【ラグビーW杯が100倍楽しくなる】真に歴史を変えるのは今の日本代表だ - 『奇跡のチーム ラグビー日本代表、南アフリカに勝つ』を読んで②
今日紹介する本 『奇跡のチーム ラグビー日本代表、南アフリカに勝つ』生島淳 著
2019/10/20作成
2019/10/22 『後書き』を次のnoteに書きました
2019/11/10最終更新
全体目次
1.(無駄に長い)前置き
2.本の紹介
3.強いチームを作るには
4.歴史を変えるのは、今大会の日本代表だ。
後半は3から行きます。
3.「誇り」こそがチームを強くまとめるために必要なのだ
前半『日本代表の成長物語は、漫画そのものだ』で書きましたが日本代表には「敗北の歴史」しかありませんでした。
初めての練習試合。
強豪相手に109対0という大差でボコボコにされた選手を、滝沢は暖かく迎えようとする。
しかし、選手たちは全く悔しさを見せない。
滝沢は叫ぶ。「お前たちは0の人間か!悔しくないのか!」と。
…
「悔しいです!」森田がそう叫ぶ。
心の奥底で悔しい思いを抱えていた選手たちは、森田の叫びに呼応していく。
そして滝沢は愛の鞭を選手たちにお見舞いする。
決意を新たに、思いを1つにした川浜高校ラグビー部は相模一高にリベンジを誓うのだった。
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…ごめんなさい、これスクールウォーズのあらすじでした。
しかし、スクールウォーズと同じぐらい熱いドラマがエディー・ジャパンにはあるのです。
…イソップ……(涙)。
日本が強くなるために、まず、何から始めたか?
チーム全員で君が代を歌いました。
エディーとメンタルコーチの鈴木香織は語ります。
勝つ文化も何もないチームなんだから、目に見えるところから始めないと。
何も財産がないチームにとっては、とにかく行動すること、言葉にすること、目に見えることからスタートすることが肝心なんだ。
「言葉で示して」「形で表して」なんて、言ってることはメンヘラな恋人とおんなじですが、30人以上のチームが同じ方向を向くには非常に大切なことです。
そしてチームは幾度となくミーティングを重ね、気持ちを1つにしていきます。
世界から尊敬を集めるには、W杯の舞台で結果を残すしかない。
日本のラグビー選手たちの憧れの存在になろう。
そして、歴史を変えよう。
廣瀬(エディー・ジャパン初代キャプテン)やリーダーたちの情熱が徐々に周りの選手たちにも波及し、意識が変わり始めた。
その為には、ハードワークを惜しんではならない。
エディーの鬼のしごきに耐えられたのは、選手たちもエディーと同じビジョンを共有していたから。
「歴史を変えよう」と。
そして、その為には「日本代表としての誇りが大切だ」と。
かつての日本は、代表になることがトップ・プライオリティではありませんでした。
それもそのはず。せっかく主力を代表に取られても、世界の舞台で敗北するのみ。彼らのホームチームとしては弱体化するだけです。
まるで社内研修に行くときに「1人減って現場は大変だなぁ」と職場に苦い顔される時と同じではないですか。
これで強くなれるはずがありません。
W杯前のフィジー戦で、攻めきれず敗れた直後の練習。それにもかかわらず弛緩した空気でいる代表に、日本ラグビー界のレジェンド : 田中史朗は喝を入れました。
「普通のことができてないよ。負けているのに、そういう練習でジャパンと言えるのか!」
田中はニュージランドでプレーして、彼らのオールブラックスへの憧れがいかに強いか、その目で見ていた。
「向上心もなく、ただ練習をやらされて中途半端な気持ちで代表に入ってるんだったら、若手でやりたい人がいっぱいいるし、替わって欲しい。やっぱり、ひとりひとりが日本代表に誇りを持って、そういうチームにしなきゃ、日本としてもレベルが上がらない」
まるでスクールウォーズの滝澤そのものじゃないですか。
森田くんの「悔しいです!」が聞こえてきます。
…ごめんなさい。これザブングルの加藤くんでした。
