経路依存性と模倣困難性
いきなりですが、「経路依存性」って知ってます?経営学で言われることが多く、最近だと早稲田大学の入山先生が多用しています。
端的に言ってしまうと、既存の仕組みが複雑に絡み合っていて、何かを変えようと思っても、他のナニかの仕組みが邪魔をしていて変えられない。そして、その他のナニかを変えるには、更にもっと違うアレを変えなきゃいけない、、、といった、色々な要素が絡み合って、変化できないデッドロック状態の事を指します。
ただ、これ、マイナス要素なだけでなく、プラスの面も持っていたりします。
経路依存しているくらい、複雑なんだけど、ハマるときはむっちゃハマる。極限まで効率化を進めていくと、まさに誰にも真似できないくらいに効率化が進む。と言っても過言でもない。
この真似ができない仕組みを「模倣困難性」と呼びます。このリンク先(←)の例ではユニクロをあげてますが、こんな説明があります。
問題なのは、ある時期は「模倣困難性」が高く、他の企業が手を出せないくらいに効率化をして、唯一無二の価値を提供しているにも関わらず、その外部環境が変わったときには、その模倣困難性が足かせとなって、「経路依存性」となって、企業変革が進まない、、、まさに模倣困難性と経路依存性は表裏一体!!という事になります。
これ、実は自動車産業でも言われている事であり、日本の自動車産業はエンジンという内燃機関と、駆動系、制御系、その他もろもろの技術のすり合わせ技術によって、世界の自動車マーケットの中でも「安くて高品質」というまさに模倣困難な仕組みで世界を席巻してきました。
ただ、逆にこの「高度な擦り合わせ技術」が足かせになって、EV参入が遅れている。という現状もあったりします。
日産自動車などは、頑張ってLeafなどを上市していますが、テスラに試乗した人から言わせると、まったくの別世界!だそうです。(私は車が好きではないので、この感覚がわからないのですが、、、)
具体的にいうと、上でいった、内燃機関と駆動系、制御系、etcのすり合わせの妙を捨てきれず、せっかくエンジンがモーターに変わったのに、その良さが活かされていないそうです。
知り合いが紹介してくれたnoteが分かり易かったので引用します。
ここでも、模倣困難性と経路依存性が密接にかかわっている事が分かります。
ココからは原田の勝手な推測ですが、会社の経営も、事業運営も、結構、この罠に陥りやすいのではないか?と思うのです。
つまり、効率性を極限まで高めたり、他社にまねできないような高度な仕組みを作ろうとすればするほど、模倣困難性が高くなる。しかしながら、その困難性は「外部環境が一定である」という前提の下で作られているため、ある時期の環境下でパーフェクトな仕組みを作ると、外部環境が変わったときに一気に経路依存性として、足を引っ張り、変わる事が出来なくなってしまう。。。
そう、ある時の強みが、ある時の弱点になる。そんな関係性があるんではないか?と思うのです。
あんまり深くはツッコミませんが、とある企業の長期経営ビジョンに、こんなことが謳っています。
いや〜、なかなか良い視点でビジョンを組み立ててくれますね〜。
まさに、企業とは人であり、人が集まって組織になる。ビジネスモデルや工場などのアセットが可変的であるのではなく、「人」そのものに視点を置いた長期経営ビジョンを示しているのは大したもんです。
話を元に戻しますが、経路依存性も決して悪意を持って、変わらないのではない、あまりもに最適化しすぎたために、変われないのだと思うのです。
よく、企業の中で「うちの中の抵抗勢力」みたいな話をする人がいますが、私は会社という組織の中には、本当の意味での「抵抗勢力」はないと思うんです。
なぜなら、みんな会社のため、組織のため、人類のためを思って仕事をしているはず。
重要なのは、「業務を効率化する」というマインドセットの他に「時代に合わせて変わり続ける」という覚悟を持つことだと思うんです。
つまり、成功体験を捨て続ける。こういう感性を組織全体として持つことができるのか?が重要だと感じてます。(とくに続けるの部分を太字と色反転と文字拡大で強調したいくらい。)
さて、現在、組織改革や業務改革、DXなど、様々な変革に取り組んでいる皆さん。果たして、あなたが成功させた変革が10年後に足枷にならないと、誰が言えるでしょうか?
過去の成功に縋ることなく、変革しつづける、そんな「人づくり」から、まずは始めてみませんか?