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#3【夏は涼しく冬は暖かに】茶道からヒントを得る5分間
*このマガジンは音声配信「茶道からヒントを得る5分間」を記事化したものです。 500年以上の歴史がある茶道の世界から、現代の日常を心穏やかに豊かに生きるヒントを5分間でお伝えするというコンセプトでお届けしています。 音声でお聴きになりたい方は下記のラジオからご視聴ください。
▷stand.fm「茶道からヒントを得る5分間」
https://stand.fm/channels/5f85c5e637dc4cc7e198a635
▷Spotify 「茶道からヒントを得る5分間」
https://open.spotify.com/show/3L51qNFpi6cdCnWH9G5K7q?si=C7XIixGURouF2Q00XqfDlg
さて今回は
「夏は涼しく冬は暖かに」という言葉から
ヒントを得ていきたいと思います。
この「夏は涼しく冬は暖かに」という言葉は
千利休さまが弟子から「茶の湯の心得で一番大切なことは何ですか?」
と聞かれた時の答え、
・茶は服のよきように点て
・炭は湯の沸くように置き
・花は野にあるように
・夏は涼しく冬は暖かに
・刻限は早めに
・降らずとも雨の用意
・相客に心せよ
という7つの格言からきています。
この格言を私たちは
「利休七則」(りきゅうしちそく)とよんでいます。
今日はこの7つの格言のうち
「夏は涼しく冬は暖かに」という言葉からヒントを得ていきたいと思います。
*掲載している写真はすべて Way of Grace 恵み茶会のリアル拠点である「裏千家茶道教室 東京中野千秋庵」で撮ったものです。
「風炉」と「炉」
茶道では、お抹茶に使う湯は、炭に火をおこして釜で沸かします。
この釜が5月から10月は「風炉」といって 畳の上の空間に釜があるように見えます。
そして11月から4月は「炉」といって
茶室の中、畳の一角に囲炉裏のような空間が切られていて、そこに釜があります。
お客様と釜の位置を考えると、5月からの夏の時季はお客様には火から少し距離をおいてお座りいただくことになります。
10月の少し肌寒い頃になってくると「中置」といって通常の風炉の位置も少しお客様の方に近づき、結果としてお湯を沸かす炭、つまり火もお客様に近くなって、少し暖かみを感じていただけるようになります。
そして11月からの冬の時季は小さな囲炉裏のような「炉」で、火とお客様の距離も近くなり、茶室も少し暖かくなります。
▷【茶の湯の四季】風炉から炉へ「炉開き」の動画はこちら
裏千家茶道では2月は「大炉」
さらに2月になれば裏千家茶道 独特のものとして「大炉」というものがあります。
まさしく北国の囲炉裏から着想を得て考案されたもので
通常の炉のサイズよりも約12cmずつ大きく、そこに大きな口の釜をかければ、たっぷりの湯気が上がり、実際にも見た目にもお客様に暖をとっていただく事ができます。
4月になれば炉の中の火をお客様の目から塞いでしまう「透木釜」があります。
まだ朝夕は肌寒くても昼間は汗ばむくらいの陽気、目にも熱い火をお客様の視線から外し、炉の暑さを感じさせないようにする気配りです。なお、この「透木釜」は暑さが特に厳しい時季にもなされる工夫です。
工夫はお点前やお道具でも
お点前でも、お茶碗を拭く茶巾を一工夫して、夏は「洗い茶巾」といって、あえてお茶碗に水をはって席中に持ち出し、涼しさを演出します。
お道具も例えば夏にはギヤマン(義山)といってガラスの器を使ったりします。
冬は「絞り茶巾」といって、わざときちんと畳まずに絞ったままのお茶巾を持ち出し、底が深く温まりやすい筒茶碗にお湯をはって、十分に温めている間に茶巾をたたむお点前もあります。
1年を通じて工夫・演出をしていく
ここであげた例は極々一部ですが、
1年を通じて茶道では
人間にとって大切な温度というものを実に日本人らしい細やかな気配りで調整していきます。
さらに席中のしつらえややお点前、お道具など趣向を通じて
「夏は涼しく冬は暖かに」の演出をしていきます。
「夏は涼しく冬は暖かに」の工夫を日常でも
暑い夏を「暑い暑い」と文句を言っていてもしょうがありません。
寒い冬に「寒い寒い」と凍えていては何もできません。
暑さ寒さ厳しい時季でも
お客様に快適に過ごしていただく
自分も家族も気持ちよく過ごしていく
そのための工夫を考えていく。
この実践の中で、
まるで大切な誰かにプレゼントを選んでいる時のように
温かい心のギフトを差し上げる気持ちが生じてきます。
これが優しいおもてなしの心につながるのです。
「夏は涼しく冬は暖かに」
ぜひご自宅でも意識して実践してみてください。
人に対してだけでなく自分にもおもてなしの心を忘れないでくださいね。
以上、
「茶道からヒントを得る5分間」でした。
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