【インタビュー】日中の企業をつないでイノベーションを促進 中国で働く醍醐味は?
今回は、日中でのスタートアップおよびイノベーション連携を推進するアクセラレーター「匠新(ジャンシン)」で働く朱真明さん(27歳)に話を聞いた。10月9日の日中茶龍のイベントでも講演してもらっている。
中国国籍。日本で生まれ育ち、高校卒業後に上海理工大学に進学した。在学中に1年間のインターンを経て、2017年に匠新に入社した。
現在の仕事や中国の大学に進学した理由、仕事の醍醐味などを尋ねた。
−現在の仕事を教えてください
日中のイノベーションを加速させるのが弊社の仕事です。私は、日本の大手やスタートアップなどさまざまな企業の支援をしています。
大手企業向けには、中国国内のイノベーションに特化した調査からマッチング、コラボレーション支援をしております。例えば、中国国内の自動車業界やEV業界の現状やトレンドを調査したり、中国国内のイノベーションの最新事例、動向を探ったりしています。それらの結果から、中国国内の旬なスタートアップをリストアップするなどして、業界の調査レポートとして提供しています。そして、優良候補となる中国スタートアップと日系大企業をマッチングし、コラボレーションまでサポートします。
そもそも日系大企業のイノベーションには3つの段階があります。
1つ目は、中国のイノベーションの現状理解です。まず、クライアントの関心領域や意向を聞き出し、調査対象となる領域を絞ります。
2つ目は、接触です。ここでは中国企業とのマッチングをサポートします。顔合わせはオンラインの会議で行います。私は間に立ち、通訳やミーティングの進行をし、円滑なコミュニケーションをサポートします。
3つ目は、行動です。日中の企業がコラボしていくにあたって、まずは方向性を相談しながら決めますが、コラボレーションが実行可能か、効果を得られそうか検証が必要になります。その検証をPoCとよく呼びますが、このような検証をスピーディーにできるようにサポートします。他には、技術面での問題に直面した場合、技術を補完しプロジェクトの達成に繋げられそうなパートナー企業を探したりもします。このようにワンストップで幅広くイノベーションをサポートしています。
スタートアップ向けには、中国進出をする際にパートナーとなる中国企業を紹介し、彼らのコラボをサポートします。サンプルを使ってデモをしたり、商品の説明をしたりと、中国事業の開拓を幅広くお手伝いしています。
ー中国の大学に進学した理由は何ですか?
*中国人の親友と撮影した写真
異文化を知るためです。海外は新世界であり、前々から行ってみたいという気持ちがありました。アメリカも調べましたが、自分にとって関係性が強い中国を選びました。
私は日本生まれ日本育ちですが、中国国籍を持つ中国人です。今までとは違う新しい世界に向かうのなら、まずは中国を考えるのは必然だったかもしれません。ほかにも、中国は人口の多く、市場も大きいので、挑戦し甲斐があり、大変魅力的でした。また、中国の大学の学費も魅力でした。アメリカよりも安く、学べることも多そう。コストパフォーマンスがいいと感じました。
それに、私は中国籍でありながら当時、中国語ができませんでした。つまり、中国は馴染みのある国というよりも、未知な国でハードルを感じるところでした。
ー日本と比べて中国のよさはなんですか?
1つ目は、社会の発展の早さです。新しいものがポンポン出てきて、暮らしもどんどん便利になり面白いです。当初学生時代で特に印象的だったのが、QRコード決済やシェアサイクルの急速普及です。
2つ目は情報が多いことです。私は調べ事が好きなのですが、日本ではデータを多く含んだ最新の市場分析レポートといった情報収集が難しい印象で、ほとんどが有料コンテンツでした。中国ではレポートに加えて、業界についてのアナリストの見解などをまとめた記事が多く、全く退屈しない。パソコン一台でも図書館以上の勉強ができます。
3つ目は、コミュニケーションスタイルが日本と真逆でダイレクトなところです。日本のコニュニケーションスタイルは相手と対立しないために、意見の違いを表明することは避けがちであったり、結論を最後に回したり、表現も遠回しにしている。これは大変高度で難しいやり方だと思っていて、聞き手に言葉以外の意味を理解することを求めている。一方で中国人は、ダイレクトにコミュニケーションをとります。伝えたいことをストレートに話すので、コミュニケーションが速いし楽。そのため、物事が電話一本、数秒で決まるぐらい、スピーディーです。ダイレクトなコミュニケーションがとれるところがいいですね。でも、これはあくまで私個人の好みで、それぞれに取って代えられない良さがあります。
ー日本のよさは?
