20240722ふかいメルマガ161回 3文字で破裂音と濁音
おはようございます。
「人と人間」で気になったこと
確かに生物学的には「ヒト」で、
「人間」という言葉を調べると、
ひと・人類という意味に続いて、
人柄・人物・人間界・世間と出てきます。
なのに多くの人が、人に「感情」を感じて、
人間に「生物学的」な本来の意味と
逆の印象を持ってしまうのです。
私が気になったことは、
人と人間の言葉の「音による印象」が
大きく影響しているのではないかということです。
それは、「にんげん」の濁音の影響です。
意味不要?3文字に破裂音
20年以上前の昔に、都内のスーパーマーケットの仕事をしました。
そのスーパーの社長から、今までの店舗を改装して、
高級スーパーとしてリニューアルオープンさせるので、
ネーミングとロゴを考えてほしいという仕事を請けました。
マーケティングプランナーの私としては、
商圏の特性や競合店との差別化を考え、
その上で新しい高級スーパーのコンセプトを考え、
そのコンセプトに基づいて方向性を導き、
ネーミング案をいくつか出しました。
実はそのスーパーの社長は、
流通小売業界専門のコンサルタントで、
そのスーパーマーケットチェーンの再生チームのリーダーでした。
私もその再生チームの一人として、
YRK&の前身ヤラカス舘から参加していました。
スーパーマーケットの社長以下役員・部長が集まった会議で、
私が新店名のプレゼンテーションをはじめると、
「あんたたちはすぐコンセプトだとか、
横文字を使いたがるが、
そんなことどうでもいいこっちゃ」と、
社長がいきなりさえぎりました。
社長が続けて言ったことは、
今でも強く記憶に刻まれています。
「いいか深井君、
人間なんて長い言葉は覚えられない。
せいぜい3文字。
それで女性に来てもらいたければ、
ぱぴぷぺぽ、破裂音を入れた3文字を考える。
男性客だったら濁音を入れた3文字。
うちは女性客だから破裂音を入れた3文字を
❝あ❞から順番に書き出しなさい。
コンセプトも意味の考えなくていい」
というものでした。
私が考えた企画書は、最初の1ページで終了。
費やした時間はすべて無駄。
それ以上にプライドはズタズタでした。
むしろ頭に来ていました。
結局その会議に出席していた経営幹部のみなさんと、
❝あ❞から破裂音の入った3文字を書き出していきました。
例えば、アパン、アピン、アプン・・・というように、
意味なんて関係なく、音感だけです。
確かに小売業は3文字で成り立っている?
その時は、
プレゼンテーションをはじめたとたんの全否定で、
頭が真っ白のまま、
ホワイトボードに意味のない3文字を書き出していたのですが、
冷静になってから染み渡るように納得しました。
たしかにスーパーマーケットの店名は、ほとんど3文字です。
イオン・ライフ・ヤオコー・イズミ・ベルク・オークワ・など
4文字でも音は3音というのは、
西友・平和堂・ベイシア・ハローデイ・サンリブなど。
また長い店名でも、常連客が略称で呼ぶのは、
だいたい3文字になっています。
関西スーパーだと、関スパとか関スー、
イトーヨーカドーだとヨーカドーとかアイワイというようにです。
ドラッグストアやホームセンターも同じです。
マツキヨ(マツモトキヨシ)、サンドラ(サンドラッグ)、ツルハ、カインズ、ハンズ、ロフト、ドンキ・・・。
たしかに3文字(3音)。
意味もあるようでだいたい無い(笑)。
濁音と破裂音
男性が好む濁音と女性が好む破裂音。
例えば男の子が好むヒーローものやロボットアニメの名前ですが、
鉄人28号・ゴレンジャー・キカイダー・マジンガーZ・ゲッターロボ・ガンダム・エヴァンゲリオン・・・
比較的女性に人気のキャラクターだと
スヌーピー・プリキュア・ポケモン・アンパンマン・くまのプーさん・・・
ちょっとこっちは苦しいかな(笑)
というわけで、ヒトとニンゲンですが、
人間の言葉にゲという濁音が入っていて、
人には破裂音ではないですがハ行が入っているので、
「人間」に力強い生物的な印象を持ってしまい、
「人」にやさしい感情的な印象を持ってしまうのではないか、
と思ったというのが、冒頭の気になったことです。
やっぱり意味はあったほうがイイ
とは言え、名は体を表すと言う言葉通り、
名前の意味は大事です。
社名にしても店名にしても、ブランド名にしても、商品名にしても、
その意味を知ることで、共感したり誇りに思ったり、
ますます好きになったりするからです。
一方で音感によって印象が大きく左右されるということも
認識しておかないといけないということです。
ちなみに、冒頭の高級スーパーの話に戻ります。
破裂音を入れた3文字を次々と書き出した結果、
「パ」で始まる3文字店名に決まりました。
この3文字、スペイン語で「公園」という意味で、
音感だけでなく、公園のように人が集まり楽しい店にしたい
という意味と意思も入りました。
めでたしめでたし・・・。
深井賢一