ともかく、スーパーラグビーでプレーした田中だけはエディーと同じ目線、つまり世界レベルの目線を持っていたのです。
それでも13年にウェールズに勝ったときから、選手たちの中にプライドが確実に根づき、ラグビー界が変わり始めました。
南アフリカの試合前、日本のトップリーグ全チームから代表に向けた応援メッセージが届きました。
こんな事、かつては考えられなかった。
それを見た五郎丸は「この4年間で、トップリーグや大学でプレーする選手たちがジャパンに憧れるようになった。それが日本ラグビーに起きた最も大きな変化だ」とあらためて感じました。
そして「そのカルチャーを作ったのはエディーであって、俺たちなんだ」とプライドが湧き上がってきました。
そこまで日本をまとめ上げ、日本代表をラガーマンみんなの憧れにした立役者は、エディー・ジャパンの初代キャプテン : 廣瀬俊朗です。
彼は一見不遇の存在です。
最初こそ「日本代表としてプレーすることに誇りを感じる数少ない選手」としてキャプテンに任命されるも、試合での出番を与えられず、リーチにキャプテンを譲ります。
それでも、試合に出れなくても、彼は日本代表のために自分の役割を見つけ、献身します。
南アフリカの選手の研究を続け、練習では適役を買って出て相手選手の動きを再現しました。
厳しい練習の合間にトップリーグに働きかけ、応援メッセージを集めたのも廣瀬です。
そこまで出来るでしょうか?
試合の出番は与えられず、キャプテンから外され、自身のプライドはズタズタになったはずです。
それでもチームに貢献する。
彼こそ「日本代表としての誇りとは何か?」を真に体現した存在なのです。
彼の背中は日本のラガーマンたちを勇気付け、代表への憧れを植えつけました。
そして、トンプソンルークをはじめとした外国出身の選手たちは、「日本への思い」を具体的なものにしようと日本代表のテーマソングを作りました。
それが『ジャパニーズ・ソルジャー』です。
全員で君が代を歌わされていたチームが、ここまで来たのです。
自分の所属する集団を愛していれば、ひとりひとりから様々なアイデアが出てくるようになるのです。
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僕はこの物語を読んで、ある先輩の言葉を思い出しました。
「せっかくのサークル活動なんだから、学生が楽しまなきゃ意味がない」
僕は大学時代にボランティアサークルに所属していました。
活動の性格上、真面目で優しい人が重宝されます。
その先輩も、僕も、お酒が大好き騒ぐの大好きで、サークルでは異端でした。
そんな僕は、新歓期に「新入生にサークル活動の概要をしっかり説明して、理解者を加入させよう」というコンセプトに少しだけ意見しました。
「優しい人は確かに大切だ。それでも、活動に積極的に参加してくれるのは優しいだけの人じゃない。このサークルを好きな人だ」
「だから新入生に楽しい思い出をたくさん作ってもらって、このサークルを好きになってもらうことも大切なんじゃないか」
「その為には、いろんな人を加入させて学生が楽しめるようなサークル作りを目指そう」と。
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なんとなく、ラグビー日本代表と繋がるものがあります。
たとえ試合に出れなくとも、国籍が違くとも、「それぞれがチームを愛し自らの役割を見つけることで、奇跡のチームが出来上がるのだ」と。
エディー・ジャパンが教えてくれた考え方は、これから先ビジネスシーンでリーダーシップを発揮する時、必ず役に立つと思います。
かくして日本代表は南アフリカに勝ち、世界にも引けを取らない強さを持つチームになったのです。
4.そして、真に日本の歴史を変えるのは今の日本代表だ
これまで、4年前の日本代表の軌跡を追ってきました。
確かにエディー・ジャパンは優勝候補の南アフリカを倒し、「敗北の歴史」を覆しました。
しかし、歴史とは積み重ねるものです。
