#19 理不尽な要求を呑んでもそこを去ることになる
今月は日大アメフト部のニュースがいろいろな意味で話題になっています。
スポーツ、チーム運営、指導者、コミュニケーション、広報・・個人的には様々な観点で気になることや考えさせられるなと思うことがあるせいか、過熱する報道に「もういいよ」と思う一方、どうしても気にしてしまうニュースです。
そして、理不尽な要求を呑まざるを得ないという状況に直面する、ということも、一度や二度、誰しもが大なり小なり経験することなんだろうとも思っています。
幸い、自分が記憶している限りでは、あまりにも理不尽な要求をされた経験は今のところ思い当たらないのですが、この先、絶対無いとは言えません。
そうしたときに、自分ならどんなふうに判断して行動するのか、なんとはなしにボヤボヤと考えてしまうことでもあります。
なぜかというと、理不尽な要求を突きつけられる、という類の話を耳にすると、必ず思い出すエピソードがあるからです。
フランチャイズ店舗を展開する企業で、営業企画の仕事をしていたときの話です。
10年以上前になりますが、事実を知ったときはかなり衝撃を受けましたし、未だに「なぜそんなことを」と心の片隅にこびりついている話です。
私が働いていた当時、その企業はイケイケのベンチャーで急成長真っ只中にいました。
当然、営業部隊も、毎月の高い目標金額を課せられ、とにかく契約を1つでも多く取る、未達成だった場合は叱責と罵詈雑言が飛び交うような厳しい環境でした。まぁ、今の時代と比較するなら、あらゆる部分で真っ黒な会社でした。
営業が売るメインはフランチャイズの加盟契約。高額かつ、得意先次第ではまとめて数店舗の契約に繋がるので、その売上に対する期待値は半端なく、会社としてもかなりプレッシャーをかけていたと思います。
そういう環境ですから、営業部の面々も、それなりにアクが強いというか、少々のことではヘコたれない人たちばかりでそういう人たちしか生き残れない部署でした。
毎月10人単位で入社する一方、辞める人もあとを絶たない、人の入れ替わりの激しい部署です。営業本部長は絶対的な存在、他部署からは北朝鮮と揶揄されるほどの雰囲気です。
この営業部隊で、不正行為が起きていました。
ある営業部員が自らの得意先を契約の相手として、その得意先には何も告げずに契約を締結していました。つまり、架空契約。
そして、肝心の契約金はなんと自腹。1千万近くする金額です。
その事実を知ったときは、真っ先に「加盟金を自腹⁉︎」とかなり驚きました。いくら事情があってもそんな金額を自らが背負ってまで契約を偽装したいものかと、かなり疑問でした。
契約を偽装した人は、ギラついた営業社員というよりはどちらかというと人当たりの良さそうな感じ。だからといってメンタルが弱い印象はなく、上司を恐れてるような空気も全くありません。
なので、なぜそんなことをしたのか、他人には見えないところで追い込まれていたのか…とにかくいろいろなモヤモヤが残りました。
というのも、この不正事案はそれが実際に発覚するまで、架空契約から2年ほど経過したあとだったため、その時点で当人は既に退職。結局、何もわからない状態でした。
発覚までそんなに時間を要するのか?と思われそうですが、管理部門がまともに整備されてないベンチャー企業、営業部が強気で強引な契約をバンバン取ってくる当時の環境下ではあり得る事案でした。
実際、加盟契約をしたものの締結までの強引さゆえにトラブルになり店舗をオープンできず、宙に浮いた契約を巡る訴訟もありましたし。
ちなみに不正をした社員が辞めた時期は、架空契約をしてから半年も経過していませんでしたので、発覚を恐れて辞めたという理由だったのかどうかも分かりません。
こういう事象を目の当たりにすると、ますます理解不能でした。いったいどんな心理状況だったのか…。
上からのプレッシャーは確かに半端なかったのは事実ですが、やはり自分で背負うには大きい金額。そして、結局、自ら辞めてしまう。
それだけ人知れず追い込まれ、正常な判断能力を失っていたということなのでしょうか。
件のアメフト選手も、「冷静な判断ができずにやるしかないと追い込まれていた」という旨の話をしていました。
不安で仕方ないという追い込まれ方をされると、平常では考えられない、想像し難い状況に陥ってしまうのだな、と今回も思いました。
とどまりたいがために起こした行動、それをしなかったらその先が不安で仕方なかったはずなのに、結果的ににはその場を去ることになってしまう。