ウェルビーイングと私 とうごん
ウェルビーイングとは、よくユーダイモニアであるとも言われている。ユーダイモニアとは、全体的、持続的な幸福のこと。ただ、幸せってそれだけなんだろうか?少なくとも僕自身はそれだけを求める人生は無理だし、それだけを追求したくもない。
・局所的、一時的な幸福。快楽や愉しみに興じること。
・全体的、持続的な幸福。意義深い人生、道を追求し続けること。
僕にとってはどちらもとても大切。
マーティン・セリグマンは後者を中心としながらも前者も包含するフローリッシュという言葉を提案した。でも日本では全く流行っていないし、拡がりそうにもない。だから僕は両方を包含する全体的幸福感をウェルビーイングと扱うことにした。
そして、2020年、僕は全体的幸福感を余すことなくうまく表現している理論を探す旅に出た。その結果、2022年現在で僕が「これ」と考えている理論は、タル・ベン・シャハー博士の提唱するSPIREだ。
・Spritual Wellbeing:精神的幸福
・Physical Wellbeing:身体的幸福
・Intellectual Wellbeing:知的幸福
・Relational Wellbeing:人間関係的幸福
・Emotional Wellbeing:感情的幸福
そして、この5つの幸福を個々人が希求するレベルまで高めることで得られるWholebeing(全人格)の幸せ。
自分の強みと人生の意義が交わる天職に人生を捧げること、精神的幸福。栄養・睡眠・運動・触れ合い、人間の本質的な欲求を満たすこと、身体的幸福。好奇心と内省をベースに人生を涵養し、個性に合った学びを生涯続けていくこと、知的幸福。自分を愛し、他人を愛し、衝突を恐れず、大切な人たちとの関係を育んでいくこと、人間関係的幸福。心のメカニズムを探索し、受け入れ、味わい、楽しむこと、感情的幸福。
とても包括性が高く、とてもバランスがいい。
さらにこのSPIRE理論、タルが秀逸なのは、学際性だ。
哲学・神学・スポーツ・芸術・心理学・科学・文学・経済学・映画・音楽・・・
五感、いや六感のすべてを駆使し、今に没入しながら、人生全体の意義を同時に俯瞰する。柔軟な時間軸、柔軟な焦点。そして統合性。タルの志向する幸福の学びは僕にとってまるで大海のようだ。僕は今泳ぎ続けている。意義深い遠泳を楽しむとともに、時折終わりの見えない学びに疲れもする。ただ、ありがたいのは、彼がコンパスをくれたことだ。自分の目的地を完全に指し示しているとは考えていないけれども、概ね合っていると確信できる。生涯を賭す価値のある学びを手に入れたと感じている今の自分。なので、ただ、ただ、続けるだけである。
そして、学びを始めて1年半。タルが指南する幸福の知見の中で、僕が最も強烈なインパクトを覚えたのがアリストテレスである。2300年以上前のギリシャに生きた彼が「ニコマコス倫理学」にて講義する幸福論。アリストテレスの考える幸福な人生は「善い」人生、ユーダイモニア。ウェルビーイングとはユーダイモニアであると捉える向きも多いが、彼の説くユーダイモニアは自分の幸福感に強い衝撃を与えるものだった。彼の「善い」は、「好い」が適度であることなのだ。
快楽の好いは、「無感覚」と「放埓」の間にある「節制」が適度。これが善い。
財産の好いは、「けち」と「浪費」の間にある「気前良さ」が適度。これが善い。
笑いの好いは、「野暮ったさ」と「悪ふざけ」の間にある「機知」が適度、これが好い。
人生45年にして、初めて善いの何たるかを知る。
僕にとってのウェルビーイングとは、「適度な好い」である。
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