
ネステのシンガポール製油所の拡張が完了、SAF生産は年間最大100万トンに
フィンランドのエネルギー企業ネステが所有する、シンガポール西部トゥアス地区にある製油所の拡張工事がこのほど完了した。
ネステは世界最大級の再生可能燃料製造会社で、フィンランド、オランダ、シンガポールに製造工場を所有し、廃食油や動物油脂等を原料に、年間約10万トンのSAFを生産している。
同社は2018年12月、シンガポール工場での再生可能燃料の生産量拡大に向けた投資を決定、総額16億ユーロの拡張プロジェクトが進められていた。施設稼働は当初22年の予定だったが、新型コロナウイルスの影響で遅れていた。
拡張工事により、同プラント工場の再生燃料の生産能力は年間260万トンへ拡大されるが、このうち最大100万トンをSAF(持続可能な航空燃料)として使用可能となる。これにより現時点で、シンガポールが世界最大のSAF製造国となった。

SAFはトゥアス地区の製油所で製造された後、近隣のブレンディング工場に送り、ジェット燃料と混合した上で航空会社に供給される。
ネステでは同空港でのSAF補給のため、空港内の燃料貯蔵・インフラ会社であるチャンギ・エアポート・フュール・ハイドラント・インストレーション(CAFHI)の少数株を取得することに合意している。
同社は現在、シンガポールのチャンギ空港のほか、米国のサンフランシスコ空港とロサンゼルス空港、オランダのアムステルダム空港、フィンランドのヘルシンキ空港など、航空機にSAFを直接供給できる空港の世界的なネットワークも拡張している。
航空業界で脱炭素の「切り札」とされるSAFだが、現状では世界のSAFの供給量は年間の航空燃料消費量の1%に満たず、供給も遅れている。
ネステはSAFの需要増加を見越し、シンガポール工場のほか、オランダ工場も増強する方針で、生産能力は19年の10万トンから23年に150万トン、26年に220万トン体制とする計画だ。さらに使用済み揚げ油など廃食用油の需要が高まり不足する懸念があることから、木質残渣や都市ゴミ、藻類など原料の多様化も進めている。
SAF争奪戦が激化する中、ネステは積極投資によりSAF生産能力を拡張し、SAFの世界展開の拡大を目指す。
23年5月30日掲載