日本は今大会でW杯開始当時世界ランキング1位のアイルランドを撃破し、2度目のジャイアントキリングを果たしました。
そして予選で全勝し(スゴイ!)、日本の歴史上初めて踏み入れる決勝リーグ。その初戦の相手は、4年前に勝った南アフリカです。
もう、彼らは舐めてかかっちゃくれません。全力で向かってくるでしょう。
ここで再び南アフリカに勝つことで、日本の歴史は本当の意味で変わると言えます。
4年前、サモア戦で勝った直後、五郎丸歩はこう漏らしました。
「物足りねえ。南アフリカ戦の、あの興奮には到底及ばない。もう一度、魂を揺さぶられるような勝利が欲しい。」
…と。
前回大会で日本には確実に「勝つ文化」が定着しました。
そして日本は年間240日もの合宿を経て、今大会に臨んでいます。もう毎日ラグビー漬けです。選手たちは前回大会時以上の負荷を己に課しています。
エディーは前回大会で日本を去りましたが、彼がもたらしてくれた「勝つ文化」はそれ以降の日本代表も確実に強くし続けているのです。
その中で、最も成長したのはリーチ・マイケルでしょう。
試合前日の練習をラグビーでは「キャプテンズ・ラン」と言います。主将が主導となって試合直前の動きをチェックするからです。
しかし、エディー・ジャパンにおいては試合前日の練習を「ゲーム・リハーサル」と呼んでいました。
リーチにチームを背負うキャプテンシーが無いと判断されていた為です。
あれから4年が経ち、エディーが去った今、リーチは名実共に日本の支柱となっています。
アイルランド戦では彼が途中出場してから日本の猛攻が始まり、スコットランド戦ではボールを持つだけで会場がリーチコールの大合唱でした。
もう僕それだけで号泣してます。
そして、もう1人、日本の支柱となっているのは日本ラグビー界のレジェンド : 田中史朗です。
彼は日本人で初めて南半球3カ国のプロチームが競う、世界最高峰のスーパーラグビーでプレーした選手です。
野球で言えば野茂茂雄や松井秀喜、サッカーで言えば中田英寿や香川真司、バスケで言えば田臥勇太や八村塁です。
そんな生きる伝説が、今大会を最後に日本代表を引退します。
彼に最高の勝利をプレゼントしようじゃありませんか。最高の応援で後押ししようじゃありませんか。これから先の景色を一緒に見ようじゃありませんか。
もう1度言います。歴史とは積み重ねるものです。
前大会で「敗北の歴史」を覆し、ここからが「勝利の歴史」に変え、積み重ねるターンです。
そして、歴史とはそれを語り継ぐ者がいて初めて形となるものです。
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再び、トンプソンの叫びが聞こえてくる。
「歴史を変えるのは誰?」
歴史を変えるのは、今の日本代表だ!
そしてそれを見届け、語り継ぐのは同じ時代を生きる僕たちだ!
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スポーツ史に残るジャイアントキリングから4年経ちました。
あれから吉田沙保里は「霊長類最強パーソナリティ」としての第2の人生を歩んでいます。
あれ?意外と女性らしくて綺麗だな?
と思ってもまだまだ桐谷美玲は秒殺ですし、なんならヤンクミも秒殺です。
それでも桐谷美玲は抜群に綺麗です。人にはそれぞれ役割があるのです。
それぞれの個性を結集させて、奇跡のチームが出来るとことをみなさんはもうお分かりでしょう。
2019年10月20日。
ラグビーW杯日本大会決勝リーグ。
ここに全ての舞台は整いました。
さぁ、応援しましょう。
そして日本の歴史が変わる瞬間を見届けましょう。
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今日紹介した本
奇跡のチーム ラグビー日本代表、南アフリカに勝つ
生島淳 著
2019年 文春文庫より
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