ショッピングセンターのWEBサイトが全部同じに見える件
マーケティングディレクター兼データサイエンティストのtohari.です。
最近ショッピングセンター各社のWEBサイトを見る機会があり、少し思うところがありましたので、共有したいと思います。
それはタイトルにもあるように、各社のWEBサイトが多少の差こそあれ、どこも同じに見えたのです。
それぞれ特徴的な商業施設であり、リアル店舗では独自性を強く意識して設計・運営されていますが、WEBサイトになると、まるで同じサイトフレームに当てはめて作ったかのように、どこもかなり似ている・・・。一体どうしてですかね?
おそらく原因の1つには導入しているCMSの限界もあるのだろうと思いますが、それにしても、という印象です。いずれにしろ、WEBサイトという重要な顧客接点がブランディングに有効活用できていないのはとても残念なことです。
そこで今回は、現状のSC各社のWEBサイトを振り返りながら、どんな展開の可能性があるのか考えていきたいと思います。
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各社のWEBサイトの現状
まず今回この記事で取り上げたショッピングセンターは、以下の5つです。
ららぽーと豊洲 https://mitsui-shopping-park.com/lalaport/toyosu/
ラゾーナ川崎 https://mitsui-shopping-park.com/lazona-kawasaki/
オリナス錦糸町 https://www.olinas.jp/
ラチッタデッラ川崎 https://lacittadella.co.jp/
東京ソラマチ https://www.tokyo-solamachi.jp/
選定基準は、どこも首都圏にあり、都心にも生活圏にも近く、地域性とファミリー層を意識した大型商業施設、というところです。
まずは商業施設名を隠した状態で、各社のWEBサイト(TOPファーストビュー)をご覧ください。
ぱっと見で、みなさんはどこまでわかりますか?
正解は、こちらです。
1つ目:オリナス錦糸町
2つ目:ラゾーナ川崎
3つ目:東京ソラマチ
4つ目:ららぽーと豊洲
5つ目:ラチッタデッラ川崎
そもそも各商業施設を知らないと、WEBサイトの印象から当てることなんてできませんよね。でもそれぞれ知っていたとしても、ブランド性がWEBサイトに反映されていないので、見分けるのは結構難しいのではないかと思います。
サイト名を入れ替えても成立しそうですので。
ちなみに、各商業施設はこんなブランドです。
各社、コンセプトも商業施設もこだわって、ちゃんとしたブランド性があるのに、WEBサイトは残念です。
各社のサイト構造
続いてWEBサイトの基本構造を見ていきます。
各社のTOPページのサイト構造を単純化してみると、以下のようになります。
非常にションプルで、かつご覧のようにサイト構成はほぼ同じです。さすがに各社サイトカラーは違いますが、中面ページの構成も大体同じです。
でもこのようなサイト構成はショッピングセンターだけに限ったものではなく、例えば百貨店も同様で、小売業全体に言える傾向のように思います。
なぜこのようになってしまうのか。
理由は先にも述べたCMSという物理的問題に起因している点もあろうかとは思いますが、ブランド統制がWEB部門にまで効いてないという組織的問題や「WEBサイト=店舗情報の発信メディア」という、WEBに対する理解の問題もあるように感じます。
昨今、オムニチャネルという考え方が広まっていますが、その視点に立てば、WEBは旧来の情報発信メディアという領域を超えた1つの重要な顧客接点として、店舗ではできないサービスを提供する「サービスチャネル(事業チャネル)」やユーザーエンゲージメント(共感性)を高める「ブランドチャネル」としての役割もおのずと見えてきます。
WEBチャネルは、その捉え方・考え方1つで可能性を広げていくことができるわけです。
そしてもう1つ。
クライアントのWEBサイトへの理解不足があった場合、それを補うのが、専門家である広告会社やWEB制作会社になるのですが、広告会社はまだしも、WEB制作会社の場合、そもそもマーケティングやブランディングをきちんと学んだ専門家が少なく、正しい提案を行いきれない、という外部専門家の問題も存在すると思います。
ショッピングセンター(小売業)のWEBサイトの可能性
それでは一体どんな可能性があるのか、考えていきたいと思います。
上で申し上げた通り、小売業のWEBサイトにはサービスチャネルとしての可能性を含めれば本当に様々なアイデアが出てくると思いますが、ここではそこまでは考えず、ブランドチャネルとしての可能性を考えてみたいと思います。
最初の5つのショッピングセンターのうち、ラチッタデッラ川崎を例にとってみます。
ラチッタデッラ川崎は、上でご紹介した通り、イタリアのヒルタウン(丘の上の街)をモチーフにデザインされた商業施設で、川崎駅前にありながら、異国情緒あふれる場を提供しています。
