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人民元を電子マネーにして、中国が世界を監視? - 『選択(1月号)』を読んで

今回のテーマ : #デジタル人民元 #一帯一路 #信用経済
今日紹介する記事 『中国経済支配権「大拡張」の切り札「デジタル人民元」の脅威(選択1月号)』

2020/02/19 作成

皆さんは電子マネーを使っていますか?
PayPayだったり、Suicaだったり……小さい買い物ならお財布要らずで非常に便利ですよね!
最近はキャッシュレスで支払うと、割引が効くお店もあるので、使い始めた方も多いのではないかと思います。

……そう。今日は真面目にお堅く経済のお話です。珍しいこともあるもんだ。
でも非常に興味深くて面白いトピックです。
これから取り上げるニュースは、まるで都市伝説のように思われるかもしれません、でもお隣の国で、実際に起きるかもしれないお話です。

1.中国の人民元が電子マネーに?

「デジタル人民元」という奇妙な言葉が世界の金融関係者を動揺させています。
一国の通貨を電子マネー化してしまおうという大胆な取り組みです。

当の中国では日本とは比べ物にならないレベルでキャッシュレスが浸透しています。中国全土で、もはや電子マネーなしでは生活ができないほど。
そこに乗り出そうとしているのが、中央銀行である中国人民銀行です。
では、通貨を電子マネー化することでどのようなメリットがあるのでしょうか?

まず中央銀行による紙幣と貨幣の発行が停止し、莫大な通貨発行コストがなくなります。
たとえば、日本円の通貨発行コストは年間2兆円。中国は人口も経済規模も日本以上なので、それ以上のコスト削減につながります。

また銀行の窓口業務やATMが不要になり、そこにかけていたコストもなくなります。それらのコストを維持する為に、日本は今後「口座維持手数料」を導入すると言うのに……。

その他にもお金の流れが管理しやすくなるので、金融をはじめとした様々な業界においても、経理の手間がグッと減ることになるでしょう。不正もしにくくなって、経済が健全化するかもしれません。

良いこと尽くめですね。
そして、もしかしたらデジタル人民元は世界中に好循環を生み出すかもしれません。

2.EUを超える超巨大経済圏誕生!?

先に紹介したデジタル人民元のメリットを享受できるのは中国だけに止まりません。
習近平政権が進める現代版シルクロード「一帯一路」上にある東南・中央アジア諸国です。

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(↑中国とヨーロッパを陸と海の2つのルートで結ぶ大交易路。一帯一路上で貿易が加速中!)

一帯一路上の東南・中央アジア諸国にはインフラ整備などの名目で2兆元(日本円で約32兆円)を超える人民元が公的資金や企業の投資の形で流れ込んでいて、ラオスやミャンマー, トルクメニスタン, キルギスなどは人民元が両替なしで利用できるほど流通しています。

もしデジタル人民元が現実のものとなったら、経済途上国であるアジア諸国が自国の通貨主権を
放棄し、主要通貨に人民元を採用することも十分考えられます。

そして完成するのが、EUを超える、人民元の超巨大経済圏です。途上国の経済も活発になり、貿易もより盛んに行われることでしょう。

……と、一見すると最高なデジタル人民元。
しかし、その先には恐ろしい未来が待っているかも知れません。

3.そして、信用社会は超監視社会へ??

話は変わりますが、中国には芝麻信用(ジーマシンヨウ)なるサービスがあるのを知っていますか?

中国の電子マネー最大手 : アリペイを展開するアリババグループ発のこのサービスは、「個人の信用度合いをスコア化し、スコアが高い人は様々な特典を享受できる」という信用経済/信用社会の先駆けとなるものです。

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(↑詳しくは『ビジネスモデル2.0図鑑(チャーリー)』へ)

信用スコアは「個人特性」「支払い能力」「返済履歴」「人脈」「素行」の5つのカテゴリーからなり、信用スコアが高いとサービス利用時のデポジットがなくなったり, 金利が優遇されたりします。

なぜこのようなスコアが算出可能かというと、中国のキャッシュレス経済のおかげです。
消費や金融取引, 公共料金に至るほぼ全てのお金の流れが追跡可能なので、その人が“何を買ったのか”や“どんなお金のやり取りをしているのか”などが分かってしまうのです。
その為、個人特性や人脈や素行など、非常にパーソナルな指標が暴き出されてしまうわけです。

では、デジタル人民元の導入により、“中国政府“がお金の流れを把握できるようになったら・・・。
個人や企業, さらにはデジタル人民元を採用した周辺諸国の経済活動が、全て国に筒抜けになってしまいます。

芝麻信用は民間サービスなので個人情報は保護されていますが、中国政府は分かったものではありません。あの中国ですからね。
詳細に個人情報や国家情勢が暴かれてしまうでしょう。

そして完成するのが、中国による超管理社会です。

イギリスの哲学者ジェレミ・ベンサムが設計した全方位監視システムを持つ刑務所 : パノプティコンが世界を舞台に実現してしまうかもしれません。

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(↑中央の看守塔から、円形に設置された独房を監視。最小人数の看守で最大人数の犯罪者を監視できるように設計されたシステム。怖っ。)

電子マネーを支えるブラックチェーンは、本来は権力の分散化を促進させるシステム。
それを国家が活用すると、こんな危険をはらんでしまうのだなぁと思いました。

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今日紹介した記事

『中国経済支配権「大拡張」の切り札「デジタル人民元」の脅威』

選択(2020年1月号) 選択出版より

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