T.Tokunaga(濃青だった人)

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最近の記事

勉強の進捗 2024/07/29

2022年末から2023年にかけて、私がクイズのための勉強をどのように進めているかについての記事を3つほど出しました。 この内容については、最新のものが2023年10月となっていて、そこからだいぶ間が空いてしまったので、久しぶりに進捗を書いてみようと思います。 2024年の勉強方針は、2023年までとは少し変えてみた部分もあるので、それについても書いてみます。 これまでの流れ2023年までの勉強の基本的な方針としては、図書館の書架分類としてよく用いられている日本十進分類(

    • クイズと記憶

      クイズに強くなるための方法論についてはこれまで様々に書かれてきましたが、知識をベースとする競技クイズで特に重要となる「記憶」について深く掘り下げたものはあまり多くないように思います。ここ最近、記憶の心理学や記憶術について色々と調べていたので、クイズにどのように生かすか、という観点で少しまとめてみたいと思います。 記憶の心理学記憶の心理学をクイズにどう生かすか、を具体的に考える前に、記憶の心理学の概要を、特にクイズに関わる部分についてざっと整理しておきます。知識をベースとした

      • 最近のクイズ研究ニュースと個人的な感想

        ここ最近クイズ研究まわりで色々な成果が世に出されているのでざっくりまとめ&個人的な感想を書く 言語処理学会3月11日(月)〜3月15日(金)にかけて、神戸で言語処理学会第30回年次大会 (NLP2024)が開催されていて、今年もクイズに関する発表がいくつかなされていた。 クイズ関係のセッションは多くが3月12日(火)にかたまっていたので、私はこの日だけ有休を取ってオンラインで発表を聞いてきた。 A1-5 小林俊介, 河原大輔 (早大) 『多様なクイズを自動生成する手法およ

        • 競技クイズとテスト理論

          競技クイズの問題をどのように作るかについては、昔から様々な観点で議論がなされています。例えば、名数型の問題を作るとき、既存の問題ではしばしば「項目の中で異質なものがあれば、それが答えになる」などの傾向が知られていますが、これをルールとして課すべきか、それともこれに沿わないものも出題すべきか、などといった議論がよく行われています。 こうした議論は結局のところどのようなコンセプトでクイズを行いたいか、という好みの問題が絡んでくるので完全に客観的に良し悪しを決めることは難しいと思

          競技クイズの実力をランク付けする仕組みについて

          現在の競技クイズ界が抱える問題の1つとして、プレイヤーの実力がどのくらいかを判定できる有効な手段がない、というものがよく言われます。試合を行う上でプレイヤーの実力によるレギュレーションの設定がうまくできないため、しばしば初心者と上級者が戦うことになり、強い人だけが楽しむ形になりやすくなっています。 この状況を改善するためにQRIP(クリップ・クイズレーティングインプリメントプロジェクト)のような取り組みが行われていますが、今のところはまだあまり芳しい成果は出ていないようです

          競技クイズの実力をランク付けする仕組みについて

          1○1×の戦略について その2

          10月28日に、「1○1×の戦略について」という記事を公開した。 ここでは、ボタンを押したタイミングで読まれた文字数割合に比例して正答率が上がる、というモデルに基づいて、1対1での1○1×の対戦戦略を考えた。が、実際には正解率は文字数割合に比例するというよりは、ある「確定ポイント」を境に大きく変わる、と言われている。今回はこの「確定ポイント」を考慮したモデルで1○1×の対戦戦略について考えてみたい。 まず、問題文には1つの「確定ポイント」があり、プレイヤーはそれより前で押

          1○1×の戦略について その2

          早押しクイズと日本語のプロソディ

          現代の一般的な早押しクイズでは、問題文の途中でボタンを押し、そのタイミングで問い読みがストップして、解答者は残りの問題文を推測して答える、という形式が主流です。このとき、クイズアプリ「みんはや」に見られるような文字で出題する形式の早押しだと文字情報のみしか手がかりがないですが、一般的なクイズ大会で行われている音声での問い読みでは、それに加えて音の高さやポーズの入れ方などの情報を、問題文の推測に用いることができます。 よく知られている例として、パラレル問題の場合を見てみましょ

          早押しクイズと日本語のプロソディ

          1○1×の戦略について

          2021年に『早押しクイズの正解率関数とその線型モデリング』という論考を公開した。 ここでは、早押しクイズにおいて全長$${L}$$文字の問題文が$${x}$$文字読まれたタイミングで押した時に正解できる確率を、定数$${q}$$を用いて以下のように表せると仮定したモデリングを考えた。 $$ p(x) = q\frac{x}{L}\quad(0<x<L) $$ これと同じモデルを用いて、1○1×の早押し対戦を行う時の戦略について考えてみたい。 設定としては次のような条

