世界リレーの、TBS大失敗放送に思うこと。 [スポーツ放送批評]


何が起きたかは、直後に書いたFacebook転載。

「TBSにはスポーツ中継する資格なし。。五輪の放送権も与える必要なし。

BS-TBSで世界リレー、世界初の新種目、2×2×400(男女一人ずつが400mを2回ずつ走る)を放送中、第3走者からアンカーに渡るところで突然放送終了。(8時50分まで。)地上波にリレーかと思いきや、地上波はまだ前の番組を放送中、地上波世界リレーに切り替わっても(8時52分)、男子100×4リレーメンバーのアップ映像を流すだけ。

2×2×400mリレーは、実は日本の若手二人、
クレイアーロン竜波(相洋高校)
塩見綾乃(立命館大学)
みごと3位銅メダル獲得。この快挙を放送しないとは。しかも競技途中でぶったぎるとは。

地上波放送は男子100m×4のあおり情報、織田裕二と中井美穂のおしゃべりを流し続ける。

選手、競技、「今やっている競技」への敬意の無いTBSには、スポーツ中継をする資格はない。今までもいろいろひどかったが、今日のは最悪。

電通現役スポーツ関係のみなさん、TBSにきちんと要望を出して、東京五輪中継がまともな放送になるようにお願いします。このような放送の仕方では、視聴者が怒って、中継をぶったぎって流れるTVCM広告主までもが「悪者」に見えてしまいます。視聴者の怒りが広告主にまで向けられてしまいます。広告主のためにも、TBSがまともなスポーツ中継をするよう、五輪に向けて、なんとかしていただきたく。

チケット受付初日に東京五輪の陸上走り幅跳び決勝の時間と、男子100×4の決勝の時間帯、柔道60、66、73の3日間予選決勝全部、ハンドボールの決勝戦のチケット予約申し込みをしてしまった。本当に見たい競技は観に行くか、ネット中継でちゃんとフルにやってくれないと、地上波放送はおそらく日本選手あおりVTRだらけで、まともに競技を放送しない最悪放送だらけにこのままだとなるなあ、確実に。トホホ。

と思ったら、地上波中継も競技途中で終了。まじ、最悪。」


ここからは、一晩明けて、書いたこと。


「それからね。

昨日の世界リレーでの快挙のひとつは、男子マイルリレー(400m×4)で、日本男子が、予選2組一着で決勝に進んだこと。しかも、参加16か国(一か国棄権して走ったのは15か国)中、アメリカ、トリニダードトバコに次いで、全体三位の好タイムだったこと。マイルリレーの人気は、世界的に言うと、100m×4と並んで、きわめて高い。もしかすると100m×4よりも人気が高いかもしれない。そういう大メジャー競技でのこの成績は、本当に快挙。

だから、今日の二日目は、マイルリレーの男子が。決勝でどこまで戦えるか、という、大注目の話題が実はあるのですが、残念ながら昨日の一日目、地上波放送だけを見た人は、そんなことはひとかけらも知りません。
期待の男子、100m×4リレーでバトンに失敗したことしか知らないので、今日の放送は見るつもりもないでしょう。

 さて、ここから、昨日に引き続き、TBS批判ですが、TBSのビジネスのために、スポーツ番組で視聴率を取るために、という建設的意見として書こうと思います。

TBSは、日本で人気があるのは、オリンピックや世界陸上で連続してメダルを取っている100m×4 男子「だけ」と考えた。だから、地上波での放送は、他の種目は、おまけ的に余裕があれば流すが、とにかく「男子100m×4」だけに注目が行くように番組の構成を考えた。

TBSの、というか、日本の地上波テレビ局のスポーツ番組づくりの考えは、ほぼどこもこんなかんじ。視聴者を以下のように馬鹿にしている。
①ほとんどの視聴者は、過去に実績のある、過去のメダリストしか知らないし、興味がない。
②ほとんどの視聴者は、競技、スポーツそれ自体の面白さはよくわからないので、人間ドラマなどサブストーリーも一緒に伝えないと興味を持ってもらえない。

