ブダペスト世界陸上4日目 テレビ観戦記。Facebook投稿転載。女子円盤投げタウサガのドラマと、日本男子、400m準決勝、走高跳決勝、3000m障害で奮闘する、の巻。
女子円盤投げ
女子円盤投げがおもしろかったなあ。
投擲競技はだいたいそうなのだが、身長が高いほうが有利(投げ出し高さが高いほうが有利なのは物理法則上当然。背の高い人は手も長いから、回転運動の半径が大きいほうが先端速度が速くなるのも物理である。)なのだが、中身の筋肉量は多いほうがいいが、そのまわりに脂肪がついていてもついていなくてもどっちでもいい。体型的に太ったアンコがたお相撲さんのようでも、筋骨隆々タイプでもどっちでもいい。
アメリカの代表二人、
一人は世界ランク1位のオールマンは、白人長身183センチで体重70キロ。やせ形筋骨隆々タイプ。
もう一人は世界ランク8位のタウサガはおそらく名前からサモア出身の人で、丸々したタイプ。サモアやトンガの丸々として怪力、というタイプの人である。
オールマンは東京五輪金メダルだし、ベスト記録は71m46。世界ランク1位だし、今大会も優勝候補である。
タウサガはベストが65m46。決勝後半の8人に進めるかだうか、の当落線上の選手である。
オールマンは、1本目から68m56でトップ。3本目に68m79と記録を伸ばし。後半に進める上位8人に楽々入る。
優勝争いは前回世界陸上王者・中国のシュウフェンが二位、3位は前回銀メダル、三大会連続メダリストのクロアチアのペルコビッチ。この三人の優勝争いか。
ちなみにシュウフェンは太ってもいないし筋骨隆々でもなく、メガネをかけた柴田理恵さんみたいな容姿で、あんまり投擲選手ぽくないのに強いのだある。ペルコビッチは背はそれほど高くないがかっちりと筋骨隆々である。
一方のタウサガは2本目まで53mで、最下位12位、このままでは後半に進めない。
タウサガ3本目、ここで65m56の自己ベストを出して5位。後半に進める。これは大健闘。本人も大喜びでコーチに抱きつきにいく。
後半の4本目..オールマンは69m23とさらに記録を伸ばす。東京五輪についで、ついに世界陸上でも金メダルを取りそうな流れである。
一方のタウサガは引っかけ気味(野球でいえば三塁側に引っ張る感じ)に大投擲67mくらいは飛んでいそう。だが惜しくもファール。でも何かをつかんだ感じ。
5本目、それまで7位だったオランダのクリンケンが、67m20を投げて二位に躍進。試合の流れが動き始めたか。
タウサガの5本目、さっきのいいイメージを再現するように投げると、今度はファールじゃない大投擲。本人も今だない手応えがあったようで、頭を抱え、大きな声で「ヤッターヤッター」って、何語なんだか、ほんとに「
」と聞こえるんだが、何度も叫んで飛びはねて、記録が出たら69m49、自己ベストをまた4mくらい更新どころか、オールマンも抜いてトップに立つ。客席のコーチのもとにかけていって抱き合って大騒ぎ。コーチもガッツポーズ連発。
最終6回目投擲は記録の悪いほうからなのだが、みな力が入り、順位を変えるほどには記録は伸ばせない。
オールマンの6投目、いい投擲だったが68m68で、タウサガには届かない。
タウサガ、金メダル決定。
とわかった直後、6投目、サークルに入るとき、もう泣いている。泣きながら6投目、記録は伸びなかったがもう笑顔だがボロ泣き。ボロ泣きだが笑顔。金メダルだ。
一緒に戦った選手たちと次々抱き合う。柴田理恵さんシュウヒィンとも、呆然とするオールマンも抱き合うときは笑顔になるのもなかなかいいシーンでした。
始まる前は脇役だと思われていたタウサガ、いや本人も「後半8人には残って入賞するぞ」がひとまず目標だったのではないかと思うのだが、ギリギリ3投目で後半入りし、そして大投擲で優勝しちゃいました。ヤッターヤッターでした。
