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親子関係に風を吹き込むWABの活動 ~We are Buddies特別対談イベント「新しい家族の在り方、社会の在り方を模索する」レポート 後編~

イベント報告前編では、児童精神科医・千村浩先生とWAB(We are Buddies)の出会いと、実際のバディたち3組の様子をレポートしました。後編では、さらに家族とは何かを考えながら、イベント参加者とも対話をします。まずは、WABの活動は千村先生からはどんな風に見えているのかをあらためて聞いてみました。

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千村先生と考える、「WABが社会を変える!?」

あらためて、千村先生はいろいろな親子を見てこられたなかで、WABはどのように見えますか?

千村:
子どもさんの診療期間が長くなってきて、それでもうまくいかないというときに、診察室でお母さんがしかめっ面していることがあるんです。そんなお母さんが、子どもについて話すとき、子どもの表情も曇ります。親子関係の中で、望ましくない変化です。そういうときに、子どものよい変化のために、どうサポートするかということが、診療の中で大切だと思っているんですね。

親子関係の中で、それぞれの考え方が少しずつ変わるためには、新しい風を入れるといいと思うんです。信頼する人たちの中で、子どもがありのままでいられる時間は、子どもの成長には大切なこと。WABの活動を見ていて、親子の間に「新しい風」を入れるという点が、私と同じことを考えているのかなと感じて、一緒に協力し合うことができたらと思いました。

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加藤:
「風穴」とか「風」という言葉がWABではよく出てくるんです。子どもの居場所を考えるときに、どっしり動かずにいる「土」的な概念のサービスはよくありますが、WABのかかわりはちょっと違うアプローチで、「風」的なものだろうと思います。遊び方も、決まったプログラムではなく、大人バディと子どもバディが2人で会って、自分たちで相談しながら過ごし方を決めて、2人で旅に出るというな感覚で遊んでいます。主体的に、能動的に、でも同時に相手の気持ちを想像ながら遊ぶことで、今の状況が良くなることにつながっているのでしょうね。

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千村:
子どものそれぞれの考え方、感じ方に、周りは共鳴することが大切なんだろうと思っています。風のように外から吹いてきて、一緒に景色を眺めて、どこかへ連れていってくれる人は大切なのかもしれないなと感じます。

加藤:
子どもバディが一方的に享受していることではなくて、大人バディも子どもバディと同じくらいいっぱい学びと刺激をもらっています。どこかから飛んできて、新しい世界を見せてくれたり、体験したり。お互いにとって、そういうことが起こっているのが面白いですね。

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WABがもっと広まったときに社会はどう変わる?

WABは発足から1年と少したったところです。この活動がもっと社会に広まったときに、どんな社会になりそうでしょうか?

千村:
自分と違う人と出会って、違う人と時間を共有する大切さが、社会に広がるんだろうと思います。そうすることで、自分を大切にして、自分と同じように人を大切にする社会になっていくのだと思います。
診療の中でも感じることですが、子どもたちと話すと、子どもから教えられることがたくさんあります。子どもと大人が、親子や先生・生徒という関係以外のところで接していると、大人も子どもから教えてもらって成長できます。大人も子どもも成長する社会が実現できるんじゃないでしょうか。

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われわれ大人は、「子どもは子ども」という考えに陥りがち。子どもはたとえ幼稚園児でも、何が好きで何がしたくて、どんなことがいいこと・悪いことかと、考えたり感じたりしてわかっています。そこを理解することで、子どもが一人の人間として尊重される社会になっていきます。学校で学んで成長する部分も大切だけど、その一方で、子どもの話に大人が耳を傾けて、子どもを人間として尊重する社会になるといいなと思います。

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イベント参加者との対話パート

≪会場からのコメント&質問1:きょうだい児へのサポートについて≫
将来的には、病気や障害のある子ども達のきょうだい(きょうだい児)へのサポートにも力を入れていただきたいです。※障害のある子の兄弟姉妹のことを「きょうだい児」と呼びます。きょうだい児には、「障害のある子に手がかかるため親に甘えられない」「きょうだいのことでいじめられる」など、独特の悩みがあります。

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加藤:
WABは専門知識がないメンバーがやっていますが、きょうだい児の方々は対象だと思っています。オランダでもそうです。きょうだい児の方々とつながっていきたいと思っています。

千村:
障害をもつお子さんは手がかかるので、きょうだい児の場合は、自分は大切にしてもらえていないかもしれないと感じている方も多いと思います。子育ては社会でみんなで、という考え方が大切ですね。そういう意味でも、WABのような活動が社会に広がることは必要とされているでしょう。

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≪会場からのコメント&質問2:ADHDについて≫
ADHDは、先天性/後天性どちらの要素が強いものとお考えでしょうか?
また、先天性の要素が強い場合は後の環境によりADHDでなくなることは考えられますでしょうか?(ADHDの明確な基準等難しいところもあるかと思いますが、現在の診断基準でお話をいただければと思います。)

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千村:
学校生活やおうちでの生活の中で、ADHDかもしれないと思われる場合には、生まれつきのものなのか、環境によるものなのかは、それぞれの子どもさんに詳しくお聞きしないとよくわからないものです。ある時点で落ち着きがなかったり、不注意が続いたりというお子さんがいたとして、生まれつきの傾向が強い場合もあるし、先生との関係や家庭環境の変化とか、いろいろな事とのかかわりが、全くないとは言えないものです。いずれにしても、対応のしかたで環境を調整し直すことはとても大切です。それでもうまくいかない場合は治療をしていくこともあります。

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≪会場からのコメント&質問3:親子関係の「風穴」≫
風穴という言葉もありましたが、親子関係においてはどのような「風穴」がいいのでしょうか。

千村:
「風穴」と言うのは、親でも子どもでもなく、その関係のどこかに穴があくことなんですよね。親子の関係に風が吹いてくると、いい方向に流れていくということだと思います。お子さんの側から大人バディの方と交流することを望んでいて、大人バディを見つけられて交流が始まる、という流れの中で、基本は、保護者の方もお子さんも、新しい風を求めているということが必要なんです。求めていないところに風を通す穴を開けようとしても、それは開きません。風を求める準備ができるということが必要だと思っています。

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加藤:
千村先生に共感します。イメージでいうと、家族という家のドアのカギがガチガチで開きません!という状態だとしたら、新しい風が入るのは難しいですよね。ちょっとドアが開いているというようなときは、風が入りやすい。ヒューっと風が入ることで何が変わるかはわからないけど、それまでよりも開く、開放的になるということが大事なのだろうと思います。実際は、ドアが閉まっている状況の親子さんも、世の中にはたくさんいると思います。千村先生含め、様々なプロフェッションを持った方が、少しでもドアを空けるために働きかけをされているからこそ、少しだけドアが開く、そんなことが起きているように思えます。自分たちだけでは何もできませんが、みなさんと手を取り合いながら、家庭、そして社会の風通しが今よりも少しよくなっていくことを願っています。

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前編では、WABに参加している子どもたちの変化について、語っています。ぜひチェックしてみてください!
⇒ 前編へ!

執筆:関川香織

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