映画のほうの「ドライブ・マイ・カー」、昨夜、ブルーレイ版で鑑賞完了。感想文というより、鑑賞上の、老婆心からの注意。
映画の方を見る前に、小説「ドライブ・マイ・カー」は読んでいて、感想文というか、村上春樹論というか関連note三本を書いていたのですが、
そのnoteを書くにあたって、映画の予告編だけ見て予想した通り、映画は、かなり別物でした。
2/18に配信も、お皿版も発売になったので、さっそく、買って鑑賞。
僕が観たのはブルーレイのお皿版ですが(大画面で、何度も繰り返し見て分析するつもりならこちらが良いと思う。)↓ちなみにポスターなんて全然いらなかったのだが、ポスターなしの普通のブルーレイ版を見つけられなかった。なぜだろう。
Amazonプライムの配信も始まっています。↓
もちろん小説「ドライブ・マイ・カー」をいちばんのベースにしているが、
①それ以外の村上春樹・小説要素が合体、複合していて
②原作の一要素を、ものすごく膨らましてある
③新たに監督、脚本が付け加えた監督独自のテーマがたくさんある。
以上の複合体になっていますから、まあ、原作とは別物ですわな。
それは映画として、世界の賞を受賞して、アカデミー賞候補にもなるので、なかなかなものでしたが、
妻の感想は「チェーホフ、すげー」
私の感想は「脚本、(監督と脚本家の共同作業)すげー」
え、村上春樹はすごくないんかい。そうですね、小説を読んでから、この映画を見た感想としては、この映画では村上春樹は、あんまりすごくないです。チェーホフや監督や脚本家がすごいなあ、という感想になります。
どういうことかを説明すると、ネタバラシになりますので、細かな感想は、もうすこし、見ようと思う人がおおむね見終わった、「みんなもう見た」というような、アカデミー賞発表後に改めて書こうと思います。
我が家のアカデミー予想は
①外国映画賞はとる可能性大
②脚色賞(原作のあるものを映画化したものへの賞。オリジナル脚本賞とは別)は、とるかも。
③作品賞は、アカデミー賞にしては文化度高すぎ(エンタメ度低すぎ)なので、きっと無い。
でした。
老婆心ながら。鑑賞上の注意点
さて、これだけ話題になると、ブルーレイやDVDや、Amazonプライムで家庭で鑑賞しようという方も多いと思うのですが、何点か、注意。
注意その① 誰と観るか。
村上春樹の小説・映画化あるあるですが、小説を読んでいる分には、そんなにスケベシーンがなさそう、あっても清潔でかわいらしいサラっとしたイメージで読めちゃうのに、映像化すると妙に生々しい。あるいは原作短編にはスケベシーンがないのに、映画化にあたって、スケベシーン多めになる傾向があります。『ノルウェイの森』も、原作は、なにやらおしゃれでさらっとしていたのに、映画では「えぐっ」となった人が多かったです。「納屋を焼く」の映画化『バーニング』もそうですね。小説「ドライブ・マイ・カー」にはスケベシーン皆無で油断していると、大変なことになります。
中高生から大学生あたりの息子、娘のいるお茶の間で、「アカデミー賞候補だぞ」といって鑑賞を始めると、映画冒頭30分くらいで、異常に気まずい雰囲気にお茶の間がなりますので、お勧めしません。あるいは、まだ関係の浅いカップルさんも、はげしくドギマギするかもしれません。
注意その② 部屋は暗くしてね。
映画はもちろん映画館で観るのがいいちばんなのですが、僕もそうですが、コロナがなかなか収まらないのと、配信が便利なので、すっかり映画は自宅で見るようになってしまいました。そんなときも、この映画、部屋は暗くして見ましょう。映画は、暗い映画館で見ることを前提としているので、かなり暗い空間で、人の動きや表情が描かれます。これを、明るい茶の間で、機械の性能として暗い表現が苦手なテレビ画面で観ると、いろいろニュアンスが分からないシーンが出てきちゃいます。ので、できれば気分を出すためにも、夜、部屋を暗くして、一人で鑑賞することをお勧めします。
注意その③小説も読む人への
短編集『女のいない男たち』の、冒頭が「ドライブ・マイ・カー」です。この冒頭一篇だけを読んで、「よーし、映画見よう」とするよりは、『女のいない男たち』全部全編、読んでから、映画にとりかかったほうが、「おおお」となります。
これは、映画を先に見て、小説を後で読もうという人も同様。短編集全部を読んだ方が、後で、いろいろ語れます。あれはね、これはねって。
注意その④戯曲も読むぞ、という人へ
これ「ワーニャ叔父さん」読まなきゃいかんわな、って絶対になります。読んでから見た方が、映画の理解は一発で深くなります。どちらかというと、読むのが先をお勧めしますが。しかし、映画を見てから読むのも、また味わい深いかと思います。「ゴドーを待ちながら」も一瞬出てきますが、こちらはお好みでどうぞ。
kindleあれば、ただで読めます。↑
感想文予告編
もうすこし考えてから、ネタバレありの内容に踏み込んだ感想文は書きます。村上春樹のことを考えず、独立した映画としてはとても良い。好きです。しかし、村上春樹文学を長く読み、批評を試みてきた立場としては、いちばん大切なところに違和感があります。村上春樹を甘やかしている、というのがここで言える限界でしょうか。「悪」の所在について、の違和感です。
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