が茂り花が咲き、
多少の風が吹こうと揺らいだりしません。
人間というのは、何か自分にとって都合の悪いことが起きたり、
物事が思うように進まないと、
自分が置かれている環境や他人のせいにしてしまいがちです。
しかし、そうなるにはそうなっただけの原因があり、
そこには自分の存在が深く関わっているはずです。
何でも環境のせい、他人のせいにして生きていると、
必ずみじめな思いや後悔というお釣りが返ってきます。
大切な毎日をそんな気持ちで生きていると、
何でも他人と比較して一喜一憂する癖がついてしまいます。
それでは晴れやかな気持ちになることはないでしょうし、
心を病んでしまうことにもなりかねません。
他人の意見を聞くことは大事なことです。
しかし何か行動を起こす時、いろいろな意見や判断材料があっても、
最終的には自分が決めているはずです。
何事も最終的には自分で決めたという覚悟があれば、
その結果がよかろうが悪かろうが、他人のせいにはしません。
自分の軸を持っていれば、たとえ失敗しても、
責任を転嫁するような生き方にはならないと思います。
うまくいったときは素直に喜べばいいし、
うまくいかなかった時は、何か自分に至らないところがあったと反省し、
次につなげていく。
こういう生き方のほうが、
結局、豊かな人生になるのではないかと思います。
家族に延命治療をするかどうか決める時も同じです。
医師にどうするか聞かれても決められないから、
「先生ならどうしますか」と逆に尋ねます。
亡くなった時に、
「先生が延命治療をすすめてくれなかったのでしなかったけれど、
もししていたらどうなっていましたか」と、
こんなことを遺族が医師に聞く場面を何度も見てきました。
どこまでいっても自分の決断に責任を持たない。
日本はそういう社会になってしまったのかもしれません。
これも自分軸を持っていない一つの表れだと思います。
どのように死んでいくかという問題でも、
医師がそういったからしたがったというのではなく、
「自分はこういう最期を迎えたい」というほうが、
自分らしく人生を締めくくれるのではないかと思います。
大慈学苑は、
スピリチュアルケアの考え方と技術の習得に特化した学びの場です。
スピリチュアルケアは軸(バックボーン)がないとできません。
私は口を酸っぱくして自分の軸を持つことの大事さを伝えています。
釈迦は「自利行」と「利他行」という言葉を残しています。
世の中のためになる活動をするのは利他行ですが、
何でも人任せで中身のない人に、他人のためになる仕事などできません。
スピリチュアルケアも会社で仕事をすることも同様で、
まず自分のことは自分で決める、
いちいち周囲の意見に惑わされないような「自分軸」をしっかり持ってほしいと思います。
それがよりよい人生を生きる基になると思います。
皆さんもよく生きることはよく死ぬことであり、
よく生きるためには自分の軸を持って、
自分のことは自分で決めていくという覚悟を持っていただきたいと思います。
※本コンテンツはCOCORO 38号をもとに再構成しています
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著者プロフィール
玉置 妙憂(たまおき みょうゆう)
看護師・僧侶・スピリチュアルケア師・ケアマネ-ジャー・看護教員
東京都中野区生まれ。専修大学法学部卒業。国際医療福祉大学大学院修士課程保健医療学看護管理専攻看護管理学修士。
夫の“自然死”という死にざまがあまりに美しかったことから開眼し出家。
高野山での修行を経て高野山真言宗阿闍梨となる。現在は非営利一般社団法人「大慈学苑」を設立し、終末期からひきこもり、不登校、子育て、希死念慮、自死ご遺族まで幅広く対象としたスピリチュアルケア活動を実施している。
また、子世代が親の介護と看取りについて学ぶ「養老指南塾」や、看護師、ケアマネジャー、介護士、僧侶をはじめスピリチュアルケアに興味のある人が学ぶ「訪問スピリチュアルケア専門講座」「訪問スピリチュアルケア専門オンライン講座」等を開催。
さらに、講演会やシンポジウムなどで幅広くスピリチュアルケア啓発活動に努めている。
著書『まずは、あなたのコップを満たしましょう』(飛鳥新社)『困ったら、やめる。迷ったら、離れる。』(大和出版)『死にゆく人の心に寄りそう 医療と宗教の間のケア 』(光文社新書)、他多数。
ラジオニッポン放送「テレフォン人生相談」パーソナリティ。