その男、指名手配犯につき
皆さん、こんにちは。免許証の顔写真はだいたい犯罪者風になる木賃ふくよし(芸名)です。
先に謝ります。すみません。
まさかホントに昨日の記事を買う人が、
4人もいるなんて思ってなかったので、
(´°Д°)」 ちょっと話を盛りました!
すみません!
※ 売れたらサイコパス野郎の狂気を書くって話ですが、強烈なサイコ野郎って程でもないと思われる。
いつもコレぐらい売れると良いなあ、って喜んでる場合ではなく、
コレで話が面白くなかったらどうしよう?
という重圧が掛かってきたのである。てな訳で先に謝っておく事にする。
(´・Д・)」 期待ハズレだったら、ごめんね。
では、とりあえず記憶を辿りながら話して行こうと思う。
時は25年ほど昔まで遡る。
昔、横溝正史の「事件は15年前から始まっていたんです」って金田一耕助のセリフに、「壮大な話だな、、、」とか思ってたけど、年を経てみると「15年なんて、あっという間だよね」とか「30年ずっと怨みに思ってる」とか現実の方がよっぽど壮大な気がしてきている。
おっと、のっけから話が横に逸れた。要するに25年ほど昔、ワタクシはまだ、自分のバーを始めたばかりだった。当時はまだ23~4歳の若僧で、右も左もわからぬ状態だったが、周囲に恵まれたのと、ワインブームが盛り上がってきた頃だったので、売上は決して悪くはなかったと思う。
そんなある日、そのお客さんは現れた。
名を仮に「Eさん」としよう。
正直なところ、最初にウチの店を訪れた理由はイマイチ覚えていない。
お客さんの誰かと一緒に来たか、お客さんの紹介で来たか、そのどちらかだったとは思う。
白髪混じりの髪をきっちりセットしていて、茶色いウールジャケットに同じく茶色いセーターを着ていた。冬場は同系色のマフラー追加。
肌は浅黒く、艶も張りもあるがスポーツマンタイプではない。地黒なのだろう。
表情が豊かなのか、シワ自体は少ないが、口許と額だけに深いシワが刻み込まれていた。
年齢は40代半ばから50代ギリギリまで、と言ったところか。いや、ファッションが若いだけで、もう少し上の可能性もある。
若くないのはわかるが、年齢不詳。見るからに陰キャだ。少なくとも陽キャではない。いや、当時そんな言葉はなかった。根暗というべきか。
特徴的なのは、眼光だ。
眼窩が窪んで、瞼が厚ぼったいのもあるだろう。カマキリを彷彿させる目付き。今ひとつ、何処を見ているのか察しにくい。
今までにない目付きだ。ギラギラしたヤンキーのような眼ではない。また、卑屈さを感じるいじめられっ子のような眼でもない。高圧的とも違う。他者を侮蔑する雰囲気もない。精神に不安定なところがあるタイプの眼でもなかった。
だが、どうにも気を許せない。気を緩められない妙な気配があったのだ。
ところが、いざ話してみるとこの男、存外によく喋る。
曰く、フリーのコピーライターだと言う。コピーライターという職業に会ったのも初めてだったし、知っているコピーライターと言えば糸井重里ぐらいのものだ。
昔から執筆業に憧れていたワタクシは、正直、この男に取り入って、何か文筆の仕事を回してもらえないだろうか、という下心もあったのは認める。
この男、東京に住んでいるらしいが、今現在は京都の有名和菓子店でコピーライターの仕事をしていると言う。仕事を数ヶ月で終えたら、また東京に戻るのだそうだ。
コピーライターという割に、特に話し上手という印象はない。
時折、突如として妙な「俳句のようなモノ」を詠みあげたり、他人の発した言葉を繰り返したり、「そのフレーズはとてもいい」と褒めたりする。
そんな、少しだけ奇妙な行動を取る事もあったが、コピーライターとはそういうものなのかとも思ったし、酔客の中にはもっと酷い例もあったから、それが特段おかしいとは思わなかった。
そして妙だと感じたのは、彼は主としてアルコールを口にしなかった事だ。
飲めない訳ではないらしい。実際に飲んでいる事もあったが、主に烏龍茶を飲む。しかし、金払いは悪くない。
「自分が飲まない代わりに」と、ワタクシに飲ませてくれるし、若い1人客と同席した時は「話に付き合ってくれた御礼」と言って支払いを済ませていく事もあった。
決して、悪い客ではなかったのである。
だが、金払いの件、文筆業の紹介、振る舞いの部分を加味しようと、どうにも油断できない何かを感じていた。
それが決定的になったのは、行きつけのバーのマスターらと別の店で飲んでいた時、その店にもE氏がいたのである。
