徹底管理から自由な職場へ。おいしいエビを求めたらこうなった
わざわざで長らく販売している、パプアニューギニア海産の天然エビ。プリっとして風味がよく、鮮度の高いエビはお客様からも根強い人気を誇ります。
パプアニューギニア海産は「フリースケジュール制」を採用していて、毎日誰が何人出社するかわからない状態で工場を運営している面白い会社です。今でこそ自由度が高いものの、かつては監視カメラで社内を確認していた時期もあったそうです。
本当に大事なものは何なのかを見つめ直し、紆余曲折を経てパプアニューギニア海産の今があります。稼働3年目という工場には築浅なだけでは作り出せない、澄んだ空気が隅々まで行きわたっていました。
なぜこんなに綺麗なんだろう
工場に入るなり、明るさと綺麗さに驚きました。
エビを剥く作業スペースの設備はごくシンプルでした。真空パック包装用の機械があるだけで、他は全て手作業で行なっているので作業台が6台と最低限の棚、水道がある程度です。隅々まで掃除が行き届き、長年置きっぱなしの備品などもなく、スッキリ綺麗に整っていました。
自分がやるかどうか
パプアニューギニア海産ではスタッフがやるべき作業内容が一覧になっていて、自分が×をつけた作業はやってはいけないと決められています。
×は月一回のアンケートで変更可能です。×を沢山付ける人が多いと作業に支障が出そうに思えますが、実際のところ×はあまり付いていません。勤務時間が長いスタッフほど、×を多くすると同じ作業を長時間やる機会が増えてしまって逆にきつくなるのだそうです。
こうしたルールのもと毎日働いていると「他の人がどうしているか」ではなく「自分が×を付けていなければやるしかない」という思考に切り替わっていくのだと言います。周囲が気にならなくなり、自分に集中することで自己を正確に認識できることにつながっているのだそうです。
ちなみに、実は作業リストには「挨拶」もあり、4名が×を付けています。自分から挨拶をしなくてもいいし挨拶の返事をしなくてもよくなるとのことで、武藤さんはスタッフとの対話を通して、一人ひとりを理解する必要はなく、受け止めるのがよいという気付きになったと話していました。
監視カメラ時代を経て
一時、武藤さんはスタッフの働きを徹底管理するために社内に監視カメラを付けました。完璧を目指したい思いの強さがそうさせたのだと言います。
武藤さんの熱意とは裏腹に、スタッフにはプレッシャーがかかっていたのかもしれません。東日本大震災を機に工場を宮城から大阪に移転した時に監視カメラは辞めましたが、しばらくして宮城から大阪に一緒に来てくれた唯一の社員が退職してしまいました。辞めた真意はわかりませんが、武藤さんは人間関係や職場のあり方に問題があったと感じ、やり方を変える決断をします。
よりよい働き方を模索するべくヒアリングを重ねたところ「自由に休みたい」という要望が出てきました。じゃあやってみよう、ということで実現させたのかフリースケジュール制です。
フリースケジュールという言葉通り、スタッフは自分の出勤日や勤務時間帯を自由に決められます。誰も出社しない日が出てしまいそうに思えますが、社会保険に加入しているスタッフは月間の勤務時間を満たす必要があるので、平均12~13名が毎日出社してくるそうです。
パプアニューギニア海産には20名のスタッフが在籍しています。かつては退職者が続出した職場は今、辞める人がほぼいなくなりました。
全てはおいしいエビのため
監視カメラを設置していた頃は「どうしたら沢山売れるか」を考えて仕事をしていたけれど、今振り返ってみると当時は大事にすべき事柄を少しずつ捨てる羽目になっていたと、武藤さんは言います。売上を作る代わりに自分たちらしさを失っていたことに疑問を持ちました。
大事なのは働き方のみならず、売り方もそうです。例えば武藤さんは一時期「オーガニック」を意識していました。
パプアニューギニア海産のエビは獲れ次第船上で凍結させるので鮮度が高く、変色を防ぐ薬品を使うことなく商品化できています。このことから、オーガニックであるという推し方ができるのです。
ただ、こうした一般的に好印象な言葉を意識しすぎると、目的を見失うことがあると気付いたと言います。たしかに自分たちのエビはオーガニックかもしれないけれど、一番大切なのは「おいしいエビ」であることです。
おいしいエビをお届けするために自分たちがやりたいことは何だろう?と問いながら、自然と会社を大きくしていくのがこれからの理想だ、と話していました。パプアニューギニア海産のおいしいエビを、わざわざも引き続き沢山の方にお届けしていきます。
監修>平田はる香 文責>いしはら 写真>若菜紘之