講座「脳力をあげたい。そんなあなたに。」


○ワーキングメモリーとは
認知心理学で用いられる構成概念(作業記憶、作動記憶)のこと。
脳の前頭前野の働きの一つ。作業や動作に必要な情報を一時的に記憶し処理する能力。
私たちの行動や判断に影響している。
1:入ってきた情報を脳内にメモ書きする。
2:どの情報に対応すればよいのか整理する。
3:不要な情報は削除する。
(結果)4:瞬時に適切な判断を行うことができる。

〇3つの特性
①優先順位を付けて、情報を処理する
②関係のないものは、無視する
③情報を処理するために、記憶を(一時的に)保持する。(タスクに不要な思考を無視する)

例えば、話し声は、意識するとワーキングメモリの中に入ってくる。
これだけでワーキングメモリが圧迫される。
話し声を除外するのにも、ワーキングメモリが必要となる。
ワーキングメモリは、あらゆる意志決定に必要となる。
何か作業をしたり、創作的な活動でも、ワーキングメモリは使われる。

〇短期記憶と作業記憶の違い
処理をするかどうか。短期記憶は、処理をする必要がない記憶。
ワーキングメモリ(作業記憶)は、何かしらの操作や、処理をするのに使う。

〇会話の仕組み
1:相手の話を一時的に覚える(記憶)
2;話の内容から相手の意図をくみ取る(整理)
3:話の展開に従って前の情報をどんどん忘れる(削除)

勉強部屋に例える
ワーキングメモリ=作業机、入ってくる情報=本とすると。
いったん、机の上(ワーキングメモリ)に入ってきた本(情報)を並べて保存する。
机の上で本(情報)を分かりやすく並べ変え、整理して必要かどうか判断する。
いらない本(情報)は、速やかに机の上(ワーキングメモリ)から捨て(削除)する。
整理した情報の中でこれからも必要なものは、長期記憶するために本棚へ移動させる。

「苦手さと脳の使い方について」

〇記憶が苦手な場合
情報を脳内に書き留めておくことが苦手なため、必要なことを忘れてしまう。
読んだ内容を覚えていられないために文章を理解するのに時間がかかる。
頭に浮かんだ内容をすぐ忘れてしまい文章を書くことが苦手になる。

〇整理が苦手な場合
情報の整理が苦手で、入ってきた情報の中で何に注意すればよいのかがわからない。
混乱して、場違いな言動をしてしまうこと等がある。
会話の受け答えがちぐはぐになる、
どの順番で体を動かすのかわからず運動が苦手になることがある。

〇記憶の削除が苦手な場合
新しい情報を取り入れにくい。行動の切り替えや連続的に会話を続けることが難しくなる。
前の会話の内容を話し続けてしまう。
=〇ネガティブな思考が頭から離れない
失恋や不幸な出来事は、ワーキングメモリに滞在しやすくなる。
「失恋後は仕事にならない」という理由のひとつ。
理不尽なことを言われても、同じくワーキングメモリを占拠する。
まずは「ワーキングメモリが占拠されている」と、認識することです。
次に、場所を移動するなどして、気分を変える。


〇ワーキングメモリの優れた使い方

「報酬を後回しにする。」
結果とは報酬。金銭的な報酬だけでなく「うれしい感情」も報酬に含まれる。(報酬系回路)
報酬系回路は金銭だけでなく、うれしい感情や、アルコールにも反応する
報酬が得られるまで練習に耐えることは、プロスポーツでも成功の要因。
同じように仕事であっても、結果が得られるまで続けることは、成功するのに必要不可欠。
そして報酬を後回しにするには、ワーキングメモリを使う。(モチベーション管理)
私たちは、将来得られるはずの報酬を目指し、練習や作業に没頭する。
そのときワーキングメモリの中には、当面の目標が入っている。

「優先順位を決める。」
仕事ができる人は、記憶から取り出したものに対し、何が重要かを瞬時に判断する。
重要な要素を優先し、処理に使うことができる。

「よりよい記憶を蓄積する。」
ワーキングメモリは、記憶からモノを取り出し、情報を処理すること。
良い経験を積めば、より良い記憶を選ぶことができる。

「時にはリスクを選ぶ。」
将来、賢くリスクを選べるように訓練をするため。

「いらないモノを排除する(集中力)」
ワーキングメモリは、不要なものを排除する。
「周囲の雑音「「今日の夜は何を食べるか」「休日の予定」これらは今の作業に不要。
不要な情報を頭から排除するのに、ワーキングメモリを使っている。
結果的に集中できるようになる。

「ノートに書く」
「何をするべきか」をノートに書けば、ワーキングメモリの負担を減らすことができる。
ワーキングメモリの負担を減らせば、個々の行動に対して、情報を処理しやすくなる。
例:ノートに工程を書き出しただけで、作業に集中できる。⇒全体的に情報が処理しやすくなる。


〇ワーキングメモリを鍛える

「楽しいことを考える」
ポジティブな出来事に接することで活性化する領域は、
ワーキングメモリの働きが良い人の脳で顕著な活動が見られる領域の一部である。
脳は鍛えれば(特定の脳領域の体積が)大きくなるので、
楽しいことを思い出したり想像したり、
明るい未来を想像するといったトレーニングをする。

