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百貨店が売っていたのは、希望でした。

大手百貨店の2021年広告。


新型コロナウイルスで行動が制限された2020年。

それでも、自由に旅行できる日のために
662人のお客さまが、スーツケースを購入された。
マスクの下でもメイクを楽しみたい
76,175人のお客さまが、口紅を購入された。
夏祭りは中止だったけれど、浴衣は475着。
颯爽と街を歩く日を待ちながら、
お求めになったハイヒールは1,001足。
生まれてくる命を、566セットの
ベビーギフトが全力で祝福した。

足踏みばかりの日々であっても、
一人ひとりの「私」は、今日を楽しむ工夫を続けた。
お買い物の記録に教えられた、大切なこと。
百貨店が売るのも、お客さまがほしいのも、
ただのモノではないということ。

百貨店が
売っていたのは、
希望でした。


やっぱり「記録」には意味があると思いたい。

首都圏は再びの緊急事態宣言を目前に
抱えきれない不安に支配されている。

希望と名付けられたそれらが、
絶望となってしまわぬよう祈るばかり。

最低限の生活必需品を買いに行くことすら
命がけの日々があったこと、
数十年後の若者は知らないだろう。

その頃には、この広告にも解説が必要かもしれない。

未来の見知らぬ誰かが
ここに辿り着くこと、
ちょっとだけ期待したりする。

間違いなく時代の節目を生きたこと、
今日ここにいたことの証明を書き綴る。

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