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プロデューサー松橋裕子さん

なければつくる!チャレンジドの精神

目的は一緒でも、手段は違う方がいい。社会に必要なのは与えられた「平等」ではなく、選べる機会の「公平」さ。選択肢にやりたいことがなければ「自分でつくる」という松橋さんの姿勢には、「チャレンジド」という言葉がしっくりくる。

欲望の怪物 公式ホームページ https://yokubouno-kaibutsu.studio.site/
株式会社MVサービス https://sss-office.com/

※本記事の取材は2021年11月に行いました。

松橋さんが、息子よっちゃんのためにつくった株式会社MVサービスのシェアオフィスで話を伺った。よっちゃんは今16歳。オンライン授業で学びながら、この会社で清掃や電気の測量などの仕事をし、粘土で作品を作っている。自閉症スペクトラム障害を持つ人でもある。母であり会社代表の松橋裕子さんは「ここの仕事はやり方は決まっていますが、時間は決めていないんです。」と言う。だからストレスがほとんどない。働いたお金を自分で使うことも楽しんでいる。オフィスにはよっちゃんの粘土作品が多数飾られていた。
今、松橋さんは2022年春撮影開始の映画の準備をしている。映像制作会社の株式会社ハピト代表の岩本京子氏とタッグを組み、劇場や市民センターなどで公開する商業映画をつくる予定。2019年公開の映画『欲望の怪物』のプロデュースから3年、新たなチャレンジである。

●背景・経緯
そもそもなぜ、映画を作ることになったのか?
きっかけは、ある懇親会で女優の森恵美さんと席が隣合い、親しくなったところからだという。半年後には具体的に映画づくりに入っていた。監督や役者を紹介され、主役は口笛奏者の加藤万里奈さんに。
「映画をつくる」のは容易なことではない。そこに挑むことができる松橋さんとは、どんな方なのだろう?
松橋さんは大学生の時にお菓子の会社を起業(後に売却)した経験を持つ。20代前半から青年会議所などとの出会いもあり、人づくりやまちづくりに関わるようになる。その後、1998年にアメリカに渡りテニスコーチとして働く。選べることが当然のアメリカでの生活を2年半続け、帰国してから1年ほどパソコン通信講座の会社で働いた。代表が長者番付に載るほど勢いのある会社で、横浜や浜松町を起点に全国を飛び歩いていた。「とても楽しかった」と当時を振り返る。
その後、結婚。そして、よっちゃんが生まれる。よっちゃんが2歳の時、将来のためにあちこち事業所を見て回ったが、ピンとくるところがなかった。「ないならつくろう!」、これが松橋さんの発想である。そしてできたのが前述のMVサービス。どんな事業展開でもできるように、定款には様々な活動を盛り込んだ。
よっちゃんは小さい頃から熱中して何かをつくり続けてきた。3歳頃までは紙をビリビリ破いてセロハンテープで貼る表現だったが、4、5歳の頃から粘土にはまった。小学生になって、小麦粘土を学校に持たせたりしていた。学童クラブに通うことになり、そこで美術の先生に出会う。その先生が「よっちゃんってすごいんですよ。つくっては壊しつくっては壊しの繰り返しなんです」と教えてくれた。小学校で6年間担任だった先生も、よっちゃんが4年生の時にクレイ粘土を勧めてくれた。そうした出会いがあって、よっちゃんは粘土で作品をつくり続けている。

●大切にしていること
人づくり、まちづくり。
茨城が変わって、日本が生きやすい社会になること。
よっちゃんが自立して暮らせる社会をつくりたい。(5年後の2026年が目標)

●課題
障害のある子だけ集める施設の在り方は、密度が高過ぎて支援員が大変だと思う。家族の幸せも見えてこない。しかも子どもたちにとっても出会いが少なく、刺激が足りない。もっと人に会う機会を増やすべきだと思う。
「障害者」という表現ではなく「チャレンジド」という言葉を日本にも浸透させたい。「よりチャレンジしてる人」という表現ならば、誰もが使え、伝えたいことも伝わる。

●支援センターに期待すること
美術館などの施設に行く時、介助員1名しか無料にならないのを何とかしてほしい。一緒に行く人はみんなが無料だと障害があっても動きやすい。
デジタルアートでお年寄りや学生もつながる活動。
水戸芸術館で障害者アート作品のオークションを定期的にやってほしい。ハウスメーカーなどをスポンサーにして、家に美術作品を飾る文化をもっと広めたい。
対話型のアート鑑賞をやってほしい。名画より障害者アートの方がメンタルに効果があるという調査結果がある。


シェアオフィスSSS 株式会社MVサービス
住所:水戸市笠原町1189-2 グリーンヒル西野ビル2F
電話:029-241-5294(9:00〜19:00)
FAX:029-243-5374
Eメール:info@sss-office.com

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話した人:松橋裕子さん(プロデューサー・起業家)
聞いた人:小堀幸子(いばふく、NPO法人 ちいきの学校 デザイン室)
聞き取り日:2021.11.28 sun.

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