「イメージングをする」
日常的にワーキングメモリを鍛えるために、生活の中に「イメージング」を取り入れる。
「頭の中にイメージを思い浮かべる訓練」のこと。覚えるべき単語をイメージして絵にする。
本を読み、ラジオ、ドラマや落語、CDを聴き、情景を頭の中でイメージするのもいい。
複数の食材から、作る料理をイメージするのも有効。

「デュアルタスクを行なう」
デュアルタスクとは、運動と知的作業の2つを同時に行なうこと。
2つの作業を同時に行ない脳を混乱させると、脳はその混乱を整理しようと働く。
それが、脳の活性化につながり、ワーキングメモリを強化することにもなる。
脳トレのような、遊びのような感覚で。

「普通の生活を健全に送る」
適度に体を動かしながら、料理をしたり、掃除をしたり、人と楽しく話したりする。
食事の際に噛む回数を多めにすると良い。
仕事力アップのために、日常生活を大事にするという視点も持つ。

「前頭前野を活性化させる」
ワーキングメモリの働きを担っている前頭前野は、論理的・合理的に考えたり、
記憶したり、感情をコントロールしたり、判断したりする働きをする。


〇ワーキングメモリを解放する
もともと容量が少ないワーキングメモリに、次から次へと情報が来ると、
先に入った情報からどんどん出て行ってしまう。
ワーキングメモリが圧迫されると、大事な情報を思い出せなくなったりミスをする。
必要のない情報をどんどん外へ出してやれば、ワーキングメモリに空きを作れる。
ワーキングメモリをうまく解放すれば、記憶力や仕事の処理能力をアップできる。

「メモを取る」
ワーキングメモリを解放するには、メモを取ることが有効。
情報をメモに記録すると人はその情報を忘れてしまう。
何かの情報を得た時、「気になるな、あとで調べてみよう」「これは役に立ちそうだからしっかり覚えておこう」などと考える。そういう場合にメモをとらずにそのまま頭の中に残しておこうとすると、
ワーキングメモリを圧迫してしまうことになる。

必要な情報は、できるだけこまめにメモに記録を取る。
情報のことをいったんワーキングメモリから追い出すことができ、
空きを作ることができる。メモさえ取っておけば、後でそのメモを見返せばよい。

「仕事がうまくいくか不安」「人間関係で心配事がある」「悩みや不安を抱えている」
こうした場合、ワーキングメモリは不安で満たされた状態。不安は紙に書き出し、ワーキングメモリから不安を追い出してしまうと良い。

「脳を休ませる」
ワーキングメモリの中の情報が過多となり圧迫された状態は、脳疲労をひきおこす。
脳の処理能力を超えるほどの情報が入ってきてしまうと、脳の機能が低下し、
集中力や仕事のスピードが低下したり、ミスをしやすくなったりしまう。
頭の中は大事な情報でいっぱいで、次から次に仕事をこなさなければならないのに、
どうも効率が上がらないならもしかすると脳疲労を起こしている。
脳に疲労がたまってストレスが発散できない状態のとき、
休んでいるつもりなのに過去の失敗や余計な不安などが頭をよぎることがある。
脳ではデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)という領域が過剰に活動している。
このDMNは脳が使うエネルギーのうち60~80%も消費してしまう。
脳を休ませるにはDMNを抑えることが大事。
頭に浮かんでくる雑念を取り払い、「今ここに」集中することで、
無駄なエネルギーの消耗を抑え、ストレスを緩和することができる。

ワーキングメモリの強化には反復練習

〇ワーキングメモリを削ってミスを防ぐための練習
ワーキングメモリをフルに使うと、頭の中が疲れてしまう。これは、典型的なミスの原因。

例:「A→B→C→D」の作業を7セットする場合。
「AからD」の作業を、ワーキングメモリにセットすると、ミスが起きやすくなる。

そこで「A」だけの作業を7セット行う。次に「B」だけ7セット、「C」だけ7セット
…と作業順ならワーキングメモリを削減できる。
たったこれだけでミスが減るだけでなく、劇的に作業効率がアップする。

〇創作物でワーキングメモリを意識する
創作物では「ワーキングメモリの容量が7つ前後」という法則を意識して書く。
ドラマの脚本、小説、映画、いずれにしても登場人物は、7人以下にする。

〇ワーキングメモリの向上に役立つリスト
テレビを見ない
机を整理・整頓する
相手を楽しませる
料理のレシピを考える
十分な睡眠をとる
タバコを断つ
相手の話を聞き、頭にとどめる(相手の話を遮らない)
特に相手とコミュニケーションをとるには、ワーキングメモリを使う。
相手の話を遮らず、一通り聞いて、頭に入れることが大切。

参考文献

ワーキングメモリとは?生活に不可欠な役割、発達障害との関係、調べ方、対処法をご紹介!
https://h-navi.jp/column/article/35026645?page=1


脳の「ワーキングメモリ」を鍛える方法。仕事の能力、勉強の効率アップには、ワーキングメモリの強化と解放が効く!
https://studyhacker.net/columns/workingmemory-image

ワーキングメモリを鍛えるとADHDが改善。テストとアプリ紹介
https://intome.jp/adhd-working-memory/

ワーキングメモリ(作業記憶)を解説|頭の良い人はどう使っている?
https://no-mark.jp/liveescape/brainpower/working-memory.html


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