礼儀正しく、時間をコントロールしやすい点ですね。例えば5分前集合が徹底されているので、ミーティングを時間ぴったりに始められます。そのような時間に対する認識が社会全体で共有できていると思います。
例えば、バスや電車も分単位でしっかり管理されているので、スケジュールを細かく効率的に立てやすいです。それに比べて、中国はバスや電車の時間がアバウトで予定が変わりやすい。また、ミーティングでも時間に遅れる人が多いです。時間をコントロールしやすい点が日本のいいところです。それによって集団行動の段取りが効率よくできるのが日本の強みだと思います。
ー中国で働くことへの対不安はありましたか?
*仕事中の朱さん
不安はありました。私は日本育ちで日本人と同じ立ち位置なので、中国人とのコミュニケーションでうまく立ち振る舞えるか怖かったです。周りを中国人に囲まれれば、私は不利なポジションにならないか、心配でした。
しかし実際は私の勝手な想像でした。現実はみんなウェルカムでした。
語学力の不安も大きかったです。ハイレベルなミーティングについていけず、足手まといになるのはいやだと思っていました。しかし、それは克服すべき点であり、挑戦的なこととして捉えるべきだと考え直しました。
ー大学から中国語を学び始め、中国で働きたいと思っている方にアドバイスをお願いします
スタートが大事だと思います。卒業や就職する時になって、中国で働く理由を考え始めては遅いです。大学在学中から、自分がどこで働きたいのか、バイトダンスなのかテンセントなのか、それともファーウェイにいきたいのか、そこに行ってどうしたいのか、しっかり考えて早い段階から準備したいです。直前になって迷っていると、日本と中国のどちらの就活の機会を失ってしまうかもしれません。
できれば、大学3年でインターンに行き、アクションできると安全です。時間がある人は、何をしたいのか考えることに、時間をたくさん使ってください。
私はちょっと遅めで、大学4年からインターンを始めて、一年間バタバタしながら就職に悩みました。日本に戻って働くか、中国に残って働くか考える時間が足らず、非常に悩みました。
来年中国で就活をする方は、まだ間に合います。中国にはどういう企業があり、どんなことをしているのか、そこで働いて自分はどんなことが出来そうか、たくさん調べてみましょう。日本にも法人がある中国企業もたくさんあり、日中をまたがる業務は沢山あります。色んな会社を理解するため、好きになるぐらいまで調べてみてください。やりたいことを何個か見つけられといいですね。
同時に日本の会社も見ないといけないと思うので、普通の就活より時間をかけてください。方向性を定めることが最優先です。
ー中国に留学する時に、一番大切なことは何ですか?
中国人の友達を作ることです。中国人とたくさん遊んで、コミュニケーションをとって、親友を作ってください。中国をより理解できるし、中国で大変な時に支えになってくれるし、中国語も自然と伸びます。
ー最後に中国に興味を持つ方へ、メッセージをお願いします
日中で活躍できる人材は非常に必要とされています。両方の言語で通訳できるぐらいになればどこでも通用します。日中の会社ともにそういった人材を確実に必要としています。今あるこのチャンスを掴んで欲しいなとお思います。
もう一つ、専門領域も持って欲しいなと思います。言葉はあくまでもツールです。言語を習得して、自分の強みを活かせる領域を明確することも大事です。
(日中茶龍と共同で作成した記事です)
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文/Shiyoh
(インタビュー内容は読みやすいように編集されています)