よって、過去のメダリストやスター選手だけに密着して、過去紹介VTR、試合直前の控室の様子など、「注目選手だけ」を放送し続ける。(他の種目や、他の選手が競技をしていても、それは放送しない。)

この放送の作り方の場合、その注目選手が期待通り活躍したときは、盛り上がるので大成功です。

しかし、スポーツは「筋書きのないドラマ」です。昨日のバトン失敗のように、注目選手、種目が、早々に負けてしまう、ということは、まま、起きます。
そうなったら、その大会は「つまらない大会」なのでしょうか。

そんなことはありません。昨日の世界リレーでも、新競技「シャトルハードル」で日本女子が銀メダルを取り、これも新競技の2×2×400mでも、日本の若手が銅メダルを取りました。
どちらも、今まで見たこともないような、面白い競技で、シャトルハードルは、水泳のように、四人の選手が100mトラックをいったりきたりしますし、
2×2×400mは、一回400mを走った選手が、およそ50秒ほどもう一人が走った後に、二回目の400mを走る、という競技で、解説の朝原さんも「とてつもなくきつい競技なんです。これだけきついことに挑戦するということが伝わればと思います」と解説していました。そんなきつすぎる競技で、日本の若者が銅メダルを取ったんです。

そして、世界で最も人気のあるマイルリレーで日本男子が、史上最高の走りを見せて決勝に進んだんです。

こんな面白い大会は、いままでなかった。本当に素晴らしく面白い大会一日目だったんです。

このことが、TBSの地上波放送を見ていた人には、ひとかけらも伝わりませんでした。

なんともったいないことでしょう。今年、この面白さに気づいたら、来年はもっともっとたくさんの人がこの大会の放送を見ただろうに。
来年と言わず、一日目の放送を、4×100m男子だけをえこひいきせず、面白い競技、せめて日本選手が大活躍した競技だけでも、きちんと放送していたら、
二日目の放送は、大注目を集めたでしょうに。

何度でも言います。柔道でも、陸上でも、およそスポーツというものは「期待したスター選手があえなく敗退する」ことも起きる代わりに
思いもしなかった、新しい選手が、新しい種目が、いままで注目されなかった選手や種目が、驚くべき面白さや感動を与えることが起きるものです。

それが日本人の場合もあるし、日本人選手ではないけれど、ものすごく心動かされる活躍をする選手も出てくるわけです。

そういう、スポーツの持つ素晴らしさを、どうやったら漏らさず伝えられるか。テレビ局に求められているのは、その工夫です。
もちろん、期待のスター選手、期待の種目を伝えることも大事ですが、くだらない人間ドラマを作ったり、過去のスター選手のVTRを長々と流したり、
控室やアップの様子をだらだらとレポートしたりすることは、スポーツ中継には、はっきり言うと、不要です。

スポーツ競技、それ自体の持つ素晴らしさ、感動を、どうやって伝えるか。その第一歩は「今、実際に行われている競技それ自体を、
余計な演出なしに、なんだったらリプレーだって
そんなにいりません。今まさに行われている競技自体を、しっかりと放送すること。

そして、その競技への愛情と理解と尊敬を持った解説者とアナウンサーが、くだらないエピソードではなく、
その競技内容自体を、余計な演出なしに中継解説することです。

どのプレーが素晴らしいのか。どのプレーが感動すべきプレーなのか。それを、いちいち初心者向けに解説しなくても、
競技理解の深いアナウンサーと解説者が、本心から感動ながら実況解説していれば、
そのスポーツの面白さは、よくわからない素人視聴者にも「感覚的」に伝わるものです。
そうか、こういうプレーがこのスポーツではいいプレーなんだ。ここが見どころなんだ。
こんなに解説者が叫んでいるっていうことは、これはすごいことなんだな。