          1○1×の戦略について

          勉強の進捗 2023/10/15

          今年(2023年)の5月に「Suggest Toolを使った勉強」というタイトルの記事で各分野について勉強を進めている内容を書きました。 しばらく経ったので、また最近の勉強の進捗について書いてみたいと思います。 これまでの流れ2022年の終わりに、2023年から各分野について勉強していくために、現在それぞれの分野についてどの程度知っていて、今後どういう方針で勉強を進めていきたいか整理しました。 その後、もともとクイズの問題順選定のために作った"Suggest Tool"

          勉強の進捗 2023/10/15

          クイズの作問過程を言語化してみる

          これまでにいくつか、クイズの問題に関する論考をnoteに上げてきました。 これらは一般化した形で書いていますが、逆にもっと具体的な内容について書くのも良さそうだな、ということで、今回は実際に私がクイズの問題を1つ作る、というのをやって、その過程を言語化してみようと思います。 1. どういうクイズ問題を作るかまず最初に、大雑把にどういうクイズ問題を作るか、ということを整理します。 一般論として、「クイズ」という言葉の指す対象は非常に多岐にわたります。知識クイズだけではなく

          クイズの作問過程を言語化してみる

          クイズの問題に見られる「〜で、〜のは何でしょう?」について

          少し前に、次のようなツイートを発端として、クイズの問題文に見られるある構文についての議論が沸き起こっていました: これについて、私の思うところを整理してみたいと思います。 問題の整理そもそも、このツイートで例に挙がっている以下の問題文は、複数の問題点をはらんだものになっています。 このため、当該ツイートをきっかけにツイートされた様々な意見は、この問題文のいろいろな部分を槍玉に挙げている形となっていました。そこで、まずは問題点を整理したいと思います。 私が見る限り、この

          クイズの問題に見られる「〜で、〜のは何でしょう?」について

          Suggest Toolを使った勉強

          昨年(2022年)の年末に、「勉強計画 2022/12/31」というnoteを書きました。 これは、日本十進分類法(NDC)の各項目ごとに、その時点までにどういうことを知っていて、これからどういうことを勉強していきたい、というのをまとめたものです。2023年はこれの実践として実際に各分野について勉強する、ということを進めています。 また、今年(2023年)の3月に、「Suggest Tool」というnoteを書きました。 これは、BOOTHで公開したクイズの出題順設定の

          Suggest Toolを使った勉強

          Suggest Tool

          2022年3月2日に『ジャンル配分を考慮したクイズ問題の出題順アルゴリズム』という論考をBOOTHで公開しました。 ここでは、過去の出題ジャンルの履歴をもとに、最近の履歴にあるものはそれに応じて次の問題の出題ジャンルの選択確率を下げる、という方針で、似たジャンルの問題が連続しすぎないような出題順アルゴリズムを提案しました。 一応この論考の中では擬似コードの形でアルゴリズムの詳細を記述してあるので、ある程度プログラミングの知識があれば自力で実装することができるように

          クイズにおける正しさについて

          競技クイズの問題を作る時、必ず行わなければならないとされる内容の1つに「裏取り」があります。これは、問題の題材となっている情報が正しいかどうかを確認する作業のことを指したものですが、ここでいう「正しい」とはどういうことかについては、あまり議論されてこなかったように思います。そこで、本稿ではクイズにおける「正しい」をどう考えるべきかについて考察してみたいと思います。 出題者と解答者の考える「正しい」の拠り所クイズは出題者と解答者がいて成り立つものです。出題者は答えとなるべき情

          クイズにおける正しさについて

          クイズ研究への入口

          BOOTHで航海しているクイズ論考について(https://note.com/wattson496/n/nf255e3d830a5)の中で、「あなたもクイズの研究をしませんか?」というような内容のことを書きました。ですが、クイズの研究はまだ黎明期で、どういう論点があるのか、先行研究にどういうものがあるのかなどがあまり知れ渡っていないように思います。ここでは、新たにクイズについての研究を始める手助けになるように、どういう切り口があるかについて、私が把握している範囲で整理してみま

          クイズ研究への入口

          勉強計画 2022/12/31

          競技クイズも含め、個人的には目標として「あらゆる分野について、専門家とその専門について苦労なく話ができる」というところを目指している。 そのために、現状どの程度の分野をカバーできていて、どの分野をフォローアップする必要があるかを整理する。 分野の定め方は色々あるが、日本十進分類法(NDC)が慣れていて便利なのでこれを使うことにする。 0 総記科学論 【現状】 科学論・科学哲学については、大学1回生の時に受講した冨田恭彦さんの科学哲学の講義で知った程度 【今後】 1つ