一週間かけてCDを楽しみつくそう
先日CDを買った。
The Fifth Avenue Bandである。一般的な知名度は高くはないものの、山下達郎と大貫妙子のバンド・Sugar Babeのコンセプトにも多大な影響を与えたと言われているカルト的バンドである。サブスクにもあるらしいが、せっかくなのでCDで買ってみた。
しかしCDは結構高い。このアルバムは中古で1500円ほどだった。新譜含め大量の音楽を聴けるサブスクが月1000円ほどで楽しめることを考えると割高感も否めない。多くの人がCDを買わなくなってしまった大きな理由であろう。
だが、どうせCDを買ったんだったら1500円分楽しみ尽くしたい。そこで一週間毎日違う楽しみ方をして、CD代の元を取ることにした。
一日目 鑑賞する
イーゼルにかけて鑑賞。ジャケットをまじまじと眺められるのはフィジカル盤ならでは。
みんな大変楽しそうである。道のど真ん中で写真を撮影できるおおらかな時代。
奥の店にはOscar'sとDELMONICO'Sの二つの看板がかかっている。どっちが正しい店名なんだろう。オスカー・デルモニコさんがやっているのか。じゃあどっちかに統一してほしい。
学校でこうやって椅子に座っていると先生に怒られたなあ。
裏ジャケの笑顔も素敵です。
二日目 読む
フィジカル盤を持つことの一番の実利的理由はライナーノーツが読めることだろう。しかも今回は帯までついているので読みどころが多い。
優しさの対義語は冷たさではなく、したたかさらしい。なんだか哲学的である。
このライナーノーツではメンバーからのコメントもついている。これは美味しい。
サイケ期のロッカーたちなので、ライナーノーツで詩を吟じ始めるメンバーもいる。
そして近年にはあまり見ないぎっちり解説文。この熱量で4P分ある。これはありがたいねえ。この解説によるとこのCDは二回目の再発らしい。
そして最後に載っているのが古臭い雰囲気の翻訳の歌詞である。このアルバムは1998年の再発なのでそこまで古いものではないが、70年代のハードボイルド小説みたいな台詞回しである。なんで洋楽の翻訳はしゃらくさい口調になるんだろう。
クリ男なる謎ワードが出てきたので???と思い原詞をあたったが、そちらではThe Chestnut Manだった。ど直訳である。
ネットで調べたところ栗で作った人形のことらしい。だから訳としては「栗人形」くらいが適切であろう。あらかじめ調べろよ!と言いたいが、この翻訳はインターネットがまだ人口に膾炙する前のもの。今と昔では調査コストが段違いなのである。
三日目 嗅ぐ
さてこのFifth Avenue Bandからはどんな匂いがするんだろう。
なるほどなるほど。
四日目 インタビューを試みる
今回Fifth Avenue Bandさんにインタビューできて光栄です。
ところで、あなたは中古品として私の元へ来たわけですが、一番最初の持ち主はどんな方だったんですか?
恥ずかしがらなくてもいいんですよ。
どうやら気が乗らないようですね。無理にインタビューをしてしまってすみません。
五日目 外に連れていく
購入時くらいしか外に出たことがないCDに、外の世界を見せてあげよう
ご覧、Fifth Avenue Band、これが三軒茶屋だよ。
この建物はキャロットタワーっていうんだって。僕もこっちに引っ越してきたばかりだからまだ行ったことがないけど。
昨日はインタビューしても答えてくれなかったくらい緊張していたCDもリラックスしているようだ。
六日目 祈りをささげる
とりあえず大祓詞でよいかな。
たかまのはらにかむづまりますすめらがむつかむろぎかむろぎのみこともちて……
……かくのらばあまつかみはあめのいはとをおしひらきてあめのやへぐもをいつのちわきにちわきてきこしめさむ……
…….ひてむかくさすらひうしなひてばつみといふつみはあらじとはらへたまひきよめたまふことをあまつかみくにつかみやほよろづのかみたちともに きこしめせとまをす……。
シャン
七日目 聴く
数々の楽しみ方を実践してきたが、ついに取り込んで聴いた。
所謂AORに近い音楽性ながら、確かにSugar Babeのようなアコースティックさも持ち合わせている。順序的にはSugar BabeがThe Fifth Avenue的な要素を持っているのだろうが……
そして洗練されたコーラスワークとジャズ的な感性。ほかのAORバンドと比してもかなり上質な一枚です。これは早めに聴いておくべきものだったかもしれない。
結局最初から聴いた方がよかったですね。皆さんもCDはまず聴きましょう。
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