デジタルの守護者
東京のビル街に佇む「デジタルの守護者株式会社」。この会社は、最新のIT技術を駆使して、クライアントのサービスを支えることを使命としていた。リーダーであり、創設者の東郷大輝は、社員たちにいつもこう語っていた。
「怖がるのは悪いことじゃねえ。先が見えねえのは怖えもんだ。普通なんだよ。でもな、大事なのは恐怖に立ち向かう勇気を持つことだ」
東郷は元々、大手IT企業で管理職を務めていたが、独立してこの会社を立ち上げた。彼は、常に高い視点から物事を見て、全体を把握する力を持っていた。
ある日、大手クライアントから緊急の依頼が舞い込んできた。システムの大規模な障害対応が必要であり、非常にリスクが高いプロジェクトだった。社員たちは不安に包まれていたが、東郷は会議室に集まった全員の前で、力強く語った。
「管理職になるやつは、いつも自分を奮い立たせて、高いところから物事を見て行動する。そして、周りのやつらを巻き込んで、自分の意見をちゃんと言う。大事なのは、怖くても逃げねえってことなんだよ」
その言葉に鼓舞された社員たちは、一丸となってプロジェクトに取り組む決意を新たにした。そして、彼らは困難を乗り越え、見事にシステム障害を解決した。
次のプロジェクトもまた、大規模で重要なものだった。しかし、予算の大幅な削減と資金繰りの問題が浮上し、東郷は苦渋の決断を迫られた。会社全体の持続可能性を保つため、東郷はこのプロジェクトから撤退することを決断した。
「皆、理解してほしい。このプロジェクトを続けることは、今の会社の状況では非常にリスクが高い。これ以上続ければ、会社自体が危うくなってしまう」
その後、東郷は協力していた他社の担当者、武内 悟に事情を説明するために電話をかけた。
「東郷さん、ここまでやってきて、今更引き返すなんてありえないだろう!」
「わかってる。でも、これは私たちの生き残りをかけた決断なんだ。俺だって悔しい。けど、会社全体を考えなければならないんだ」
理解してもらえず、東郷は悶々とした日々を過ごすことになった。夜、彼は一人で資料を見ながら考え込んでいた。
「俺が一人で悩んでいてもしょうがない。皆の力を借りて、この状況を打破しよう」そこで、彼は緊急会議を招集した。
「皆、集まってくれてありがとう。現状は非常に厳しいが、このプロジェクトをどうにか続ける方法を見つけたい。何か良いアイデアがあれば、どんなものでも構わない。皆の知恵を貸してくれ」
社員たちはしばらく沈黙していたが、やがて一人が口を開いた。「もし、新しいシステムを開発してコストを削減しつつ、クライアントに提案するというのはどうでしょうか?今までのやり方を見直し、効率化することで乗り越えることができるかもしれません」
別の社員も続けた。「そうですね。それに、我々独自のソリューションを開発することで、他社との差別化を図りつつ、新たなビジネスチャンスを生み出すことも可能です」
東郷はそれを聞いて、希望が湧いた。「ありがとう、皆。これで少し光が見えてきた。早速行動に移そう!」
しかし、最終的には資金繰りの問題を解決することができず、プロジェクトから撤退することが決定した。東郷は再度、武内 悟にそのことを説明したが、理解してもらえなかった。
「こんなことが起きるなんて、信じられないよ、東郷さん!」
東郷は、苦しさと無力感に押しつぶされそうになりながらも、「申し訳ない」とだけ呟いた。その夜、彼は涙をこらえきれず、泣きながら家に帰った。道中、彼の心には悔しさと、社員たちや協力者に対する申し訳なさが渦巻いていた。