境界線
C:なあ、朝と夜の境界線ってどこだと思う?
D:何だよそれ。6時ぐらいじゃねえの?
C:適当だな、お前。6時っつったら、もう朝だろ。
D:お前は視野が狭いなあ。冬の6時は暗いぞ。
C:じゃあ、まだ朝じゃないじゃん。
D:まあ、そうだな。
C:そうなんだよ。朝と夜の境界線って、季節によって違うんだよ。
D:それがどうかしたの。
C:境界線は動くってことよ。
D:よく分かんないけど、それって珍しいの?
C:国境でも、県境でも基本的には動かないじゃん。
D:でもさ、海と砂浜だと動くぜ。
C:・・・
D:何だよ。
C:一理あるじゃねえかよ。
D:そうなんだよ。
C:境界線が動くのなんて、意外と珍しくないのかもな。お前に教えられたみたいでくやしいけど。
D:じゃあさ、モミアゲとヒゲの境界線はどこだ?
C:知らねえよ。まっすぐ下りてきたところはモミアゲで、顎のほうから伸びていったところは、ヒゲだろ。
D:アホか、お前は。その境界線がどこかって聞いてんだろ。
C:だからさあ、ここだよ、ここ。えらのとこ。
D:そこは「モゲ」だよ。
C:はあ?「モゲ」って何だよ、「モゲ」って。
D:グレーゾーンだよ、グレーゾーン。モミアゲでもあり、ヒゲでもあるところ。
C:あのな、モゲを増やすとな、モミアゲとモゲの境界線と、モゲとヒゲの境界線ができんの。余計、話がややこしくなるだけなの。
D:・・・
C:何だよ。一理あるだろ?
D:お前は理屈っぽいな。このまま面倒くさい先輩になるんだろうな。後輩に煙たがられるんだろうな。
C:お前は適当すぎて、煙たがられるぜ。
D:煙たいか、頼りになるかの境界線はどこだよ?
C:ないない。白か黒のどっちかだよ。
D:グレーゾーンは無いのか。
C:無いね。
D:あ、青になった。
C:どうする?まっすぐ?曲がる?
D:蕎麦屋のランチなんだっけ?
C:ミニカレー丼セット。
D:おし、じゃあそれだ。
C:オッケー。