コパアメリカ決勝観戦記。サッカーの神様は、メッシではなくて、決勝戦はディマリアに点を取らせた。名勝負は倒れないネイマールという稀有のシーンを生み出した。メッシは、サッカー人生でいちばんいい顔をしていた。
ユーロの決勝感想は、録画や再放送を今晩見る人にネタバレ防止のため、明日、書きます。まずはコパアメリカ、ブラジル×アルゼンチン。(アベマTVのペイパービューで見られるよ。)
みんなメッシの話をするけれど、メッシ全盛期というのは、ディマリア全盛期でもあるわけで。メッシのバルサでの全盛期を迎えるころ、ディマリアもレアルでキャリアの全盛期を迎えていた。
前々回ブラジルワールドカップの感想を書いたときもこう書いた記憶がある。このチームは実質「ディマリア中心、ディマリアが生命線」で、メッシは全く機能しておらず、準々決勝ベルギー戦で、ディマリアが怪我をして、準決勝オランダ戦、決勝ドイツ戦とも、アルゼンチンは一点も取れなかった。(準決勝は0-0でPK戦。)守備はマスチェラーノ、攻撃はディマリア。そういうチームだったのだ。
今大会はメッシが史上最もうまく機能して大活躍。一方のディマリアは、出たりでなかったりだったり、スーパーサブみたいな扱いだった。
そんなディマリアが決勝点をきめて優勝したのは、この十年ほど、実はアルゼンチン代表の攻撃を支えてきたディマリアのことを、サッカーの神様が「みんな。メッシメッシいうけれど、このディマリアのことをもっと評価しないといかんよ」と世界中に伝えるために、こういう筋書きにしてくれたんじゃあないかと思う。
この試合でも、ディマリアは得点シーンだけではなく、縦横無尽に走り回り、突破をし、シュートを何度も打った。後半79分、限界まで走りつづけ交替。この時間までディマリアががんばったことが、得点だけでなく、最大の勝因だと思う。
準決勝PK戦で大活躍のGKエミリアーノ・マルティネスが、この日も絶好調で何度も好セーブでブラジルの攻めを完封。特に後半56分、リシャルソンが右サイドで完全にフリー、一対一から強烈なシュートを放ったのを止めたのは凄かった。
試合終了間際、メッシ、ネイマールに印象的なシーンがそれぞれあった。
後半は一点を追うブラジルが攻勢を続ける。残り5分。
まず、86分、ペナルティエリア左からのネイマールのフリーキック、速いクロスをディフェンスがはじき返したところ、こぼれた球を後半から投入されたフォワード、髭面のガビが強烈なシュート・これをまたしてもGKマルティネスが神がかったセーブ。その流れでのコーナーキックからのブラジル波状攻撃を耐え、メッシが自陣左サイドからドリブルを開始、ペナルティエリア手前まで持ち上がり、追走しつつ右サイドに開いたデ・パウル(一点目もアシストしたのはこの選手)に預け、メッシはゴール前のスペースに走りこむ。そこへデ・パウルから見事なゴロのラスト、スルーパス。絶妙。オフサイドなし、メッシの足元におさまりキーパーと一対一。こんな状況、メッシなら絶対決める。メッシがダメ押して点でこの大会を締めくくるのか。実況倉敷アナも、解説福田さんも、僕も、そう思ったのだが、なんと、メッシ、足元切り替えしてキーパーを倒してかるくシュート、のイメージだと思ったが、切り返しに失敗してキーパーに取られちゃう。福田さん「いやーーー信じられない。ゲーム決まったかと思った」倉敷さん「これでわからなくなりました」
そしてそこから再びブラジルが猛攻を続けるが得点できず、90分を過ぎる。アルゼンチンは時間を潰しにかかる。ロスタイムは5分。92分過ぎたところ、ネイマールはキーパーからディフェンダーがつないだパスをセンターラインちょい手前、左サイドで受けると、猛然とドリブル始める。これだけゴールから遠い所ならファールで止めて時間使っちゃえと、アルゼンチンディフェンダーが後ろからユニフォームを引っ張る。ネイマール倒れない。ディフェンダー、転がりながら、手でネイマールの足を引っ張る。ネイマール倒れない。前からディフェンスに入ったメッシ、ネイマールの足を引っかける。ネイマール倒れない。ペナルティエリア外側までいって、さらに二人に囲まれてついに球を失った。が、ネイマールは「倒れない」と決めたら、これくらい倒れないことが可能なのだ。まるで全盛期の中田英寿のように、相手を突き倒し、タックルしてきた相手を跳ね飛ばし、足を引っかけられてもバランスを保って前進しつづける。こんなネイマールは初めて見た。すごい。それくらい勝ちたかったのである。いつも、ちょっと触られただけで倒れるのは、怪我をしないためなのだ。スキーのスラロームみたいに重心を切り返しながらドリブルするから、あれは転ばないと危ないんだと思うが。しかし、ころばない気なれば、ネイマール、倒れないのである。
という印象的な「メッシ、自らの華麗なフィナーレ、やり損ねる」「ネイマール、本気になると転ばない」という、ふたつの名シーンを残して、ロスタイムも終了。1-0。後半はブラジルが圧倒的に攻めたが、アルゼンチンがしのいだ。オタメンディのディフェンスも、素晴らしかった。メッシが悔しい思いをしてきた期間、ディフェンスのオタメンディも悔しい思いをし続けてきたのである。
ついに、アルゼンチンが優勝。メッシは、フル代表で初めてのビッグタイトル。全選手がメッシのところに詰めかけ、小さいメッシの姿は全然見えない。
アルゼンチン選手たちがぴょんぴょん飛び跳ね歌い始める。しばらく茫然とピッチ内を歩いていたネイマールが泣き始める。泣いて、ピッチに跪いて泣き続ける。
しばらく泣いた後、ネイマールは、メッシを祝福しに行き、抱擁。バルサでチームメイトとして、いくつものタイトルを取った、友達でもある。とてもいいシーン。
大きな大会が終わった後の、こんな晴れ晴れとした、アルゼンチンのユニフォームを着たメッシの顔を見るのは、当然ながら、初めて。良かったなあ。
ネイマールは、アルゼンチンの選手、全員と笑顔でハグ。いいシーンだなあ。
ディマリアはマンオブザマッチをもらい、エミリアーノ・マルティネスは大会ベストキーパー賞。大会のMVPは試合前に、「一人には決められない」と、メッシとネイマール二名にと、発表されていたのでした。
サッカー、大好きである。
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