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学校で学んだことと関係のない仕事に就くのは「親に申し訳ない事」なのか?

先日、就職活動中の学生の相談に乗る機会がありました。そして彼女はまず僕に、今までどんな風に就職活動をしてきたのかを教えてくれました。

ざっくりまとめると、彼女は高校時代に運動部のマネージャーをやっていて、選手たちを支えることに喜びを感じていた。競技経験者ではない彼女には技術指導はとてもできないから、選手たちに体づくりの知識提供をしたいと思い独学で「栄養士」の勉強を始めた。高校の部活のマネージャー時代にその努力が何になったわけでもなかったが、彼女は高校卒業後は専門学校へ行って「栄養士」の資格を得てアスリートの体づくりをサポートできるような仕事に就きたいと思い、実際に専門学校に通った。

専門学校での2年間、栄養や食べ物について色々学んで資格も取得したが、いわゆる「スポーツ管理栄養士」と言われる仕事の募集は少ないしハードルも高いくてそういった仕事には就けず、学校給食に関連する仕事しか募集が残っていない。ただ、その仕事をやりたいと思えないというのが彼女の正直な気持ちだという。

であれば切り替えて「栄養士」と関係のない仕事も見てみればいいのではないかと学校の進路指導の先生や友人も言うが、彼女的にはそれもしたくはないから困っているのだという。

学校で学んだことと関係のない仕事に就くのは親に申し訳ない

スポーツ管理栄養士になるために下積みや修行のような勉強をする覚悟も情熱も無いし、栄養士の資格を活かした他の仕事はやりたいと思えない。そこまでは仕方がないし気持ちもわかります。かといって可能性を広げるために「栄養士」と関係のない仕事を探す気持ちにもなれないのはなぜか。「甘えている」と言ってしまうとそれまでだが、せっかく相談に来たのだからと思い彼女の気持ちを詳しく聞いてみました。

予想通りではありましたが「せっかく栄養の勉強をするために専門学校にまで行かせてもらったのに、それと関係のない仕事に就くのは親に申し訳なくてとてもできない。」のだと彼女は言います。

大学で「法学」「英語」「経営」「経済」などを専攻していた人の果たして何%が自分が学んできたことを活かせる仕事に就いているかを考えると、特に何の目的も葛藤もなく4年生大学を卒業した私のような人たちにとっては、理解はできても共感しにくい心情かもしれない。でも私の知る人たちの中でも、特に専門学校に進んだ人たちにはそういったことに悩んでいる人がそれなりに多いのです。

「娘が目指していた仕事に就けた」と思っているから親は喜んでいる

そういった子に私が言えることは多くはないですが、例えば今回の彼女には

仮に君が「栄養士」に関連する仕事に就いたら親御さんは喜ぶと思うよ。でもそれは「娘が目指していた仕事に就けた」と思っているから嬉しいのであって、自分たちが出した専門学校のお金が無駄にならなかったから嬉しいということではないと思うよ。

と話してみると、それは理解してくれたし納得もしてくれました。

自分の娘が自分の口から「私は栄養士の仕事ではなくこっちの道に進みたい」とちゃんと説明して、それが彼女自身の意思で選んだ道だと感じられれば、自分の娘がやりたくない仕事にこれから従事していくよりよっぽど嬉しいんじゃないかと僕は思うのです。親になったことはないから想像でしかないけれど。

親が反対するとしたら我が子に「不安」や「迷い」が見えるから

しかし、実際に親御さんに話してみたら反対されることもあると思います。でもそれは学費が無駄になるからではないでしょう。きっと自分の子どもが不安げだったり、うまく行かない就職活動から逃げるために自分自身の気持ちを騙したりごまかしたりしようとしていると感じたら反対して当然だろうと思います。

例えば今回の彼女であれば「スポーツ管理栄養士」をあきらめることについては親御さんも言いたいことがあるだろうと思いますが、給食関連の仕事をやりたいと思えなかったことについてはきっとちゃんと受け入れてくれるのではないでしょうか。

僕は「自分の人生なんだから、親の意向なんて気にするな」と言いたいわけではありません。自分の面倒を見てくれたり、育ててくれた親に対しては感謝もすべきだし、親に意向も聞いて上で「理解を得られるように努力をする」ことは大事だと思っています。紛れもなく「自分の人生」ではあるけれど、自分一人で生きてきたわけでも自分一人でここまで育ってきたわけでもないから。

本当に親御さんが自分を愛してくれていると感じられるなら、親御さんは自分の子どもが本当に進みたい道、本当に生きたい人生を歩んでくれていることが何より嬉しいと感じると思うんです。だから変に気を使ったり、「申し訳なさ」を感じる必要はないのでは無いかと思っています。何度も言いますが、親になったことはないから想像でしかないけれど。

ちなみに相談に来たその学生は僕との話を終えて、親にちゃんと説明しようという気持ちにはなれませんでした。それは彼女の中にまだ「自分は逃げているだけかもしれない」という迷いがあって、それを親に見透かされそうな気がするからでした。つまり、別に「専門学校まで出させてもらったのに、その道以外に進むなんて親に対して申し訳ない」というのが彼女が仕事の選択肢を広げられない理由ではなかったということでした。もっと自分と本気で向き合うことをおすすめして終わりにしました。


Main Photo by Grant Ritchie on Unsplash

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