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D2Cの強い味方「b8ta/ベータ」

皮肉なことに、ネット専業であるはずのD2Cにとって意外に重要なのがリアル店舗をしっかり運営すること、と前回のnoteで書いた。なぜならば、ユーザーとブランド・商品の接点という意味で、リアル店舗以上の体験を創り出せるものがそう多く存在しないからだ。オンラインのみでそれを行うとするとやはり多額の費用が必要になるし、その効力は次第に低下してきたように思われる。

ただしたとえば書籍など、ユーザーがすでにタイトルや著者など商品に関する主要な情報を認識している場合、無数に存在する書籍の中から、情報にマッチするものを一つ取り出せば良いのだから、リアルであることのメリットは少ない。あるいは何かいいものはないかと、興味を抱く分野を絞ってオンラインショップ内をブラウズする人もいるだろうから、そうした場合もオンラインショップには一定の優位性がある。つまり何かしら明確な目的意識を持ち、検索することで商品にたどり着くという検索型の購買行動であれば、オンラインショップはリアル以上のメリットをユーザーに与える。

ここに、そうした目的を持った検索型には当てはまらない、これまで誰もイメージしたことがないユニークな商品を持つD2Cがあったとしよう。彼らはどのようにユーザーにたどり着けば良いのだろう。開発したユニークな商品を購入してくれそうな消費者層と商品との接点を、どのようにしたら創り出すことができるのだろうか。一般的には広告やメディアによる商品紹介、つまりパブリシティが有効と推測されるが、メディアの注目を得ることはそうたやすくはない。

そうした場合、人の多く集まる立地、特に目的を持たない暇人がたくさん歩いているような場所に店舗を持つことが一つの解決策となる。目的もなく街をブラブラしていたら、面白い、考えても見なかったものに出会ってしまい思わず購入した、あるいは強く興味を抱くようになった、という経験は誰にもある。街をブラブラするのはそうしたことも一つの目的になっているだろう。偶然が創り出す思いがけない出会い、セレンディピティというやつだ。エンターテイメント目的の購買行動と言ってもいいだろう。

ところがそうした場所に店舗を作り、運営するためには多額の資金と手間が必要になる。そうしたD2C企業のニーズを拾い上げ、消費者とのリアルな接点作りを代行してくれる企業の一つが「b8ta」(ベータと読む)である。たとえばマンハッタンではメイシーズの1階で店舗を運営しているほか、全米の大都市の優良立地に展開している。ベータ店内では数多くのD2C企業の商品をユーザーが自由に手にとって試せるように陳列し、商品ごとにiPadを使った機能紹介ビデオも流している。

こうした企業はベータ以外にもすでにいろいろと存在している。それぞれ得意な分野があるようで、たとえばベータにはハイテク商品が多く取り揃えられており、ネイバーフッドグッズにはファッションとコスメ系商品、ショーフィールズには女性雑貨的なものが揃っている。いずれも店舗があるのは時間消費型の立地であり、たとえばマンハッタンであれば観光客も多く歩いているようないわゆる繁華街である。

ベータにはマルイが資本参加したようで、まもなくマルイ店舗内に日本ではじめてのベータがオープンされるようだ。マルイがベータ経由で日本に持ち込める商品がどのくらいあるのかわからないが、オープンしたら楽しい店になりそうだ。ちなみに僕がマンハッタンの店で見つけて気に入ったのは、留守番する愛犬がどのように過ごしているかをスマホから見ることができるペット用の留守番カメラ。様子を見るだけではなく、愛犬に呼びかけたり、おやつをポンッと投げ与えることもできるのが面白い。(巻頭写真はベータのマンハッタンメイシーズ店舗)




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