TTバー導入記。(4)
先日サドルの高さやハンドルの高さについて言及したので、今回はそれについて書いていこうと思う。
トッププロのフォームをみると、ハンドルのクランプ部の高さと、膝がその上下動の中で最も上にある時の位置を比べると、ハンドルのほうが低いことが少なくない。
ハンドルを高い位置におく設定は、一般的には快適とされるが、背筋や腹筋ができあがってくると少しずつ窮屈さを覚えるようになり、その段階まできたところで少しハンドルの高さを下げると見違えるように快適だと感じるということもあるので覚えておいてほしい。窮屈さを覚え、ハンドルを低く、遠くし始めた時、その人は初心者から脱したと言えるのだということも書き添えておこうか。
ハンドルに関しては、少なくとも膝が上下動の中で最も上にある時の位置と同じ高さ、もしくはそれより低くできると理想的、というように具体的な記述ができるのだが、サドルに関してはかなり大雑把な記述しかできないのがもどかしいところだ。何故なのかは理解が追い付いていないのだが、サドルの位置は個人個人にあわせてかなり幅広く設定できるのに比べて、クランクの長さはかなり制限されていることに由来する? のか?
同じように超絶アバウトな指標として、足をペダルに乗せる時の最適位置の表現としての、クランクが最も踏める角度(ギヤが付いているほうで言えば2時から3時の間、その反対側であれば10時から9時の間くらい?)に来ている時に、母指球とペダルの軸が鉛直線上にあるのが理想というのがあるが、アンクリングの角度にまでは言及されないのでこれは中々アバウトな指標だと言わざるを得ない。
とにかく、膝の裏、これを『ひかがみ』ということがあるが、このひかがみにどれくらいの余裕を持たせれば快適かつ力強く踏めるのか、また、今は実際にどれくらい余裕があるか、余裕がありすぎはしないか、ということを、サドルの高さが決まるまで、本当に本当の納得地点に決まるまでは始終考え続けることになる。前後位置に関しては、高さに比べれば、ハンドルを掴んでいる腕にどれくらいの余裕があるかといったことで決めても問題は起こりづらいのでよほど簡単なものだ、というのが私としての暫定的な論である。
サドルの位置を決めるのにとても役立つのはもう一台の異なる設定の自転車である。高い位置で気に入って乗っている場合でも、低い設定の自転車に乗った時に寧ろこの方が快適だし強く踏めるような気がする、と気付くようなことはザラにあるからだ。2台の自転車を用意することができれば、サドル高に関してやや低め、やや高めの間を瞬時に行き来できる環境が構築できるわけだが、ただそれだけだけはない。サドルの前後位置、クランク長、フレームの素材、電動変速かメカニカル変速か、リムブレーキかディスクブレーキか、といったところまで違う設定としておくと、フィッティングに関してだけ言えば相対的な位置関係が変わって迷子になるリスクは生じるものの、果てはフィッティングの探訪に限った話でない、カーボンの反応のよさもいいけど金属の最後まで粘ってくれる感じも中々、電動変速の快適性もいいけどバッテリーなしでも動くメカニカル変速の気軽さも捨て難い、ディスクブレーキの完璧性もいいけどメンテナンスまで考えるとリムブレーキのほうが気楽なのでは、みたいな新しい発見への扉となることが少なくない。