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【IT小説】ベンチャーエンジニアの光と闇 〜夢と現実の狭間で〜

登場人物

佐藤 翔太(さとう しょうた)

  • 職歴: 新卒でベンチャー企業「ネクストコード」に入社。

  • 性格: 熱血タイプで負けず嫌い。エンジニアとしての成長を常に求めるが、時々理想と現実のギャップに悩む。

  • 得意分野: AWS、Python、Kubernetes

  • 趣味: ハッカソン参加、ゲーム開発、筋トレ(実はジムに行く時間がない)。

鬼塚 課長(おにづか かちょう)

  • 職歴: 大手SIer出身、ベンチャーの泥臭さを学ぶため「ネクストコード」に転職。

  • 性格: 厳しいが部下思い。口調はキツイが面倒見がよい。

  • 得意分野: セキュリティ、ネットワーク設計、オンプレミス環境の運用

  • 口癖: 「お前、それ本当にテストしたか?」

田中 亮(たなか りょう)

  • 職歴: フリーランスからスタートアップに転職。

  • 性格: どんな状況でも動じない。独特なユーモアを持つ。

  • 得意分野: Docker、CI/CD、Go言語

  • 趣味: カフェ巡り(仕事はほぼリモート)。

相沢 美咲(あいざわ みさき)

  • 職歴: 大手IT企業からの転職組。PM経験あり。

  • 性格: 冷静沈着。論理的に物事を進めるが、意外と熱い一面も。

  • 得意分野: アジャイル開発、スクラムマスター、プロジェクト管理

  • 口癖: 「この仕様、本当に必要?」


第1章:夢と現実のはざまで

入社初日、衝撃の洗礼

佐藤翔太のベンチャー企業での生活は、想像していたものとは大きく異なっていた。

「翔太くん、今日からよろしく!」

人事の担当者に案内され、翔太は「ネクストコード」のオフィスに足を踏み入れた。小さなオフィスにはモニターがズラリと並び、コードを書き続けるエンジニアたちの姿が見える。期待に胸を膨らませていたが、その瞬間、オフィスに響き渡る怒声に驚く。

「おい!このLambda関数、メモリリークしてんじゃねえか!」

Lambda関数とは、AWSのサーバーレス実行環境のことだ。特定のイベントが発生した際にコードを自動的に実行できるが、適切に管理しないとメモリを食い潰してしまう。

「初日から修羅場……?」

翔太は内心、戦慄した。

初めてのタスク:開発環境の構築

「お前、今日からこのプロジェクトに入れ。開発環境は自分で作れ。」

鬼塚課長からの洗礼を受けた翔太。手渡されたのはREADMEのリンクのみ。先輩の田中がニヤリと笑う。

「まあ、README読んでも動かないのが普通だから、頑張って。」

開発環境のセットアップは、エンジニアにとって最初の関門だ。

環境構築に失敗するたびにエラー文と向き合う苦行が始まる。

ERROR: Could not build wheels for cryptography, which is required to install pyOpenSSL

「え、なにこれ……」

エラーをGoogle検索しながら四苦八苦する翔太。ようやく動いたと思ったら、次はDockerコンテナの起動で躓く。

ERROR: Unable to find a match: docker-ce

「え、Dockerすら入ってないの?」

結局、環境構築だけで丸一日が終わった。

初めてのコードレビュー、撃沈

翔太はようやく開発環境を整え、初めてのタスクに挑んだ。

「まずはAPIエンドポイントの修正だな。」

API(Application Programming Interface)とは、異なるソフトウェアが連携するための仕組みだ。

翔太はFastAPIを使ってAPIを修正し、意気揚々と**Pull Request(PR)**を作成。が、鬼塚課長からのレビューが即座に返ってきた。

- ネーミングが直感的でない
- エラーハンドリングが不十分
- 型アノテーションをつけろ

「厳しすぎる……!」

エラーハンドリングとは、システムが異常な動作をしたときに適切な処理を行うこと。

翔太は先輩の田中に相談した。

「まあ、最初は誰でもフルボッコにされるもんだよ。」

「そういうものなんですか?」

「そういうもの。ていうか、俺も昨日同じくらい怒られたし。」

「え、田中さんでもですか?」

「おう。だから、次のレビューまでに修正しとけ。大丈夫、成長してる証拠だから。」

深夜のオフィス、エンジニアの戦い

気づけば夜の23時。

オフィスにはまだ数名のエンジニアが残っていた。鬼塚課長の厳しいレビューを乗り越えようと、翔太はキーボードを叩く。

「これが、エンジニアの世界か……!」

疲労感と達成感が混じり合う中、翔太はエンジニアとしての第一歩を踏み出していた。


第2章:理想と現実のギャップ

最初のタスク、予想外の困難

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