見出し画像

#02 元気の秘訣は「人生、起承転転」

~過去投稿はマガジンから~

なぜこんなに元気で活動的なのか。

その秘訣を聞いてみると、「特に秘訣などない。強いて言えば自分は〝起承転転を人生のモットーにしてきたからだと思います」と言う。

「西部劇によく出てくるタンブルウィード(根無し草)は、一定の場所に根を張らず、風に吹かれて転がり続けています。
起承転転というのは、あえて人生での結論、つまり終着点となる目標を定めずに生きていこうというたとえです。
もう30代のころから、この考え方で生きてきました」

なぜ、そういう考え方をするようになったのか。
話は戦中にまでさかのぼる。

「私は海軍の少年飛行兵に志願し特攻を希望しました後、
果たさぬうちに敗戦になりました。
復員したものの学校は中途半端な形で卒業。

それでも空への夢が捨てきれず、民間の航空学校に通いましたが、
高い月謝が払い切れずに断念。

挫折続きの上に終戦直後で社会は混乱しているし、
とても人生の夢を描くという気分にはなれなかったのです」

ならば、人生の最終目標を決めずに、根無し草のように生きていこう。
そう決めたのだと言う。

「しかし起承転転、根無し草のような生き方と言っても、
転がりながら地上のゴミや空気から滋養分を吸収するタンブルウィードのように、私も常に何かを学ぼう
何かを吸収しようという気持ちを持ち続けています。
それを世間の言葉で言えば、さしずめ好奇心です。

私にとっての〝結〟は死。

そんなものいつ来るかはわからないので、考えても無駄だという反面、
毎日を旅行者や通りすがりの人のようにのんびりとは生きていません。

ですから、もし90を過ぎた私の姿が、背筋が伸びて年齢の割合には若く映るのなら、旺盛な好奇心を持ち続けていること
同年齢の人より気を抜くことなく生活しているからと言ってもよいのかもしれません」

童門さんの好奇心の強さを示すエピソードを1つ紹介しよう。

ある時、映画を観ようと東京郊外の映画館に行ったが、
映画館のチケット売り場で引っかかった。

窓口の女性が、
「スティングですけど、よろしいですか?
ロバート・レッドフォードもポール・ニューマンも出ていませんよ」
「いいですよ」と童門さん。

童門さんが観ようとしていたのは、イギリスのロック歌手スティングの作曲過程を記録したドキュメンタリー映画だったのだ。

「その女性は、窓越しに私の年齢を推し量って、私がレッドフォードとニューマンの『スティング』と勘違いしているんだろうと思ったんですね」と笑う。

童門さんは、スティングの曲作りへの情熱と、
妻の出産に立ち会う感動シーンの評判を自分の眼で確かめたかったのだ。

※本コンテンツはCOCORO 22号をもとに再構成しています

・・・・・・・・・・・・・・・

著者プロフィール

童門 冬二 (どうもん ふゆじ)

1927年10月19日、東京生まれ。
東海大学附属旧制中学卒業。海軍少年飛行兵の特攻隊に入隊。
東京都庁に勤務のかたわら創作活動を行う。

都庁では都立大学事務長、広報室課長、企画関係部長、知事秘書、広報室長、企画調整局長、政策室長を歴任。

1979年51歳で退職し、作家活動に専念。1960年、『暗い川が手を叩く』で第43回芥川賞候補。
都庁勤務時代の経験をもとに、人間管理と組織管理の在り方を歴史の中に再確認し、小説やノンフィクションの分野に独自の境地を拓いた。

著書は『小説 直江兼続』『小説 吉田松陰』『上杉鷹山の経営学』
『情の管理・知の管理』『恕 日本人の美しい心』
『人生を励ます太宰治の言葉』などのほか、約700点ある。