絵ものがたり 『キャラスラム』 瓶ふたくん の巻
だれが名付けたかは知らないけれど、
キャラスラムと呼ばれる場所がある。
鳴かず飛ばずだったキャラクター、
世に出ることなくオクラ入りとなったキャラクター
だけじゃなく、
一時期ちょっと流行ったけど今や過去のキャラクター
なんてのも、住んでるらしい。
ディズニーランドやキデイランドのような
キャラクター界のスターたちが集う
華やかな場所とは大違い。
それはそれは、たいそう荒んだ空気に満ちてるそうな・・・
ほら、
今日も、あちこちから、グチやら、なげきやらが聞こえてくる。
「そりゃあ、オレも行きたいけどさ、
オレくらいになると、動くわけにはいかないワケよ」
そう言ってるのは、瓶ふたくん。
かつては、某・有名メーカーが大々的に売り出そうとしてたキャラなんだとか。(本人・談)
キャラスラムに来た今も、かつてのプライドから抜け出すことができないみたい。
「そりゃあ、そうよ。
オレっちは瓶から抜けない、
ってのが大事な大事な役割なんだから」
そう言って、今日もお尻を瓶の先っちょに、
ぐぐいっと、ねじこんでる。
「もし、オレがヘタに動いてみなよ。
瓶の中の炭酸がしゅわわーって抜けて、
サイダーは、ただの砂糖水になっちまう」
いいから来いよ、酒を飲んで酔っ払いながら、
人気キャラたちの裏の顔をバクロし合おうぜ。
なんて強引な誘いにも、決して首をタテには振らない。
瓶ふたくんが、あまりにガンコなものだから、
ヤカラどもも、すっかりムキになって、
力づくで連れ行こうとしはじめた。
「や、やめろって!」
瓶ふたくんも必死で抵抗。
キャラスラムに落ちたとはいえ、
かつては一流キャラクターだった(本人・談)責任感がある。
テコでも動こうとはしない。
「こいよっ!」
「やめろいっ!」
ぐっと、ふんばる瓶ふたくん。
「こいよぉ!!」
「やめろってい!!!」
ぐぐぐっと、ふんばる瓶ふたくん。
ヤカラども、ようやく諦めて去っていった。
ほっと一息、瓶ふたくん。
ふー、っと大きく息をつき、脱力。
改めて、ずずいっと座りをただし、尻をしっかり瓶の先にハメこんだ。
・・・
少年が冷蔵庫を開けて、ママに言いました。
「兄ちゃんが飲みかけのサイダー、
もらっちゃうよー」
フタを開け、コプコプコプっと、コップにそそぎます。
「あれ?
サイダーじゃなくて、コーラなんだ」
おしまい
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