だからみんな彼に聞くんだ。 - 『なんで僕に聞くんだろう。(幡野広志)』を読んで、そして彼に出会って
今回のテーマ : ** #誰かと比べない生き方 **
今日紹介する人 幡野広志 『なんで僕に聞くんだろう。』を通して
2020/02/23 作成
今日は絶対におすすめしたい人を紹介します。
何かを他人におすすめするモチベーションって様々ありますが、今回はタイミング。
「もっと若い時に、この作品に出会えたらよかった」とか「解散してからこのバンドを好きになったけど、現役の時に追いかけたらもっと楽しかっただろうになぁ」って思うことって、誰にでもあると思うんです。
幡野広志さんは、末期のガン患者。
医師から宣告された彼の余命は、残り僅かしかありません。
彼の作品に、言葉や写真に触れるなら、絶対に今触れてほしい。
彼がまだ、この世界で生きているうちに。
幸運なことに、この三連休中は彼の記事を無料で読むことができます。
(↑あとでもう一度紹介します)
この機会に皆さんに彼を知ってほしいから……。
今日は拙いながら、ご紹介させていただきます。
1.人物紹介
(↑彼のnote『妻の写真。』より)
幡野広志(はたの・ひろし)
写真家。1983年、東京生まれ。2004年、日本写真芸術専門学校中退。2010年から広告写真家・高崎勉氏に師事。同年「海上遺跡」で「Nikon Juna21」受賞。2011年、独立し結婚する。2012年、エプソンフォトグランプリ入賞。2016年に長男が誕生。2017年、多発性骨髄腫を発病し、現在に至る。著者に『ぼくが子どものころ、ほしかった親になる。』(PHP研究所)、『写真集』(ほぼ日)、『ぼくたちが選ばなかったことを、選びなおすために。』(ポプラ社)がある。
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『なんで僕に聞くんだろ』より
彼は写真家であり、父であり、そして末期のガン患者です。
医師から3年の予定を告げられ、それ以来自分自身や家族と向き合ってきました。
そしてその過程をブログや著書で公開しています(どれもすごく心に残るので、読んでみてください)。
そんな彼の元には、日々多くの人からの励ましや応援のメッセージ、宗教や健康食品や高額な治療法の勧誘メッセージが届くそうです。
そして彼の思いもよらないことに、人生相談のメッセージもたくさん届くそう。
ガン患者やその家族の相談だけならまだしも、恋愛相談なんかもたくさん届くらしいです。
今日は、そんな彼の人生相談をまとめた本をご紹介します。
2.作品紹介
幡野広志さんの『なんで僕に聞くんだろう。』です。
本書はcakesの連載の中から37本の人生相談を選び、加筆修正したものです。
出版を記念して開催された『幡野広志のことばと写真展』も大盛況でした。
(↑普段彼の文章しか読まないから、写真にもたくさん触れられてよかった)
さらに今だけはその中から16本の記事が無料で読めます。だから目を通してほしい!今だけだから!マジで!
本当に、彼の人生相談からは色々なことを気付かされるし、学ばされるし、温かい気持ちにさせてくれます。
今日は書籍と無料公開記事に最初に収録されている人生相談を、それぞれご紹介します。
人生相談① 「大切」=「邪魔」
Q
子どもを産みたい。
44歳独身です。同じ年の、家庭のある恋人がいます。
(中略)暖かい我が子をこの両腕に抱きたい。
今の彼の子を望むつもりはありません。彼の大切な家庭を壊す気持ちはありません。
年齢的にはぎりぎり、望めない訳ではない年齢というのが、諦めない言い訳になっています。
ご意見を、いただけませんか?
・
『「先の長くない友人のためにも、子供を産みたい」のウソ』より(みみ 44歳 女性)の人生相談から一部抜粋
彼のもとには不倫相談も多く届けられるみたいです。
彼の答えを読んで、ぼくは衝撃を受けました。
A
たくさんの不倫相談に目を通していて、気づくことがあります。それは自分を偽っている人があまりにも多いということです。負い目を感じているためなのか、自分を綺麗に見せようとする人ばかりです。
不倫相談をする方々がよく使う言葉があります。それは「大切」という言葉です。
彼には大切な家族が…。私には大切な子どもが…。
日常会話でわざわざ大切なんて言いません。ぼくは息子のことを紹介するときに、大切な息子です、とは紹介しません。こういう話を聞くたびに、「大切」という言葉には、邪魔という意味が込められているんだなぁっていつも感じます。
「今の彼のこと望むつもりはありません。彼の大切な家庭を壊す気持ちはありません」
相談者さんのこの一文、ぼくにはこう読めます、きっと本心はこうでしょう。「彼の子が欲しいです。私にとって邪魔な、彼の家庭が壊れてほしいです」
(中略)
誤解してほしくないのは、相談者さんにご自身が自分を偽って、自分を綺麗に見せて、しあわせは誰かがきっと運んでくれると信じているところに、ぼくは疑問を感じます。
まずは自分にウソをつくのをやめて、正直になりましょう。自分に正直になれたら、彼にその正直な気持ちを伝えましょう。
・
同じく回答から一部抜粋
これすごくないですか?
