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心が温かくなる感じ(HEART STOPPER)

BLコミック「HEARTSTOPPER ハートストッパー」の第1巻を読んだ。
作者はアリス・オズマン(Alice Oseman)日本語訳は牧野琴子
全5巻の予定なのでまだまだ序章だけど、とても素敵な物語だ。

heartstopper
【名】
〔心臓が止まるような〕恐ろしい[びっくりする]こと
(引用:英辞郎on the WEB)

【公式】『HEARTSTOPPER:ハートストッパー 1』 日本語版スペシャルPV第1弾【ナレーション 眞島秀和】


*画像はすべて日本公式Twitter(@heartstopper_jp)のものを使用しました。

ページをめくると、すぐに作品の世界に引き込まれる。

舞台はイギリスの男子校。
チャールズ・スプリング(チャーリー)は新学期の縦割りクラス(各学年5.6人が集まりひとつのクラスで活動する)で1学年上のニコラス・ネルソン(ニック)と出会う。

チャーリーは10年生(14歳)、ゲイであることが全校中に知られており(これが自身が望んでオープンにしているのかどうか、1巻時点ではまだ分からない)、そのためにイジメにもあっている。

そんなチャーリーのことを知っているのかいないのか、初対面から彼に屈託なく接してくるニック。

ニックは11年生(16歳)でラグビー部。
どの世界でも似たようなもので、体育会系は学校のヒエラルキー上位だ。
対するチャーリーは線が細く、運動は苦手そうなタイプだ。

そんなチャーリーをニックはラグビー部へ誘う。グラウンドを走るチャーリーの脚力に注目したからだ。

戸惑いながらも申し出を受けるチャーリー。

「できるよ」「やる前から諦めるなよ」「完璧じゃん!」「いい奴なんだ」「俺は好きだよ」「きみは"ごめん"って言い過ぎだ」

どんなときでもポジティブな言葉を投げかけ続けるニックを見ていると、読んでいる自分まで励まされるような気持ちになる。

今まで自信を持つ機会が少なかっただろうチャーリーにとって、ニックとの出会いがどれほど大きなものか、それを想像するだけで胸がいっぱいになった。

チャーリーは当然のようにニックに惹かれていく。
そしてニックにとってもチャーリーは特別な存在になっていく。


チャーリーにはベンジャミン(ベン)という元カレがいる。ベンはニックと同じ11年生。ベンはカミングアウトしておらず、彼女もいるようだがチャーリーを呼び出しては物陰でキスを迫る。
チャーリーは嫌悪感を抱きつつも、ゲイとしての自分を受け入れてくれる(ように見える)ベンにはっきり自分を主張することができないでいる。
それはたぶん、自分に自信がないからだ。

ニックと出会ってからのチャーリーのベンへの向き合い方の変化も見どころのひとつだと思うし、これで勇気づけられたり救われる読者もたくさんいると思う。

2巻以降ベンとチャーリーとの関係がどのようになっていくのかにも注目したい。


このコミックは作家のアリス・オズマンが、自身が書いた小説「Solitaire」の中に登場する脇役のニックとチャーリーを主人公にした物語を構想。それを漫画にしてWEB連載し本にしたものだ。

読んでいると、作者がじっくり丁寧に2人のキャラクターを深めていったのがよく分かる。セリフがないコマにもたくさんのメッセージが詰まっているように感じるから。

そして、2人の心が近づいて行く様子にドキドキせずにはいられなくなる。

小説「Solitaire」は日本語訳されていないため読んだことはないが、本作には小説の登場人物ヴィクトリア(トリ)がチャーリーの姉として出てくる。

トリをはじめ、チャーリーのほぼ唯一の友だちタオや、ニックのおばあちゃん、高校の先生やラグビー部のコーチ、ニックのクラスメイトのハリーや、タラなど2人を取り巻く人々が出てくる。
登場シーンは少ないながら、どのキャラクターも魅力的に描かれているのもこの作品の素晴らしいところだと思う。

最近のBL作品でよく言われる「同性愛を特別視していない世界」というだけじゃなく、「同性愛者(含むマイノリティ)がリアリティを持って社会に存在している」ってことを感じられる作品だと僕は感じた。少なくとも、作者がそのような感覚で物語を紡いでいることは間違いない。それだけでも、ものすごく素敵な気持ちになる。

作者あとがきにあるが

多くの読者が「HEARTSTOPPER」に惹かれる理由は、「心が温まる感じ」じゃないでしょうか。私がそうだからです。

まさにそうだと思う。この作品には"心が温かくなる何か"が潜んでいる。


ドラマ化が決定しNetflixで配信予定なのでそちらも楽しみだ。


コミックス日本語訳も2巻が2021年7月末に発売、以降も全5巻が発売予定なので、これからしばらくはチャーリーとニックとともに心を熱くする日々が続きそうだ。

(自分は紙媒体を購入しましたが、表紙や紙質、手書き風フォントの使い分けなど細部までこだわりを感じて素晴らしかったです!)

HEARTSTOPPER ハートストッパー1
作者:アリス・オズマン(Alice Oseman)
訳者:牧野琴子(Kotoko Makino)
判型:A5判(210×148×19mm)/ 並製
頁数:288頁
定価:1,320円(本体1,200円+税)
発売日:2021年6月28日(月)
発行:株式会社トゥーヴァージンズ 


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