コンサルタントの問題解決術 - 2つの問題構造化フレームワークを使いこなす-
みなさんこんにちわ。tohari.です。
コンサルタントには、経営、マーケティング、財務、業務改善など様々なジャンルがありますが、どのジャンルであっても必ず問題解決スキルが求められてきます。そしてその問題解決において特に重要になるのが、原因の解明です。問題解決において問題の解明・原因の特定こそがもっとも難しく、問題解決の8割を占めるといっても過言ではないと思います。
そこで今回はその問題解明でよく用いるフレームワークを2つご紹介していきたいと思います。このフレームワークは筆者が実際のコンサルティングサービスにおいて用いるものでもあり、どのように問題を整理し解決策を考えているのか、その思考のプロセスに触れていただけるものでもあります。
これらのフレームワークを使いこなせばコンサルタントだけでなく様々な問題解決の現場で役立ちますので、ぜひ最後までご覧いただき実践いただければと思います。
ビジネスにおける問題の「性質」を正しく認識する
問題解決手法に入る前に、まずビジネスにおける問題の性質と問題解決に求められることについてお話ししていきたいと思います。
日本全国にはおよそ390万社くらいの会社がありますが、課題のない会社は1つもありません。どんな業績の素晴らしい会社であっても常に前進が求められますので、その中で目標があり、それを達成するための問題なり課題なりがあるからです。
その際企業はその問題解決に取り組むわけですが、問題解決と言ってもビジネスの問題は数学のそれとは異なります。数学の問題にはいわゆる「公式」があり、それを覚えて当てはめることで、その問題を解くことができます。
ですが、ビジネスの問題には「公式」というものは存在しません。つまり必ず正解に辿り着く1つの方法というのが存在しないのです。同時に数学のように答えも1つではありません。例えば「売上を上げたい」という問題解決の答えには、新規客の獲得、既存客のリピート促進、価格の高いメニュー開発、新しい宅配サービス、新しいキャンペーンの実施など様々あり、基本的にはどれも間違いではないのです。
ただし、それぞれのアイデアには有効性の高さ低さが存在しますので、当然効果の高いと思われる解決策に対して優先的に取り組む必要があります。
これが戦略・計画になるわけです。
このようにビジネスの問題には、「公式がない」「答えが1つではない」という性質がありますので、その問題解決にあたっては
様々な選択肢(解決すべき問題の候補、施策候補)を棚卸し = 全体を漏れなく俯瞰する
そしてその中から優先順位を決める = 合理的に判断する
というプロセスが大切になります。
言い換えれば問題解決は、「思いつきで取り組まない」ことがとても重要だということです。思いつきのアイデアも基本的には間違いではないとは思いますが、多くの場合において全体を俯瞰した中から選んだアイデアより有効性が低いのが実際だからです。そして思いつきでない物事の決定には、公式がない分、きちんとした思考プロセスがとても重要になる、ということなのです。
問題解決の方法を得る前に、まずこの前提をしっかりと認識していただければと思います。
2つの問題構造化手法
それでは問題解決手法の中身に入っていきたいと思います。
問題解決は、上述した通り問題の解明(=問題の構造化であり、解決すべき課題の特定)がとても重要なのですが、それには2つの方法があります。
リニア(liner/線形)とサーキュラー(circukar/円形)です。
リニア(liner/線形)な問題構造化手法(ロジックツリー型)
リニアとは、文字通り直接的な構造で物事の因果関係を紐解いていこうとするフレームワークで、その代表がロジックツリーです。
ロジックツリーはとても有名なので、もうみなさんある程度ご存知ですよね?
ここではあまり深く解説しませんが、例えば「製品品質が低下している」という問題であれば、「技術力の問題」「設備の問題」「作業プロセスの問題」「検品方法の問題」というように大きく原因を分解することができます。さらにそこから細かく原因を掘り下げていくことで、問題に関係する根底的な原因リストを作成でき、その中から特に重要と思われる原因(本質的な課題、優先的に解決すべき課題)に対して改善を行うことで、合理的に問題解決に繋げていくことができます。
このロジックツリーは、このような原因解明(問題構造化)だけでなく打ち手考案にも使えるとても汎用的なフレームワークなのですが、一方、実際のビジネス現場では様々な要因が絡み合って複雑な問題体系となっているケースも多く、そのようなケースにはこの1方向的な(リニアな)問題構造化では全体を整理しきれないケースが多々あります。
そのような際に用いるのが、サーキュラー(円形)な問題構造化手法になります。
サーキュラー(円形)な問題構造化手法(プロセスマップ型)
サーキュラーな問題構造化手法の代表はプロセスマップというものになるのですが、ロジックツリーと比べてあまり聞きなれないかと思います。ですが、実際のビジネスではこちらの方が問題の構造化として役立つ場合が少なくありません。
例えば上図のような場合、「売上が低迷している」という問題の原因の1つとして、「EC部門と店舗部門の不仲」があったとします。このことによって顧客の奪い合いが起こり、適切な情報共有がされなかったり、また売上の低い部門の組織的立場が弱まり、スタッフの不平不満とモチベーションの低下を招いたり、売上に応じて予算も削減されプロモーション活動も停滞したりなどが起こります。そしてそれがさらに一方の部門の売り上げ低下につながっています。
このようなケースの場合、例えば売り上げ低迷の原因がEC部門にあったとしても、EC事業に力を入れようにも、予算が削減されていますし、そもそもスタッフのやる気も低い状態ではなかなか結果にはつながりづらい状態にあります。また、このような問題構造の解明にロジックツリーを用いてその根本原因として「EC部門と店舗部門の不仲」を炙り出したとしても、大人同士を仲良くさせるなど、おそらく直接的な解決は難しいでしょう。
このようなケースの問題解決は、根本原因の解決というより、どこでも良いのでプロセスのどこかを変えていくことが求められます。つまり、今まで悪い方向に循環していたループに、改善可能な箇所から新たな道を作り出し、ループを再構築するという解決手法です。
根本原因を炙り出しそこを改善することで問題解決へと向かうリニアな問題構造化(ロジックツリー)とは、明らかにアプローチが違うのがお分かりかと思います。
実践的な活用方法
ではこれらのフレームワークをどのように使いこなすのか?
