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#22 今の私は

高校3年生の前期がもうすぐ終わる。

私は進路志望調査用紙に何を書けばいいのかわからなかった。

学友は各々就職や進学についての方向性を持っていたし、中には明確に自分の未来を見据え自慢げに語っている人もいた。

特に勉強に力を入れてこなかった私の進路は、就職ということで親と教師との間話が進められていた。

選択肢の一つを奪われた気がしたが、それに抗う活力は湧いてこなかった。

仕事に就く、働くって何だろう。

きっと当時考えても答えが出ないことを思い詰めたまま、卒業後は地元のスーパーで働くことになった。

働き始めても特に思うところがなかった。

家と学校の往復が家と職場の往復に変わっただけだった。

働き始めて数年経った頃、近所の小学校から職場見学で小学生たちがやってきた。

目をキラキラさせた1人の生徒が私に向かってこう言った。

「スーパーで働くのは楽しいですか?」

私は言葉に詰まった。

小さな子どもの活力に私は気脅されていた。

「楽しいよ」

私は含蓄の無い返事をした。

若さに当てられた私は次の日から自分に向き合うことにした。

自分のために生きようと思った。

職場も辞めた。

貯金を使って自分のために学び、新しく自分の職を探そうと行動した。

きっと何歳から行動したって、今からだって自分のために生きられると思って。

今の私は件の小学生とおなじ目をしているはずだ。



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