我々はテーブル、彼はカウンターだった。その姿を見つけたので、
「あ。Eさんがいますね。挨拶してきます」
と行きつけのバーのマスターに告げて席を立とうとすると、無言で止められたのである。
今、一緒に飲んでいるのは彼らなので、中座が失礼にあたる、と言うのもあっただろうか。ワタクシがすみません、と謝ると、
「そうじゃない。あのおっさんには、あんまり関わらん方がいい」と告げられたのである。
「あのおっさん、どうにも怪しいわな」と同席していた花屋の主人も漏らした。
どうやら、E氏に不穏なモノを感じていたのはワタクシだけではなかったのである。
しかし、何がどう怪しいのか、という点については、特に何も情報が出てこなかった。ただ、信用できないという共通意識を持ったことだけは明確に覚えている。
なお、実はこの時点で、バーのマスターだけはおそらく、ある程度の真相を知っていたものと思われる。
と言うのも、E氏は界隈で数件の店を飲み歩いており、その中でもおそらく最も通い詰めていたのが、このマスターのバーだったのである。
実際にワタクシも彼の店で何度か出くわしている。
それから、数ヶ月が経過した。
ワタクシはその日、例のマスターの店に飲みに行っていたのである。
生憎とマスターは不在で、店にいたのはバイトのミツルくんとユージくんだった。
ミツルくんについてはこちら。
ワタクシはふと思い出したE氏の事を口にする。そう言えば有名和菓子店との契約は終了して東京に帰ったのだろうか。
(´・Д・)」 そーいや最近、Eさんを見ないよね。
すると、ミツルは予測もつかない事を口走ったのである。
( °ω°) 木賃さん、知らないんスか!?
Eさん、
全国指名手配ですよ!?
(´°Д°)」 えっ、、、?
ミツルくんらの話によると、どうやら彼は「詐欺師」だったのである。
(´°Д°)」 詐欺師、、、?
そう。彼は、バーで羽振りの良い飲み方をして大学生たちの信頼を集め、
ヽ(・∀・) 今だけ得する投資の話があるよ!
って話を持ちかけ、
大学生たちに借金させて金を掻き集め、
トンズラしたのである。
(´°Д°)」 えええぇぇぇええぇえ?
んで、事件発覚して、当然のこと初犯でもなんでもないから全国指名手配ですわ。
(´・Д・)」 マジかよー。全然わからんかったわ。何か本能的に警戒サインは出てたけど。
すると、ミツルはこう言った。
(; ・ω・) ボク、警察から、
めっちゃ事情聴取受けましたからねー。
(;´・Д・)」 なんで、、、?
(; ・ω・) Eさんにカモの大学生を、
何人も紹介したの、
ボクなんで、、、。
ぶっちゃけ、E氏に付いて行くだけで良い酒が飲めるし、大学の知り合いを紹介するだけで、良い店にも行けるってんで、ミツルはかなりの友人を犠牲にしたらしいのだ。
結局、犯罪性はなかったと言う事でお咎めはなかったらしいが。
そして数日後、ウチの店で、バーのマスターと前述の花屋さんと3人で飲んでる時に、E氏の話題が上がった。
(´・Д・)」 いや、さすがに吃驚しましたよ。
Eさんが詐欺師だったなんて。
( ̄∇ ̄) あ、そもそもアイツ、
Eなんて名前じゃないよ。
Kだったっけな? 新聞に出てた名前は。
マスターはミツルがE氏にくっついて行った辺りから、大体の予想が出来ていたらしい。ミツルにもそれとなく警告は出したのだが、ミツルは耳を貸さず、目の前のエサにつられた、という訳だ。
(´・Д・)」 Eさん改め、Kさん、
今は何処を逃げ回ってるんでしょうね?
すると、花屋の主人がこう言った。
( ͡° ͜ʖ ͡°) 逃げてる訳ないやろ〜。
次は神戸にでも行って、
また、新しいカモを探してるに決まってる。
木賃とか名乗ってな。
(´°Д°)」 ヒィッ、、、!?
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なお、この先にはその後日談が書かれています。(とは言っても、再会したとか、捕まったとか言う話ではない)
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(´・Д・)」 文字を書いて生きていく事が、子供の頃からの夢でした。 コロナの影響で自分の店を失う事になり、妙な形で、今更になって文字を飯の種の足しにするとは思いませんでしたが、応援よろしくお願いします。