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文化人類学がおもしろい

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わたくしコミュニケーションを専門とする博士(学術)の筆者が”複数の他者のあいだのコミュニケーションを記述すること”という切り口から文化人類学の文献を読んで行きます。 わたしは文…
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2019年1月の記事一覧

人類学で関係論をアップデートできるかも

 ここしばらく人類学の本ばかり読んでいる。  いや、「人類学」というと領域が大きすぎるかもしれない。最近話題のパースペクティヴ主義であるとか、多自然主義の話である。  特にこのヴィヴェイロス・デ・カストロの『食人の形而上学』は圧巻だった。  私は人類学についてはまったくの素人であるが、パースペクティヴ主義も多自然主義も、もともと「人間と機械のコミュニケーション」といったことを研究テーマにしていた身としては、とても腑に落ちるところが多い。  人間と機械の関係。それをどう

違うけれど同じ、同じだけれど違う:純‐情報レベルの記号過程へ

 あれとこれは同じ、とか、あれとこれは違う、とか。  一体全体どうして、あれとこれとを区別したり、比べたり、同じものだ違うものだなどと言うことができるのだろう? バスとトラックは「同じ」(車両) りんごとみかんも「同じ」(果物) チワワとドーベルマンも「同じ」(犬) 子猫とジャガーも「同じ」(猫科) 「あなた」と「みんな」も「同じ」(人間)  子猫のあたりまでなら、ふんふん、それならそれで。同じということでよろしいじゃありませんか、と聞き流せる。しかし最後の「み