#6【降らずとも雨の用意】茶道からヒントを得る5分間
*このマガジンは音声配信「茶道からヒントを得る5分間」を記事化したものです。 500年以上の歴史がある茶道の世界から、現代の日常を心穏やかに豊かに生きるヒントを5分間でお伝えするというコンセプトでお届けしています。 音声でお聴きになりたい方は下記のラジオからご視聴ください。
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さて今回は
「降らずとも雨の用意」という言葉から
ヒントを得ていきたいと思います。
この言葉も前回と同様
千利休さまが弟子から「茶の湯の心得で一番大切なことは何ですか?」
と聞かれた時の答えである、7つの格言「利休七則」の1つです。
・茶は服のよきように点て
・炭は湯の沸くように置き
・花は野にあるように
・夏は涼しく冬は暖かに
・刻限は早めに
・降らずとも雨の用意
・相客に心せよ
最近では天気予報が当たる確率も高くなり、突然の雨という事態は昔より格段に少なくなったと思います。
しかしお茶の世界では
お茶会、お茶事に限らず、普段のお稽古でも
「降らずとも雨の用意」をされている方が多いです。
雨のハネが着物の裾についてしまうとシミになってしまい、呉服屋さんに駆け込まなければいけない事が分かっているので、少しでも雨の気配があれば
折り畳み傘、雨用のコート、裾除けなどを用意している方がほとんどです。
何かにつけ準備が良い方を
「『降らずとも雨の用意』ね」などと
称える意味で申し上げる事もあります。
また茶事ではお客様が「露地」という庭を通って茶室に入りますが、
雨の場合に備えて亭主は
「露地笠」という竹や檜で編んだ笠を用意しておきます。これは頭にかぶる編笠のようなもので、お客様に頭上にかざしていただきお使いいただくものです。
お客様の足元に雨がはねないよう「露地下駄」も用意しておきます。
少しの雨ならば露地がしっとりとした風情もお客様にお楽しみいただくことができます。
さて、茶事やお茶会の時でも何かしら予想外の事は起こります。
そこに対処できるようにも、日頃のお稽古を本番のように積んでいく事が必要です。
柄杓から滴が落ちてしまった...
お客様の拝見にお出しするお茶杓の櫂先に、清めたつもりが、お抹茶がついたまま...
そんな時
「お稽古だから...」と思っていては
真剣に対処はできません。
「稽古は本番」
です。
予想外のことは起こってほしくないし、そうならないように日頃の修練を積んでいくのですが、
間違えてしまう時、何かが起こってしまう時だって時にあります。
そんなときでも慌てることなく冷静に対処し、何事もなかったかのようにスーッと事をすすめる方が賢明な場合があります。
ここでもしお点前の人が大慌てとなってしまえば、寛いでおられるはずのお客様に逆に気を遣わせてしまいます。
これは「和敬清寂」の「寂」と言う言葉にも通じます。
この「寂」は「寂しい」と書きますが
意味は、どんな時にも動じない心のことです。
すべての悪い出来事を完全に避けることは難しいかもしれませんが、修練を積みつつ、起こってしまった事には冷静に対処していく。
「降らずとも雨の用意」は
雨に限らず、突然のときの用意ができているかどうか、そのための修練や準備を普段からしているかどうかを私たちに気づかせてくれる言葉です。
以上、
「茶道からヒントを得る5分間」でした。
それではどうぞお健やかにお過ごしください。
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