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文化人類学がおもしろい

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わたくしコミュニケーションを専門とする博士(学術)の筆者が”複数の他者のあいだのコミュニケーションを記述すること”という切り口から文化人類学の文献を読んで行きます。 わたしは文…
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2023年2月の記事一覧

ことば / ことのは / 事の端 -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(17)

クロード・レヴィ=ストロース氏の『神話論理』を意味分節理論の観点から”創造的”に濫読する試みの第17回目である。前回はこちらですが、これまでの記事を読まなくても、今回だけでお楽しみ(?)いただけるはずです。 本記事は1万6000字ほどあり、じっくり読むと何時間もかかりますので、「長い」と思われる方は一番最後まで飛ばしていただけると幸いです。 前回の記事では、人間とAIがハイブリッドになっていく中で、近い将来「ことば」ということがどのようになっていくのか、その可能性をどのよ

AI、曼荼羅、深層学習。神話論理と言語の未来 -人間もしくはAIが「言葉の意味を理解する」とは

チャットAIの知性と、人類の知性ChatGPTの登場をきっかけに対話型の文章生成AIが注目を集めている。 わからないこと、知りたいことを対話型のAIに質問でも相談でもすれば、まるで親切でポジティブな人間のように的確な文を返してくれる。 例えば「○○とは何か?」式の質問(つまり「○○とはXXです」と答えることができる質問)や、学生のレポートや仕事の資料に使う文章やメールの文案といった、いままで私たちを「はて、どう書いたら良いものか…」と日々悩ませ、生産性と称されるものを低下

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なぜ「舌切り雀」は舌を切られてしまうのか? -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(16)

クロード・レヴィ=ストロース氏の『神話論理』を意味分節理論の観点から”創造的”に濫読する試み。 膨大な『神話論理』のオープニングにあたる『神話論理I 生のものと火を通したもの』は「料理の火の起源」や「ノブタの起源」といった神話から幕をあける。 ここで紹介されている「料理の火の起源」、「ノブタの起源」の神話は、南米の先住民の神話を記録した資料にあるものだが、その語りの展開をよくよく眺めると、わたしたちに馴染み深い日本のむかし話と同じ構造が見えてくる。 舌切り鸚鵡、ウサギの

深層意味論的神話分析「タバコの起源」にみる”未分離”と”分離”の「分離」 -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(15)

クロード・レヴィ=ストロース氏の『神話論理』を意味分節理論の観点から”創造的”に濫読する試み。 * * 今回も前回に引き続き「鳥の羽根で葺いた小屋」が登場する神話である。 『神話論理I 生のものと火を通したもの』から、「文化財の起源」の神話を引いてみよう。この神話も、時系列で次のように展開している。 α未分離 →β分離 →Γ分離したものの結合 →Δ第二の分離 内容を詳しくみてみよう。 α未分離 →β分離 →Γ分離したものの結合 →Δ第二の分離 この集まりつつ離れ

人間の起源とは? -神話にみる”心”の存在分節・意識分節と、空海の『吽字義』の世界 -レヴィ=ストロースの『神話論理』を深層意味論で読む(14)

区別されたものについての知能と 区別することについての智慧見えるとか、見えないとか 感覚できるとか、できないとか あるとか、ないとか そういうことを言えることを可能にしている、構造というか、アルゴリズムというか、流れというか、システムというか、なんとも言えないようなこと ”それ”を外から分節すると、もう”それ”ではなくなってしまうなにか それに惹かれながらも、この感覚世界を”それ”の象徴として生きる智慧を。 ノブタの起源 「かつて、ノブタは人間だった」 さて、クロ

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