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文化人類学がおもしろい

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わたくしコミュニケーションを専門とする博士(学術)の筆者が”複数の他者のあいだのコミュニケーションを記述すること”という切り口から文化人類学の文献を読んで行きます。 わたしは文…
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2019年4月の記事一覧

3次元の時空を出る :中沢新一『熊を夢見る』を読む

中沢新一氏の著作『熊を夢見る』を読む。 夢、というのは誰もが経験できるもので、それは確実に「ある」。あるいは「存在する」。 それでいて夢は物のようには存在しない。 「これが夢です」というものを箱に入れて置くことはできないし、フリマアプリに出品したりすることもできない(ただ、夢を売り買いするということは昔から行われてはいた)。  そういう夢で、「熊」を見るとはどういうことだろうか。 リアルな3次元の時間と空間を抜け出るさっそくページを開いてみると次のようにある。 「

概念の境界を折りたたみ続けるー読書メモ ヴィヴェイロス・デ・カストロ『食人の形而上学』(2)

最近の人類学の本はおもしろい。 研究手法の訓練を受けたことがない素人が読んでもとにかくおもしろいのである。中でもこのヴィヴェイロス・デ・カストロの『食人の形而上学』。 冒頭の節に次のようにある。 概念と実践のあいだの縁組−つねに多義的であるが、しばしば多産的でもある−にこそ、人類学のオリジナリティはあるのではないだろうか。(『食人の形而上学』p.14) 他者が作ろうとしている概念を観察し記述する。 そうすることで、自らもまた概念を作る。そうした営みにフォーカスするの

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「多自然主義」とは? ーヴィヴェイロス・デ・カストロ『食人の形而上学』を読む(3)

最近の人類学の本はおもしろい、というお話。前回に引き続きヴィヴェイロス・デ・カストロの『食人の形而上学』を読んでみる。 ※ もちろん「最近」のものではない人類学の本もおもしろい。特に個人的におすすめしたいのはやはりレヴィ=ストロースの『神話論理』である。 神話論理についてはこちら↑の記事にも書いているのでぜひご参考にどうぞ。 ◇ ヴィヴェイロス・デ・カストロは『食人の形而上学』においてレヴィ=ストロース以前と以後で、人類学の対象がガラリと変わったと書いている。そして