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「スプラトゥーン2」に学ぶ、愛されるためのゲームデザイン

まいどーうっくんです。

今回はスプラトゥーンという任天堂のゲームにおける、秀逸なデザイン(ゲームデザイン)の数々についてちょっと書いておきたいと思う。
スプラトゥーン1は少し触っただけで、あんまりやり込んでないので、本記事は主にスプラトゥーン2の内容に沿っている。

スプラトゥーンを知らない人のために説明しておくと、3人称視点の対戦型オンラインシューティングゲーム、TPS(米:third-person shooter)とも呼ばれているタイプのゲーム。

野蛮じゃないシューティングゲームを作れるか

TPSやFPS(米:first-person shooter = 一人称視点のシューティングゲーム)といったジャンルは結構昔から一定の人気があり、Xboxやプレイステーションシリーズでは常にメジャーなタイトルがリリースされていた。

しかし、そのほとんどが、ライフルや戦車、戦闘機などを用いたリアルな「戦場・戦闘」をテーマにしており、どうしても「残虐な」イメージが伴った。

それ故、任天堂は長らくこのジャンルには手を出してこなかった。親が「子供にやらせてもOK」と思えるかどうかが、任天堂の中で一定の基準になっているという風に、私には見えていた。(若干の例外として、64の007ゴールデンアイや、メトロイドプライムシリーズがある)

そんななかで、2015年に鮮烈なデビューを飾ったのが「スプラトゥーン」だ。

スプラトゥーンの中に登場するキャラクターは「インクリング」と呼ばれるイカのような生き物で、ライフルで銃弾を撃ち合う代わりに、水鉄砲のような武器でインクをかけ合って遊ぶ。
イカ状態と人型状態に変身しながら戦う。

殺伐としないための「ゲームデザイン」

シューティングゲームというと、「殺す」、「殺される」というようなどうしても殺伐とした雰囲気が出てしまって任天堂の世界観とマッチしない。

そこで、スプラトゥーンが取ったアプローチは相手を倒すことではなく「どれだけ床を自分のインクで塗れたか」で勝敗を決めるというもの。対戦は箱庭形式のステージで行われる。ステージは複数用意されており、ステージによって戦略なども変わってくる面白さがある。

これはナワバリバトルと呼ばれるスプラトゥーン内のルールで、4対4の対戦形式で行われる。もちろん相手に直接インクをぶつけて倒せば床を塗るチャンスが広がるが、戦闘は行わずに逃げ回っているだけでも活躍できる。(相手のインクで倒されたプレイヤーはスタート地点に戻ってやり直しとなる)

殺伐としたゲームにならないよう、ゲーム内の表現にもかなり気を使っている。シューティングゲームでよく見られる「キル」「デス」のような表現は使わず、「やられた」のようにソフトな表現を心がけているように見える。

英語版ではより顕著で、相手に倒されることをsplattedと呼んでいる。(splat: 水しぶきが飛ぶ音。ここではインクでやられているので、「インクをかけられてやられた」というようなニュアンスを造語で伝えている)

気楽に遊べる「ナワバリバトル」と、ガチ勢が集う「ガチマッチ」

そうは言っても結局初心者と上級者の間で圧倒的な技術差が出てしまうことは避けられない。

気楽に地面を塗りたいプレイヤーと、シューティングで相手をガンガン倒したい人ではミスマッチが起こってしまう。

そこで、スプラトゥーンでは「ナワバリバトル」のほかに「ガチマッチ」と言われるガチ勢向けの対戦ロビーを用意し、ナワバリバトルとは異なるルールで対戦できる仕組みになっている。

初心者がいきなりガチマッチに突っ込んでボコボコにされないように、一定のレベルに上がるまではガチマッチがプレイできないようになっており、プレイヤーをちゃんと軌道に乗せてからハマらせるような設計になっている。この辺りの、プレイヤーを楽しませるゲームデザイン(レベルデザイン)も任天堂は得意である。

