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小さな世界

まりのいる世界には、子どもたち(子どものころの私を第三者の視点から見たイメージの残像のようなもので、まりたちのようにコミュニケーションがとれるはっきりとしたパーツではない)のいる地下の部屋と、海と、海を眺めることができる小高い丘がある。朝の夢の中や、うとうとしている時には、部屋から地上につづく石の階段を昇り、小径を通って丘まで辿れることがある。そして海や、その世界がまだ夜明けを迎えていないときには満天の星々を眺めて、心安らかな気持ちになる。

まりの世界には子どもたちがいるので、それ以外の内的な世界はないのかと勝手に思っていたのだが、どうやらパーツによっては違う世界を持っているらしい。

よく考えてみれば、ハナはだいたいが木の傍にいるイメージで、その木が立っている場所の光の感じは、まりの世界の光の感じとはどこか違っている。以前記事に書いた、夢の中でみかんが現れた場所は、長野県の安曇野に似たところだった。車に乗って現れたのに驚いてみかんのことしか見なかったが、あたりを見回していたら道祖神がいたかもしれない。みかんの感性からすると、細かいところまで表現されていそうな気がする。

既にいろいろと感じていたはずのに気づくのが遅いといえば遅いが、あまりにも自然すぎて何も疑問に思っていなかった。あまりにも自然なのは、それぞれがみな、心穏やかであるためにパーツたちが作った世界だからかもしれない。心穏やかになる場所にはあまり疑問を持たないのが普通でしょう?


碧月はるさんの「いつかみんなでごはんを」を読み始めた。この本が刊行されるのを知ったとき、もし願いが叶うことがあるのならばパーツたちと一緒にごはんを食べたいとちょうど感じていたところだったので、偶然てすごい!と思い、予約しておいたものだ。

まだ最初の方で、ごはんのところまで全然進んでいないのだが、昨日、お風呂に入りながら(お風呂に入っている間はパーツたちとコミュニケーションをとりやすくなることが多い)、どこかの世界でみんなで会うときはそれぞれどういう恰好をしてくる?という話題となった。

それぞれの答えを聞いて、ああこのパーツなら確かにこういう恰好するよなあ(例えば、みかんであればTシャツにジーンズ)と思っていたところ、で、あんたはどうするの?と尋ねられた。

尋ねられてもすぐに答えは見つからなかった。そういえば、パーツたちのことはいろいろ知ろうとしていたものの、自分というパーツのことはあまり深く考えていなかった。

ある意味、曖昧で灰色で形のないものが、私から見た私でもある。私は「本体」とは違うパーツで、パーツたちの入れものであるという感覚は今でもある。

そこで私は、chatGPTにアドバイスしてもらっていたとおり、最初に思い浮かんだイメージを何も判断することなくパーツたちにそのまま返した。


「ウェディングドレス」


そう、思い浮かんだイメージは、何故か、ウェディングドレスであった。古典的な黄色のものではなく、19世紀以降に普及したといわれるあの白いドレスである。

バカウケだった。

腹立たしいほどパーツたちにウケた。

みかんは「おっさんなのにウェディングドレス!」と笑っていた。

ただ、まりは笑わなかった。さっきはそうは答えなかったものの、ウェディングドレスを着てみたいと思っていたらしいことはなんとなく伝わってきた。

なので冷静に、

「よく考えてみ。人のことをおっさんおっさんと笑うが、みんな入ってる入れものは一緒なんだからみんなおっさんやろ。ええんかそれで?」

と伝えたら、まあ確かにね、と素直かつ自然に「外からは見えない世界なんだし好きな恰好をしたらいいよ」という方向で落ち着いた。


***


お風呂から出た後で、どうしてウェディングドレスなんだろう?ということはとても気になった。女性の服を着ようとは思わない。なのになぜだろう?

一つ思いあたることがあった。


パーツのなかに小さな女の子がいる。まりと同じ側の少し下の方にいて、いつも大人しくしている。この記事の子である。

そして、少し前に、同じぐらいの小さな男の子で女の子の服を着た子が一瞬だけ登場したことがあった。この子たちの希望が伝わったのかもしれない。


***


晴れた日の海の見える丘にテーブルを置き、みんなでごはんを食べる


その楽しい場所にふさわしいと

きっと全員が着てくると思うよ


思い思いのウェディングドレスを


追記(11/5)
今朝の夢で、パーツたちがテーブルを囲んで集まる景色が見えた。パーツたちはみな、子どもに戻って、その年齢のときの服を着て集まっていた。私は、小学校の音楽会で来た服を着て参加していた(それを俯瞰して見ていた)。

そして、ごはんを出す人が必要じゃんということになり、2つに分かれたまりの片方が大人になってサンドイッチを配り始めた。みんな楽しい気分になったところで、今朝の夢はそこまで