なんでここまで本質を見抜けられるのでしょう。
読んでる僕まで「グキッ…」ってなりました。
全く飾らない、嘘偽りのない、真摯な答えだなぁって思いました。
人生相談② 比べない彼の優しさ
Q
私は41歳の女です。
21歳の男の子と付き合って3年になります。
彼を好きになればなるほど、付き合いが長くなればなるほど私といたら彼の、人生を壊してしまうような気がして苦しくなります。
かといって、私はずるいので、彼のことが好きだから身を引くことを選ぶことができません。
いつか、彼が私から離れていく覚悟はしているのですが、私はそれまで彼とこのままでいいのでしょうか? それとも彼の幸せやご両親のことを思ったら、今すぐ身を引くべきでしょうか?
まとまりのない文面ですみません。
・
『人が生きる理由』より(匿名 41歳 女性)の人生相談から一部抜粋
この相談に答えるにあたって、彼はこうはじめました。
A
さいきん生きる理由をよく考えています。いつか死んでしまうのに、なんで人って生きるんだろう?ということをぼくは病気になってからよく考えるようになったんです。
(中略)あなたはいつか彼が離れてしまうと分かっているのに、なんで彼と付き合っているのでしょうね。状況こそ違うものの、ぼくはあなたとすこし似ているのではないかと勝手におもいました。ぼくのたどりついた答えをよかったら参考にしてみてください。
・
同じく回答から一部抜粋
これもすごいですよね。
確かに、「いつか別れるかもしれないのに、このまま付き合ってても良いのでしょうか?」という相談者の悩みと、「いつか死んでしまうのに、どうして人は生きているのでしょう?」という回答者の悩みは、どこか通じるものがあります。
それでも、絶対幡野さんの方が辛いはずなのに。
悩みの重さなんて、比べるものじゃないし、そもそも比べられるものですらないけど、それでも幡野さんが感じた辛さや絶望や虚しさはとてつもなく大きいはずなのに、なんでこんなにも歩み寄れるのでしょうか。
彼の優しさに、泣いてしまうところでした。
そして彼がどんな答えを出したのかは、無料公開されている記事でも読むことができます。明日までなので是非。
本当に彼の人生相談は素晴らしいです。
僕は彼の人生相談や著書, 記事をいくつか読む中で、なんでみんな彼に相談するのか、少しだけ分かった気がします。
3.他人と比べて生まれる価値に、意味なんてない
彼のことばに触れていると、彼は「他人と比べて生まれる価値に、意味なんてない」って言っているように思います。
優劣とか, 妬みとか, 世間体とか…そういうものに気を取られて自分の選択肢や行動を狭めてしまうのって、すごくもったいないなぁって思わされます。
そして、彼は自分と自分が好きな人の幸せを真剣に考えて行動しています。
自分の幸せのためになにができるか, 自分の行動が、本当に相手の幸せのためになっているのかを常に考えています。
でもそうな風に生きるって、なかなか難しいじゃないですか。
学校行くのは面倒だけど、親の期待は裏切りたくないし, 仕事辞めたくても、職場に迷惑かけるのは忍びないし, 全てを捨てて旅に出たくても、子どもや恋人を残して行けないし…。
気づけば僕らの人生は、本当にいろいろな関係性から成り立っていて、どうしてもそれに囚われてしまいます。
そうしているうちに、何が僕たちの本当の幸せなのか、よく分からなくなってしまいます。
だからみんな幡野さんに相談するのだと思います。
幡野さんの言葉には嘘がありません。
死が近いからか、歯に絹着せない物言いのせいか、こんなにも心に響く言葉はありません。
時には言い訳じみた考えや, 隠した本心を見抜かれて、ショックを受けることもありますが、彼は本当に優しく僕たちの背中を押してくれます。
4.彼が生きているうちに、彼の言葉に触れてみてください
2017年、彼は多発性骨髄腫を発病し、その年末に、彼は医師から3年の余命を宣告されています。
2020年は彼が当時医師から宣告された余命が経過する年です。
彼が亡くなってしまうなんて、信じられませんが、その時は必ずやってきます。
だから今しかないんです。彼がこの世に生きているうちに、彼の言葉に触れてみてください。
そして、心の中でもいいから、彼に人生相談をしてみてください。
きっと彼は、僕たちの背中を優しく押してくれるはずですから。
・・・
僕は彼のおかげで自分の人生について考える機会をもらいました。
最後の瞬間まで、僕が僕であるために、何ができるのかを考えました。そのために、僕はいつか、スイスを訪れようと決めています。
彼に届くか分からないけれど、お礼を言わせてください。
ありがとうございます。
(↑幡野広志のことばと写真展にて)
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今日紹介した本
なんで僕に聞くんだろう。
幡野広志 著
2020年 幻冬社より
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