01 挑戦

プロローグ:地球

この瞬間も、地球は邪悪なインベイド(侵略者)によって狙われている。人生は長いのか、それとも短いのか?ある者は生きぬき、ある者は死にゆく。ある者は殺し、ある者は救う。戦争とは何か?生命ほど大切なものがあるのか?それでも、なぜ戦争は起こるのか?人間は愚かなのか、エイリアンは賢いのか?そして、誰がその判断を下すのか?


第一章:消失

深夜0時の恐怖。東京・新宿、ネオンの光が濁流のように通りを照らす。泥酔した男がビルの陰で吐き、その隣ではカップルが言い争っている。誰もがそれぞれの夜を生きていた——少なくとも、その瞬間までは。

「すみません、免許証を見せてください。」

警察官が一人の青年を呼び止める。青年の頬が引きつる。まずい。酒を飲んでいる。

「ちょっと待ってください……」

震える手で財布を取り出そうとした、そのとき————ふっ。警官が、目の前から消えた。

「……え?」

青年は周囲を見回す。誰もいない。だが、確かにそこにいたはずの警官が——いない。背中を冷たい汗が流れる。次の瞬間、彼自身の体が透明になり、消えていった。残されたのは、アスファルトに落ちた財布だけ。夜の喧騒は変わらない。ただ、一人、また一人と、跡形もなく消えていく。そして、それは東京だけではなかった。日本全国、世界各地で、人々が消失していた。


第二章:依頼

「また、ですか?」

T大学工学部教授 キリヤは、机の上に置かれた報告書を見つめながら、眉をひそめた。

「はい。警察では手に負えず、政府も困っています。人々が突然消える。跡形もなく」

警察の担当者はため息をついた。

「これはもう、科学的な説明では解決できません……」

「なるほど。では、私の研究グループで調査しましょう」

キリヤは静かに頷いた。

彼が率いるのは 「ザ・ユース(The Youth)」。一見するとただの大学の調査サークル。しかしその実態は、国家機関も対応できない超常現象に挑む私設地球防衛軍だった。

「それでは、調査を開始しよう」

見えざる敵との戦いが幕を開けた。


第三章:邂逅

翌日、東京都内。黄色のVWビートルが、消失事件が多発するエリアをゆっくりと巡回していた。ハンドルを握るのは、スーツ姿の男。フルダ——弁護士でありながら、総合格闘家という異色の経歴を持つ。助手席には、鋭い眼光の警察官。ソウマ——現職のスナイパーでもある。

「まったく、気味が悪いぜ。突然人が消えるなんてな」

「警察内部でも混乱してる。だが……これは、普通の犯罪とは違う」

「だから、ザ・ユースの出番ってわけか」

そのとき——交差点の向こうに、一人の青年が立ちはだかった。赤いジャンパーを着た、痩せ型の青年。

「……ここから先へは行かないでください!」

フルダが車を止め、ソウマが素早く腰のホルスターに手をかける。

「なんだと?」

「T大学の先輩方ですね? 僕はアケボシ。あなたたちを助けるために来ました」

そのとき——サイレンを鳴らしたパトカーが、彼らの横を通り過ぎた。アケボシの表情が強張る。

「やめろ! 行っちゃダメだ!!」

しかしパトカーはそのまま進んでいく。次の瞬間——青白い光がパトカーを包み込み、車ごと消えた。

「……!」

フルダとソウマは、言葉を失った。アケボシは静かに言った。

「……これが、見えざるインベイドの力です。」


第四章:ザ・ユース

T大学 工学部教授・キリヤ。彼が率いるのは、怪奇現象を科学的に分析し、政府や警察の手に負えない事件に挑む私設地球防衛軍「ザ・ユース」。ある晩、彼の研究室に5人のメンバーが集まった。 

フルダ(30歳・弁護士/総合格闘家)
アマベ(30歳・科学技術者/発明家)
ソウマ(30歳・警察官/スナイパー)
ユリ(30歳・T大学付属病院外科医)
アケボシ(24歳・T大学院生)

アケボシは初めてアジトに足を踏み入れた。そこは、大学の旧実験棟を改造した地下施設だった。モニターが並ぶ作戦室、訓練場、簡易ラボ——そしてラウンジ。

「へぇ、新人が入るって聞いてたけど……ずいぶん若いのね」

そう言ってアケボシに近づいたのは、ユリだった。白衣を纏い、鋭い目をした女性。

「あなたがアケボシ?」
「……そうですが」

彼は少し警戒しながら答えた。

「私はユリ。ここでは医療担当よ。あなたがこれから戦う敵は、人間じゃない。誰かが傷つく前に終わらせるのが理想。でも、それができないなら——私はあなたたちを死なせないためにここにいるの」