世界陸上4日目の日本選手。
女子110mハードル
女子110mハードル3人は、なかなかに厳しい戦いでした。国内競争が激しく切磋琢磨してレベルアップして、世界陸上出場3人は素晴らしい。が、世界の壁は厚いなあ。
男子400m準決勝
それに対して同じく3人が、これはすでに予選を勝ちぬいて3人とも準決勝に進出した男子400m。これは3人とも大健闘したけれど、惜しくも決勝進出なりませんでした。が、三人それぞれ本当に惜しくも。だったり大健闘だったり。
予選で44秒77の日本新記録を出した佐藤拳太郎は第一組6レーン。ジャマイカのワトソンと、アメリカのノーウッド(結果として1位2位)に挟まれ、世界ランク1位のヴァンニーキルクが隣の隣8レーンにいる、背中が見えという状態で。5位に、終わったのだが。44.99。2レース続けて。44秒台。100mでいえば2レース続けて9秒台を出したくらいすごい。
第二組6レーンは佐藤風雅。予選で44.97と44秒台を、だした。隣の8と 6レーンには世界ランク6位と8位の強豪ハドソンスミスとキラニジェームズ(結果として1位と2位)に挟まれている。そしてこの二人に離されず3位争い。最後に4位にはなったが記録は44.88。自己ベストを更新。
二人の佐藤、準決勝でもトップから離されず、もう少しでタイムで拾われるくらいの争いを、した。立派である。
3組、世界ランク1桁のンドリとガードナーの二人が途中で故障して転倒棄権というアクシデント。2番手まで決勝進出なので千載一遇チャンスを得たのは予選で45秒台だった日本選手権王者、中島。行ける行けると解説も実況も絶叫。
しかし、中島は3位。タイムは45秒04の自己ベストだが、2位ベイリー44.94と0.1秒差。惜しかった。
準決勝で2人が自己ベスト、2人が44秒台。みんな互角に戦えた。ズルズルと失速、大きく離されるというような400mでありがちな惨敗レースを誰一人しなかった。世界陸上の準決勝で。これはもうものすごいことなのである。
マイルリレー(400m×4).本気でメダルあると思います。
男子・走り高跳びの赤松。
赤松は決勝13人中、2m20、2m25と一回で成功して、予選の好調を継続。
しかし予選は2m25の次は2m28で。赤松はこれも一回で成功していたのだが。決勝は2m29。
このわずか1cmが、赤松には大きく立ちはだかった。赤松のベストは2m30。限界近くの1cmは、意識の上でも体感でもものすごい違いなのだ。
結果として三回とも失敗。
しかし2m25を一回で成功していたのが活きて、記録2m25の選手の中では最上位になり、8位入賞である。立派な戦いでした。日本人の最高位タイである。
優勝争いは、前回銀メダル韓国のウヒャンソクは2m29まで、前回王者カタールのバーシムは2m33まで。2m36を、東京五輪金メダリストイタリアのタンベリが一回で跳び、二回目に跳んだアメリカの二刀流(幅跳びもやる)ハリソンに試技数でリード。2人とも2m38は跳べず、タンベリ金メダル、ハリソン銀メダルとなった。
男子3000m障害。
王者モロッコのエルバカリと、世界記録保持者エチオピアのギルモ、それにケニア勢三人などの中に、東京五輪7位、ダイヤモンドリーグでも二位になったこともある三浦と、もう一人、青木も決勝に。
三浦は入賞は当たり前、メダル争いに絡めるか、という期待に答える走り。ゴール直前まで5位だったが、最後に後ろから差されて6位。
毎日のように「もしかしてメダル」という期待を抱かせる日本選手が登場、5位、6位入賞というメダルまであと一歩の堂々たる決勝レースを見せてくれる、という夢のような世界陸上である。
レースはエルバカリの優勝。ギルモが2位。ケニア勢が3位4位でした。
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