#03 QUDを高めるためにはスピリチュアルケアが必要
~過去投稿はマガジンから~
生活の質、人生の質をQOL(quality of life)といいます。
病気になった人が治療を受けつつ、
いかに自分らしい生活をするか、QOLの維持や向上が着目されていますが、
最近では死に関しても理想的な死があり、
それを意味するQOD(quality of death)という言葉を目にするようになりました。
日本の終末期医療や緩和ケアは、他国と比較しても遜色のない水準ですが、QODの意識はどうかというと、
残念ながらあまり高いとはいえません。
超高齢化とともに「多死社会」を迎える中、
私はQODの意識がもっと高まってほしいと願っています。
前述したように、
現代医療の力を借りて最後の1分1秒まで長く命を保つというのもその人の考え方ですし、
きわめて自然な形で最期を迎えたいというのもその人の考え方です。
どちらが正しく、どちらが間違っているというものではありません。
しかし1ついえることは、
医療機関に行ってしまうと、最期の迎え方の選択肢が狭まってしまうのです。
改めて言うまでもなく、人間には心と体があります。
体のケアは医学が受け持ちますが、心のケアは誰が受け持つのでしょうか。
死を間近にした時に発せられる答えのない問いかけに対して、
誰がどう対処すればよいのでしょうか。
これまでの日本は、この点に非常に無頓着でした。
自分らしい最期を迎えたいと願う人が増える中、
スピリチュアルケアの必要性を多くの人が感じ始めています。
何のために生まれてきたのか、
死んだらどうなるのかなど、
最期を迎える人たちが科学では答えが出せない問題の答えを求め続ける苦痛を「スピリチュアルペイン」といいますが、
そのような心の苦痛をやわらげ、心を穏やかにしてあげるのがスピリチュアルケアです。
私は主人を看取るという経験をしたので、
日本の介護保険や訪問診療の制度が充実していることを実感しました。
しかし同時に、
やがて来る最期の時を受け入れながら日々を暮らしていく人や、
その人に寄り添う家族に対する心のケアがほとんど存在しないことを知り、
QODを向上させるためにもスピリチュアルケアの必要性を痛感したのです。
※本コンテンツはCOCORO 38号をもとに再構成しています
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著者プロフィール
玉置 妙憂(たまおき みょうゆう)
看護師・僧侶・スピリチュアルケア師・ケアマネ-ジャー・看護教員
東京都中野区生まれ。専修大学法学部卒業。国際医療福祉大学大学院修士課程保健医療学看護管理専攻看護管理学修士。
夫の“自然死”という死にざまがあまりに美しかったことから開眼し出家。
高野山での修行を経て高野山真言宗阿闍梨となる。現在は非営利一般社団法人「大慈学苑」を設立し、終末期からひきこもり、不登校、子育て、希死念慮、自死ご遺族まで幅広く対象としたスピリチュアルケア活動を実施している。
また、子世代が親の介護と看取りについて学ぶ「養老指南塾」や、看護師、ケアマネジャー、介護士、僧侶をはじめスピリチュアルケアに興味のある人が学ぶ「訪問スピリチュアルケア専門講座」「訪問スピリチュアルケア専門オンライン講座」等を開催。
さらに、講演会やシンポジウムなどで幅広くスピリチュアルケア啓発活動に努めている。
著書『まずは、あなたのコップを満たしましょう』(飛鳥新社)『困ったら、やめる。迷ったら、離れる。』(大和出版)『死にゆく人の心に寄りそう 医療と宗教の間のケア 』(光文社新書)、他多数。
ラジオニッポン放送「テレフォン人生相談」パーソナリティ。