同時にショッピングセンターという側面だけでなく、映画館となる「シネチッタ」、クラブハウスである「クラブチッタ」、結婚式場の「チッタウエディング」、川崎ブレイブサンダースというプロバスケットボールチームと提携した、バスケットコートの貸し出しやスクールなどの開講も行なっている複合施設になります。
まさに「カルチャー&エンターテイメント」の場になっています。
ところが、現在のWEBサイトからはそのエンターテイメント性を感じることができず、ブランドを伝える場になってはいません。そこでラチッタデッラ川崎の場合、「WEBエンターテイメント」という考えを軸としてサイトアイデアを考えてみました。
ここからは筆者のジャストアイデアです。
1. エモーショナルデザイン
まず基本的なこととして、サイト全体の雰囲気はイタリアのヒルタウンをイメージさせるものにします。オープンな感じと石畳の道、古風な建物など、ウォームな色調を感じさせるビジュアルを多用し、従来の小売店サイトとは趣を変えてイメージ性を強く押し出したTOPページとします。
少しオーバーかもしれませんが、リゾートホテルのWEBサイトのようなイメージです。
2. ダイナミックなマイクロインタラクション
全体的なデザインだけでなく、細部にも拘ります。
スクロール時の動きや、マウスホバー時のエフェクト、画面遷移時のアニメーションなど、細部にまでこだわったインタラクションを導入します。これにより、ウェブサイトがただ情報を伝えるだけでなく、魅力的で楽しい体験を提供する場となります。
3. マルチメディアコンテンツ
動画、音楽、インタラクティブなイラストなど、多種多様なメディアを組み合わせたコンテンツを提供します。これにより、ブランドストーリーをより深く、そして多角的に伝えることができます。
例えば音楽との融合という点で言えば、以下のサイトが参考になるかと思います。
このサイトでは様々なBGM楽曲を自分で選べ流せるようになっていて、好きな音楽、気分にあった音楽を流しながらコンテンツを楽しんでもらえるようにします。
4. デジタルアート展示
ラチッタデッラ川崎では、現在実際の店舗で「WALL ART GALLERY」という催しを行なっています。
https://lacittadella.co.jp/100th/assets/pdf/artlist.pdf
これは100周年を迎えた試みとして行なっているようですが、新進気鋭のアーティストの作品をビルボードにズラリと並べたものになります。これをWEBサイトでも再現し、WEBサイトの各ページがアート作品と連動したデザインになっている、もしくはデジタルアートの展示ページを設けて、アーティストたちの活動を支援しつつ、来訪者に芸術を楽しむ新たな形を提供します。
5. シークレットライブコマース
人気インフルエンサーやカリスマMDなどをゲストに招いて、サプライズ的にライブコマースを開催します。
これはライブコマースだけのスペシャルセールともなっており、人気インフルエンサーが視聴者からの質問やコメントに応えながら、おすすめ商品や実際に購入した商品を紹介し、購買を促進させます。
6. ゲーミフィケーション
ウェブサイト内に隠された「宝物」を見つけるデジタルトレジャーハントを実施します。これにより、訪問者はウェブサイト全体を探索し、新たな発見を楽しむことができます。また、宝物を一定数見つけた訪問者には実際の店舗で使用できるクーポンなどのリワードを提供します。
7. ドローンツアー
ラチッタデッラ川崎のショッピングセンター内を巡るドローン撮影のビデオをウェブサイトに掲載します。ユーザーは、ウェブサイトを訪れることで、まるで自分が施設内を空中散歩していかのような体験を得ることができます。また、単に施設内を巡るだけでなく、ショップ内にも入り込みスタッフが画面越しに声掛けしてくれるような演出も良いかもしれませんね。
8. VRナビゲーション
このアイデアはWEBサイト内ではなく、ラチッタデッラ川崎に訪れた時に、所定の場所でスマートフォンをかざすと、スマートフォン内にVRで現れたキャラクターがラチッタデッラ川崎の主なポイントをガイドしてくれる、というものです。上で提案したゲーミフィケーションのアイデアと組み合わせても良いと思います。
ちなみにこのアイデアは、以前サンシャイン水族館が行ったもの(池袋駅から水族館までペンギンが案内してくれるという可愛い取り組み)からヒントを得ました。
例えばのジャストアイデアは以上です。
あくまでもジャストアイデアの域を出ませんが、「エンターテイメント」というブランド性に依拠した視点を持つだけで、他のショッピングセンターとはかなり異なるWEBサイトになるのではないでしょうか?
最後に繰り返しになりますが、
WEBサイトは考え方1つで様々な可能性を持つメディアであり、チャネルです。生かすも殺すもビジョン次第です。
ぜひみなさんのWEBサイトでも既成概念にとらわれず、何か新しい試みにチャレンジされてみてはいかがでしょうか?
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