11年使ったバスタオルとのお別れ会
この前無印良品に行ったときに、偶然バスタオルが目に入った。
そういえば、今使っているバスタオルがだいぶ古くなっていたなと思い、何枚か購入した。
いや、「そういえば古くなってたな」というレベルではない。
家にあるバスタオル3枚は、大学進学のため実家を出るのをきっかけに買ったもの。
気付けば11年も使い続けていた。
いや、11年って…。そんなに経っていたのかと自分でもびっくりする。
買った当時は、それぞれ黄緑・黄色・ピンクのチェックだったはず。
いつの間にか全部灰色になって、どれが黄緑色だったのか全く見分けがつかない。
「ふわふわってなんだっけ?」と思うほど、ゴワゴワでバリバリになっている。
でも、水吸うし。破れているわけではないし。
色は汚いけど臭くはないし。
そんなこんなで11年間も使い続けてしまった。
新しく買ったバスタオルはふわふわで、より水を吸い、これがタオルの本来の姿か!!と感動した。
新入りの優秀なタオルを迎えてからも、古株の灰色のバスタオルたちは自宅を追い出されることはなかった。
使われることはないけれど、なんだかクビにはできない。なんとなくタンスの片隅に居続けた。
でも、いよいよ私も彼らを解雇しないといけない。
新入りの使い心地に魅了されて、もう彼らはタンスのスペースを取るだけの存在になってしまっている。
夫からも「いいかげんに捨てなよ」と言われている。
11年も私のそばにいたバスタオルたち。
18歳のときに私の元にやってきて、1年目は新入生用の寮で過ごした。
彼らはホームシックに苦しんだ私の涙を拭きとってくれた。
2年生になって引っ越したアパートは湿気がひどくて、部屋干し臭を纏わせてしまって本当に申し訳ないと思っている。
彼らが初めて私以外の身体に触れたのも2年目のときだった。
臨床実習のウィークリーマンションにも連れて行った。実習で疲れ切った身体を包み込んでくれたね。
社会人になり、慣れない生活もともに過ごした。
大学の頃に付き合った彼との別れを一緒に経験し、彼らは他の男の身体も拭いてくれた。
そして、彼らとの生活も10年目となった昨年に私は結婚し、新婚生活も彼らが見守ってくれている。
楽しいときも悲しいときも、毎日彼らのうちの誰かが私の身体に寄り添ってくれていた。
そんな彼らと、ついに別れるときがやってきた。
できるだけ心を無にして、ゴミ袋に3人をぎゅうぎゅうに詰めた。
ゴミ捨ては早起きの夫の担当で、私は燃えるごみの日が何曜日なのか知らない。
気が付いたら、彼らは私の家からいなくなっていた。
知らないうちにお別れができてよかったのだと思う。
もしも自分でゴミ出しをしたら、悲しいだとか切ないだとか、そんな感情に襲われていたかもしれない。
新しいふわふわのタオルとの生活。
数年のうちに、新しい家族の身体を彼らが包み込んでくれる日が来てほしい。
今は新入りの彼らも、いつかゴワゴワになり、色がくすんでいく。
お別れの日まで、新しい彼らと一緒に思い出をつくっていこう。