「戦う覚悟はできてるの?」

アケボシは、彼女の真剣な眼差しに答えられなかった。彼はまだ、自分がこの戦いにどこまで関われるのか、自信がなかったのだ。ユリは彼の沈黙を見て、ふっと微笑んだ。

「……まあ、これから分かるわ。自分がどういう人間なのかって。」

「おい、ユリ。新人にあんまりプレッシャーかけるなよ」

茶化すような口調で割り込んできたのは、フルダだった。

「別にプレッシャーなんてかけてないわ。ただ、戦うってことがどういうことなのか、彼には知ってもらわないとね」

「……それはそうだがな」

ユリは、再びアケボシの方を向き、最後にこう言った。

「あなたがどういう人間なのかは、これからの行動で決まるわ。もし、本当にこの戦いに意味があると思うなら——生き抜いて、それを証明してよ」

アケボシは彼女の目をじっと見つめ、ゆっくりと頷いた。——こうして、アケボシは戦いの場に足を踏み入れた。


第五章:宣戦

翌日、世界中のモニターに奇妙な映像が映し出された。

「これは、異星人クルの代表より通達する。地球人よ、我々はお前たちを侵略することを決めた」

異星人クルは、こう続けた。

「我々の惑星では、未知の病が蔓延し、寿命が急速に短くなっている」

「すでに30年しか生きられぬ種族となった。だが、最近ある事実を発見した。人間の身体を取り込むことで、我々の寿命を延ばせるのだ。従って、人類よ——降伏せよ。さもなくば、戦争となる

日本政府は、これを拒否した。数時間後——日本の離島が、一瞬にして消し飛んだ。

「お前たちは我々を見つけることはできない。なぜなら——我々の姿は見えないからな


第六章:追跡

ザ・ユースの本拠地で、科学技術担当のアマベがコンソールの前で指を走らせていた。

「見つけたぞ。クルの残留エネルギー反応だ。」

「残留エネルギー?」

アケボシが眉をひそめる。

「クルは透明になれるが、完全に消えるわけじゃない。彼らの移動には特殊な波長のエネルギーが発生する。それが都市の電磁波に微弱なノイズとして残るんだ」

「つまり、それを追跡すれば——」

「やつらの巣にたどり着ける」

アマベはデータをモニターに映し出した。

「ここだ」

画面には「COOL DELIVERY SERVICE」と書かれたトラックが映っていた。

「これは……クルの拠点か?」

「可能性が高い。このトラックは都内を巡回していて、消失事件が発生する直前に現れている」

「つまり……こいつを追えば、クルの母船にたどり着ける」

「そういうことだ」


第七章:戦闘

アケボシは 赤い眼鏡 をかけた。その瞬間——異次元の力が彼を包む。彼は光の速さでトラックを追い、巨大な倉庫へと突入する。そこは——エイリアンの母船だった。8体のクルが、蜘蛛のように浮遊しながら彼を囲む。

キィィィィィ……!!

異様な音を響かせながら、一斉にアケボシへと飛びかかった。——来る!アケボシは赤い光の剣を発生させ、超速の動きで敵を迎え撃つ。

シュッ!!一閃。

目に見えぬほどの速度で振り下ろした刃が、一体のクルを両断する。だが、残る七体は彼の背後を取る。

「遅い!」

アケボシは視界の端で敵の動きを捉え、地面を蹴る。光速のような移動で天井近くまで跳び上がり、逆さの状態から二体を切り裂く。残る五体。彼らは一斉に襲いかかるが——

「そこだ!」

アケボシは見えない敵の動きを完全に捉え、連撃を繰り出す。五体のクルが、断末魔を上げながら崩れ落ちた。


エピローグ

作戦の後、ザ・ユースの秘密基地——東京郊外の地下施設にて。

アケボシは静かにベンチに座り、ぼんやりと夜空を見上げていた。遠くで虫の鳴き声が聞こえる。

「……悩んでるの?」

振り向くと、ユリがそこにいた。彼女は白衣の袖をまくり、冷たい水の入ったペットボトルを彼に差し出した。

「……ありがとう」

アケボシはそれを受け取り、口をつける。しかし、喉を潤しても、胸の内に残る違和感は消えなかった。

「今日の戦い……俺たちは勝った。でも、それが正しかったのか、わからない。」

「クルのこと?」

ユリは隣に腰を下ろし、静かに夜空を見つめる。

「……彼らも、生きるために戦っていた。私たちが、家族や仲間を守るために戦っているように。」
「そうですね……」

アケボシは、そっと眼鏡を外した。視界が揺らぐ。眼鏡の奥から見た世界と、今見えている世界——どちらが本当なのか、彼にはもうわからなかった。

「ユリさんは……怖くないのですか? 俺たちは人を救うために戦っている。でも、結局は同じように相手を傷つけてる。」

ユリは静かに目を閉じ、少しの間考え込んだ。そして、ゆっくりと口を開いた。

「……私はね、昔、家族を震災で失ったの。病院で、たくさんの命を救ってきたわ。でも、それと同じくらい、救えなかった命もあるのよ。」

アケボシは黙って聞いていた。

「結局、生きるってそういうことなんだと思う。誰かを救うために、誰かを犠牲にしなくちゃならない時もある。でも、それでも私は……生きてる限り、誰かを救いたい。」

「だから、あなたも迷っていい。でも、立ち止まらないで。あなたには、あなたにしかできないことがある」

ユリは優しく微笑んだ。アケボシは深く息を吐き、再び夜空を見上げる。

「俺は、俺にできることをするしかないんだ」

「そう。でも、一人じゃない。私たち仲間がいるから。」

彼女の言葉が、不思議とアケボシの心を少しだけ軽くした。

To be continued...

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