『富士宮衣裳店の奇跡』を始める。
今、私の目の前に廃棄処分される100着以上のウェディングドレスがある。
「知り合いの衣裳屋さんが店を畳んだから、ウェディングドレスを見に来ない?来週には廃棄するのだけど・・・」と数年ぶりに知人から連絡が来た。
慌てて駆け付けた静岡県富士宮にある衣裳店。
シャッターが下ろされ、電気もガスも通っていない店内にズラリとドレスが並べられていた。
どのドレスもバブル時代を彷彿させるデザイン。正直、今どきではない。
しかし、20年以上経っているであろうドレスたちは、どれもが新品のようにきれいに保管されていた。
一着ずつ触ると、心が温かくなり、思わず涙が溢れてきた。
おそらく店主の愛情がドレスに今も込められているのだろう。
知人の女性も同じことを感じていたようで
「廃棄することが勿体なくて・・・。でもデザインが古すぎて使えないよね?」
その問いかけに私も前向きな答えが浮かばなかった。
「日本で廃棄されたウェディングドレスを途上国に届けたい!」と意気込んでいた4年前。今ではすっかり目を背けていた。
そんなとき、私達が出会うきっかけとなった米倉誠一郎先生が、こんなメッセージを送ってきたのだ。
『奇跡は願うのではく、起こすものだ。』
そうだった。これは偶然ではなく必然の出会いだったのだ。
数年ぶりに知人の女性に再会できたご縁。
いきなり現れた廃棄ウェディングドレス。
夢から目を背けていた自分。
富士宮衣裳店の店主の愛情が、私達を繋げてくれた。
もう一度、ウェディングドレスを輝かせるために。
本日は、私の父の誕生日。
心を込めて、物語を始める。
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