そもそもリレーっていうのは、小学校の運動会だって、見ていれば自然に興奮するものです。面白いんです。
人間は、ものすごく速く走る人間が競争しているのを見ると、自然に興奮するように、進化の過程で遺伝子レベルでそうなっているんです。
走るのが速い人間は、狩りででっかい獲物を捕まえたり、戦争で相手をやっつけたりする能力の高い人なわけですから、
そういう人間が、すごいスピードで走っているのを見ると、人間という生き物は興奮して感動するようにできているんです。余計な盛り上げ情報はいらないんです。

テレビ局のスポーツに関わる皆様、それに助言を与える広告代理店の皆様には、
オリンピックを前にして、こういう、スポーツの魅力の「基本の基本」を、きちんと心に刻んでほしい。

それから、今回であれば、日本陸連ですが、各競技団体の偉い方々。全柔連も、日本ラグビー協会も、すべての競技団体の偉い方たちに申し上げたいのは
地上波テレビの「下手な盛り上げアイデア」に騙されないでください。それは、確実に、ファンを怒らせ、減らします。ツイッターなどの反応をきちんと見てください。
たいていのフィギュアスケートファンは、テレ朝の放送に怒っているでしょう。ほとんどの陸上ファンは昨日の世界リレーに怒っているでしょう。
ほとんどのゴルフファンはTBSのマスターズ放送に怒っているでしょう。ほとんどのラグビーファンは、日本vs南ア戦の奇跡の快挙を放送しなかった日テレを許していないでしょう。

地上波テレビ局の現在のスポーツ放送の在り方は「視聴率」という数字を追うことに目を奪われて、「本当のスポーツファン」を激怒させ、
それだけでなく、今はよくわからない普通の視聴者が、本当のスポーツファンになっていく「スポーツそのものの魅力に気づく」機会を奪っています。

全柔連の皆さん、日本陸連の皆さん、日本ラグビー協会のみなさん、自分たちの競技のもつ面白さに自信をもってください。

テレビ局に対して「くだらない盛り上げ策ではなく、とにかく、一試合、一競技でも多く、試合そのものを、競技そのものを放送すること」を、放送権を販売するにあたって、条件にしてください。

フィギュアスケートであったら、「日本人スター選手の盛り上げVTRや控室の様子を流す時間があったら、外国人選手の試合、競技している姿をきちんと放送してください。」と交渉してください。これは多くのフィギュアスケートファンもそう思っている、賛成してくれると思います。
全柔連であったら、例えば選抜体重別のような国内大会であれば、「過去のメダリストだけに注目するのではなく、できるだけ全部の試合、全部の階級を放送してください。思わぬスターが登場する瞬間を逃さない様にしてください」と交渉すべきです。日本の柔道のレベルの高さは、メダリストと互角の選手がどの階級もひしめいていて、メダリストだって国内大会だ勝てる保証は全然ないほどすごいのだ、ということが伝わる放送にしてもらいましょう。
ラグビーワールドカップにあたっては、「日本戦以外の試合をきちんと放送すること」を徹底してください。南半球の、ヨーロッパの、太平洋の島の人たちの、それぞれのラグビーの楽しさが十分伝わるようにしてください。そうすれば、そういう国と日本の試合を見る楽しさも何倍にもなりますし、もし、日本が一次リーグで敗退することになっても、決勝トーナメントも盛り上がって、視聴率も取れるようになるでしょう。そのことが、今後の日本ラグビーの育成にどけだけ大切なことかを、ラグビー協会の皆さんは真剣に考えてほしいと思います。

今の、地上波テレビ局のスポーツ担当の考え方は、古いし、はっきりと間違っています。スポーツファンがどんどん離れていく内容です。「コアなファンはどうせネット中継に流れるんだから」と、視聴者をバカにしたレベルの低い放送内容にどんどん流れていって、自分たちの首を絞めています。

そのことが象徴的に表れたのが、昨日のTBSの「世界リレー」の大失敗放送だったのです。」

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