1つの問題解決策に対して2つの問題構造化手法を用いながら、考えていきたいと思います。
まずロジックツリーを作ってみました。
太った原因を上記のように抽出することができました。
一番右側の中で太る以前から特に大きく変わった部分を特定し改善していくことができれば、確かに問題解決にはつながりそうです。
でも何かしっくりこないと思いませんか?
次にプロセスマップ的にこの問題の構造化に取り組んでみました。
ロジックツリーで出てきた原因要因がプロセスマップにも登場してきますが、どちらか片方にしかない要因もあります。そしてマップ全体から見えてくる意味合いもロジックツリーのものとは全く違ってきました。
プロセスマップ的な分析から、ことの発端(根本)は「仕事の忙しさ」にあることがわかってきましたが、では「仕事の忙しさを変えるにはどうすれば良いか?」という問題解決をすれば良いのでしょうか?でもそれでは仕事を失いかねませんよね?
それでは、太る以前から大きく変わった箇所が食事の摂取量だったとして、「食事の摂取量を減らすにはどうすれば良いか?」という問題解決をすれば良いでしょうか?そのアプローチは間違いではないかもしれませんが、単純にそれを考えるだけでは今度はストレスの発散先がなくなり、新たな問題(精神疾患など)を引き起こしかねない、ということがプロセスマップからはわかるわけです。
つまり、最初のロジックツリーのように、発生理由や発生過程を追わないで原因特定をするだけの問題構造化では、現実的なアイデアは出しにくいことがわかります。
ロジックツリーは様々な原因要因を抜け漏れなく洗い出す作業には使えますが、ビジネスの問題解決にはそれだけでは不十分ですし、またプロセスマップも原因要因の洗い出しにおいてはロジックツリーほど有効ではないので、基本的にはロジックツリー的な原因分析とプロセスマップ的な原因分析の両方を行うのが最も良いと思います(*)。
*プロセスマップの内容とロジックツリーの内容を照らし合わせて、最終的には必要な要因は全てプロセスマップに落とし込む。
プロセスマップによる問題構造化からアイデア出しまでの行い方
サーキュラーな問題解決ではプロセスのどこかを変えることが大事なので、まずは出てきた原因要素の中で、改善可能な箇所をいくつかピックアップします。以下の赤字部がそれにあたります。
ここでは、一旦「精神的ストレス、疲れ」「食べ過ぎ、飲み過ぎ、偏り」「摂取カロリーが多い」「夜遅くにご飯を食べる」「運動に行くのが面倒」の5つをピックアップしてみました。
次にこの5つの改善可能要素に絞って、問題をもう1度捉え直してみます。
上手のように、それぞれ問題の捉え直しができました。
次に、捉え直した問題に対して、解決の方向性を考えていきます。
上図のように解決の方向性が見えてきましたので、その方向性に対してアイデアを出していきます。
このようにアイデアを出すことができれば、あとは各アイデアを、実施した場合の「有効性」と実現できそうかどうかの「実現性」で評価していきます。
このような評価結果から、優先的に取り組んでみるアイデア(黄色)を特定していくことができました。
いかがでしょうか?
このようなプロセスを辿ることで、おそらくロジックツリーだけで解決策を考えた場合より、より現実に即した改善案を出すことができたのではないでしょうか。
まとめ
今回は原因の解明で用いる問題構造化のフレームワークを2つご紹介させていただきました。
最後はロジックツリーよりもプロセスマップの方が有効性が高いような書き方になっていますが、確かに現実のビジネスではプロセスマップでの分析の方が有効な施策アイデアに繋がりやすいとは思います。
ですが、プロセスマップは、問題が発生する過程を調べたり考えたりして見える化する点で難しい部分があり、かつ上述したように原因要因を網羅的に洗い出す点においてはロジックツリーの方が行いやすい、という特徴があります。
そのため、プロセスマップの前段としてロジックツリー的な原因分析を行うと、よりプロセスマップが描きやすくなりますので、基本的には両方を使って原因解明を行なっていくことをお勧めします。
ぜひ皆さんも一度試してみてください。
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