塗ったやつが偉い

ナワバリバトルでは、地面を塗った量でポイントが計算される。勝敗決定時の画面では、そのポイントが高い順にプレイヤーが上から並べられる。
これによって、どれだけ逃げ回って一切の戦闘を拒否していようが、たくさん地面を塗れていれば最後に「表彰」されるのである。
この塗りポイントのほかに、いわゆる「キル数」と「デス数」も数値として表示されるが、スプラトゥーン2からの変更点として「デス数」は表示されなくなった。
その代わりに「スペシャル技発動回数」が表示されるようになった。ここには任天堂の「戦犯探しをするのはやめよう。スペシャル技をできるだけ活用するように心がければもっと勝ちやすくなりますよ」という初心者への間接的なアドバイスが読み取れる。
スペシャル技を発動するためのゲージは相手に倒されると減少してしまうので、スペシャルを多く使おうとすれば自ずと相手に倒されないような立ち回りを考えるようになる。「あなた、こんなにやられてますよ」と言うよりも「やられなければスペシャル技がたくさん使えて強いですよ」と言う方がプレイヤーにとって改善点が見えやすい。

初心者に優しい「武器デザイン」

通常のシューティングゲームと言えば、ピストルやライフルでの撃ち合い。スプラトゥーンも例外ではなく、水鉄砲型のスプラシューターやわかばシューターが標準的な武器となっている。ただし、見た目はよりオモチャっぽくなっており、やはり野蛮さが軽減されている。

また、それ以外にも非常にユニークな武器が用意されている点も、このゲームが「初心者に優しい」部分だろう。

その代表的な武器が、ころころとローラーを転がすことで床を塗ることができるスプラローラー。

これのおかげで、エイム(シューティングゲームで、相手を倒すために画面上の照準を移動させる技術)が苦手な初心者でも簡単に地面を塗ることができる。さらにこの転がし操作中に相手を「轢く」、またはローラーを大きく振りかぶってインクを浴びせると、相手を1撃で倒すことができるという強力な一面もあり、初心者だけでなく上級者にも使ってもらえるような「やり込み要素」を入れているところにも任天堂の卓越した設計力を見ることができる。

親御さんに嫌われないための、「2時間ルール」

スプラトゥーンは4対4のチーム戦で争うオンライン対戦が基本のゲーム。オンライン対戦は一般的に、一緒にプレイする相手が途切れないため「ずっとやってしまう」ということで、不健全なイメージがある。
ゲームをプレイするキッズの親御さんとしては困ったところだ。
しかし任天堂はここにもゲーム内で配慮を用意している。
それが、ガチマッチのルールが2時間で変わるというもの。
どうしてもこの手の対戦型オンラインゲームは、負け込んだり、勝ちが続いたりして、やめどきが分からなくなるという問題がある。
それに対する任天堂のアンサーが2時間おきにルールを変える、というものである。
実はガチマッチは3種類の異なるルールで構成されており、その3種類のルールが2時間おきにローテーションする仕組みになっている。(最近のアップデートでルールが追加されて、4種類になった)
どんなに負けが続こうが、勝ちが続こうが2時間以上同じゲーム(ルール)をプレイし続けることができない。

プレイヤーのランクも3種類のルールごとに決められているので、ルールが変更されると「今日はこれぐらいにしておこう」という気持ちになれる。

これのおかげで「今すぐ辞めなさい」と言われた子供も「あと10分でルールが変わるからやめる」と、自ら区切りがつけられるように工夫されている。

まだまだ紹介しきれていない細かいデザインがあるが、自分が感じた大きな部分はこの辺りである。

このように、1つのゲームをプレイしながら少し考えを巡らせるだけで、様々な問題解決を見ることができる。

妻は「こいつ大人のくせにいつまでゲームなんかやっとんねん」と思っているかもしれないが、真面目にやればゲームにもたくさん学ぶところがあるものである…

#デザイン #ゲームデザイン #スプラトゥーン #スプラトゥーン2

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UI/UXデザイナー うっくん
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